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新着情報
2020年02月06日
民法704条後段の規定の趣旨

最高裁判所第2小法廷判決平成21年11月9日
不当利得金返還請求事件
『平成22年重要判例解説』民法8事件
【判示事項】 民法704条後段の規定の趣旨
【判決要旨】 民法704条後段の規定は、悪意の受益者が不法行為の要件を充足する限りにおいて不法行為責任を負うことを注意的に規定したものにすぎず、悪意の受益者に対して不法行為責任とは異なる特別の責任を負わせたものではない。
【参照条文】 民法704後段
       民法709
【掲載誌】  最高裁判所民事判例集63巻9号1987頁
       判例タイムズ1313号112頁
       金融・商事判例1335号31頁
       判例時報2064号56頁
       金融法務事情1894号41頁

1 事案の概要
 本件は,借主であるXが,貸金業者であるYに対し,Yとの間の継続的な金銭消費貸借契約に基づいてした弁済につき,利息制限法所定の制限を超えて利息として支払われた部分を元金に充当すると過払金が発生しており,かつ,それにもかかわらず,Yが残元金の存在を前提とする支払の請求をし過払金の受領を続けた行為によりXが精神的苦痛を被ったと主張して,その訴訟追行を弁護士に委任の上,次の三つの請求,すなわち,①不当利得返還請求権に基づく約1068万円の過払金返還請求(ただし,第1審判決認容額の全額弁済があり,原審においてその訴えが取り下げられたため,以下,説明を省略する。),②民法704条後段に基づく過払金返還請求訴訟に係る弁護士費用108万円の損害賠償請求,③民法709条に基づく慰謝料及び慰謝料請求訴訟に係る弁護士費用の合計105万円の損害賠償請求をする事案である。判示事項及び判決要旨は,上記②の民法704条後段に基づく損害賠償請求に関するものである。
2 第1審判決及び原判決
 第1審は,上記③の民法709条に基づく損害賠償請求につき,Yが残元金の存在を前提とする支払の請求をし過払金の受領を続けた行為は不法行為を構成しないと判断する一方,上記②の民法704条後段に基づく損害賠償請求につき,特段の説示をすることなく,過払金返還請求訴訟に係る弁護士費用として約107万円を認容し,1万円弱を棄却した。
 原審は,上記③の民法709条に基づく損害賠償請求につき,第1審と同じく不法行為の成立を否定する一方,上記②の民法704条後段に基づく損害賠償請求につき,民法704条後段の規定を,不法行為責任を定めたものではなく,悪意の受益者に対する責任を加重した特別の責任を定めたものと解して,Xの附帯控訴に基づき,過払金返還請求訴訟に係る弁護士費用としてXの請求額全額の108万円を認容した。
3 本判決
 本判決は,判決要旨のとおり,「民法704条後段の規定は,悪意の受益者が不法行為の要件を充足する限りにおいて,不法行為責任を負うことを注意的に規定したものにすぎず,悪意の受益者に対して不法行為責任とは異なる特別の責任を負わせたものではない」と判示して,原判決中Y敗訴部分を破棄し,第1審判決中,民法704条後段に基づく損害賠償請求に係るY敗訴部分(弁護士費用約107万円の請求認容部分)を取り消して同部分に関するXの請求を棄却し,民法704条後段に基づく損害賠償請求に係るXの附帯控訴(1万円弱の請求棄却部分についてのもの)を棄却した。

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