内容紹介
コンプライアンスは、「過剰規制」から「ものがたり」へ
“規則を厳守”するからうまくいかない! 「コンプラ疲れ」を脱する3つのカギ
企業不祥事が起こるたびに「コンプライアンス」が叫ばれる。しかし、実際には多くの企業で過剰規制による「コンプラ疲れ」が生じており、不祥事防止の役に立っていない。
コーポレートガバナンスの観点から社外取締役の義務化も進められている。しかし、ガバナンス先進企業と言われた東芝の不正会計事件から分かるように、「形だけ」のコーポレートガバナンスに不祥事防止の効果はない。
そこでこの本では、できるだけ多くの実例をあげて、「なぜ、企業不祥事はなくならないのか」「なぜ、そのコンプライアンスやコーポレートガバナンスは機能しないのか」を根本にまで遡って明らかにする。ここでは、「ストーリーの欠如」と「場の空気(同調圧力)」がキーワードになる。
その上で、「では、どうすればよいのか」ということを、危機管理の現場対応や社外役員としての活動といった筆者の実務経験に基づいて具体的に提言する。ここでは、「多様性」「インテグリティ(誠実性)」「空気読まない力」がキーワードになる。
この本のタイトルは、「企業不祥事を防ぐ」というシンプルなものだ。書かれているのはすべて実例(筆者の実体験も多く取り入れている)とそれに基づく考察だ。「机の上で考えた理論」は書いてない。
この本が、読者に「オモシロかった」と言われて、「やらされ感のコンプライアンス」から「元気の出るコンプライアンス」への橋渡しになることを願っている。
【本書の目次】
第1章 過剰規制から「ものがたりのあるコンプライアンス」へ
第2章 日本型企業不祥事の根本にあるもの
第3章 これからのコンプライアンス
第4章 コーポレートガバナンスの実際
第5章 危機管理実務の最前線
第6章 企業のグローバル展開とリスク管理
【感想】
著者は、企業法務の弁護士。
本書で取り上げられている事例については、事実関係を確認するために、竹内 朗ほか『企業不祥事インデックス〔第2版〕』商事法務 2019年と並行して読むと良い。
アマゾンの書評は「読みやすい」というものが大部分である。
しかしながら、本書は読みづらい。
概念定義が定まっていないカタカナ用語で、わかったような気がしているのではないか。
不祥事の原因は「場の空気の同調であって、犯人はいない」という著者の考えは企業に受けられやすいが、企業および役員や従業員の損害賠償責任、民事・刑事・行政上の処分は避けられないであろう。
著者自ら「コンプライアンスには、唯一の正解はない」(あとがき)と述べている通り、企業不祥事の原因と対策について、具体例をもとに、いちいち考えながら読むのは時間がかかる。
そういう意味では、良い刺激となる。