最高裁判所第2小法廷判決平成21年11月27日
四国銀行事件
『平成22年重要判例解説』商法4事件
損害賠償請求事件
【判示事項】 A銀行が,県から要請を受け,県において再建資金の融資を計画していたB社に対し,上記融資が実行されるまでのつなぎ融資をした後に,B社に追加融資をしてもその回収を容易に見込めない一方で,これをしなければB社が破綻,倒産する可能性が高く,上記つなぎ融資まで回収不能となるおそれがある状況の下で,B社に対して追加融資をした場合において,その追加融資の一部につき,これを決定したA銀行の取締役らに善管注意義務違反があるとされた事例
【判決要旨】 A銀行が、県から要請を受け、県において再建資金の融資を計画していたB社に対し、上記融資が実行されるまでのつなぎ融資として9億5000万円を融資した後に、B社に追加融資をしてもその回収を容易に見込めない一方で、これをしなければB社が破綻、倒産する可能性が高く、県のB社に対する融資により回収することを予定していた上記つなぎ融資まで回収不能となるおそれがある状況の下で、B社に対し、約3年の間に数十回にわたり合計8億5000万円余りの追加融資をした場合において、①上記追加融資を続ける過程で、A銀行は、県の担当者から、知事がB社の創業者であるCおよびその親族をB社の経営から排除することを県のB社に対する融資の条件とする意向を示している旨の連絡を受けたこと、②その当時、法的手続を通じてCおよびその親族をB社の経営から排除することは困難な状況にあり、その後も、同人らを排除することができない状況が続いたこと、③その間、A銀行は、県に対し、2度にわたり期限を定めて県のB社に対する融資の実行を求めたにもかかわらず、県は2度目の期限も徒過し、その時点で、上記①の連絡を受けてから10か月以上が経過していたこと、④上記時点までには、A銀行自身も、資産査定において、B社の債務者区分を要注意先から破綻懸念先に変更するに至っていたことなど判示の事情の下では、上記時点以後は、A銀行の取締役らにおいて、上記つなぎ融資の回収原資をもたらす県のB社に対する融資が実行される相当程度の確実性があり、その実行までB社を存続させるために追加融資をした方が、追加融資分が回収不能になる危険性を考慮しても全体の回収不能額を小さくすることができると判断することは、著しく不合理であり、上記時点以後の3億0500万円の追加融資については、これを決定したA銀行の取締役らに善管注意義務違反がある。
【参照条文】 商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)254-3
商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266-1
商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)267
民法644
会社法423-1
会社法847
【掲載誌】 最高裁判所裁判集民事232号353頁
裁判所時報1496号328頁
判例タイムズ1313号119頁
金融・商事判例1335号20頁
判例時報2063号138頁
金融法務事情1891号52頁
(注)、現在は、人工知能AIによる与信審査が主流となっているので、銀行の取締役に善管注意義務違反がないと判断される時代になるかもしれない。