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2020年01月18日
ひげ・長髪を禁じる「身だしなみ基準」の拘束力、郵便事業事件

神戸地方裁判所判決平成22年3月26日 『平成22年重要判例解説』労働法8事件
損害賠償請求事件
【判示事項】 1 労働者の服装や髪型等の身だしなみは,もともとは労働者個人が自己の外観をいかに表現するかという労働者の個人的自由に属する事柄であり,また,髪型やひげに関する服務中の規律は,勤務関係または労働契約の拘束を離れた私生活にも及び得るものであることから,そのような服務規律は,事業遂行上の必要性が認められ,その具体的な制限の内容が労働者の利益や自由を過度に侵害しない合理的な内容の限度で拘束力が認められるとされた例
2 原告Xが勤務する被告Y社の灘局では,男性職員の長髪およびひげを「不可」等とする本件各「身だしなみ基準」が定められていたところ,上記各基準は,長髪およびひげを一律に不可と定めたものと解する場合には,男性職員に過度の制限を課するものといえ,合理的な制限とは認められないから,これらの基準については「顧客に不快感を与えるようなひげおよび長髪は不可とする」との内容に限定して適用されるべきであるとされ,整えられたXの長髪(引き詰め髪)およびひげは,いずれも,これらの基準が禁止する男性の長髪およびひげには該当しないとされた例
3 Y社がXに対し「特殊」業務の「夜勤」のみの担当を指定したことは,Xが上記各基準に違反してひげを生やし,また長髪の職員は窓口業務を担当できないとの誤った判断に基づくものであるから,Y社の裁量権を逸脱した違法なものというべきであるとされた例
4 Xについて,上記各基準を遵守していないことを前提として行われた本件各人事評価は,誤った前提に基づくものといえ,裁量権を逸脱したものとして違法となるとされた例
5 一般に,職場で上司が部下に対し,客観的には誤った事実認識に基づいて注意や指導を行ったとしても,そのような指導等を行っただけで,直ちにその指導等が違法と評価されるわけではなく,その指導等の方法,回数および態様が,社会通念上相当と認められる範囲を超える場合に初めて,その指導等が違法と評価されるものであるとされ,Xのひげおよび長髪が上記各基準に違反していることを前提として,月に1回以上,Xを別室に呼んで個別の対話指導等を行うなどした上司らの行為が,Xに対し義務のないことを行うよう繰り返し要求したものであって,違法であるとされた例
6 Y社による本件担務指定の限定につき,担務の広がりがないことは人事評価項目でマイナスに評価されるものであるから,Y社がXのひげおよび長髪を理由として,通常のローテーションとは異なり,Xに「特殊」業務以外の業務を担当させなかったことは,Xが職務経験を広げ,業務知識を増やす機会を喪失させるものといえ,これによりXは一定の精神的損害を受けたと認められるとされた例
7 Xに生じた損害につき,上記4の違法な人事評価がなされた結果,支給停止とされた職能調整額合計7万5600円相当額に加え,上司らによる違法な指導等および違法な担務限定に対する慰謝料30万円が認められた例
【掲載誌】  労働判例1006号49頁
【評釈論文】 民商法雑誌143巻6号743頁

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