最高裁判所大法廷判決平成27年3月4日
損害賠償請求事件
『平成27年度重要判例解説』民法7事件
【判示事項】 1 不法行為によって死亡した被害者の損害賠償請求権を取得した相続人が労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金の支給を受けるなどした場合に,上記の遺族補償年金との間で損益相殺的な調整を行うべき損害
2 不法行為によって死亡した被害者の損害賠償請求権を取得した相続人が労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金の支給を受けるなどしたとして損益相殺的な調整をするに当たって,損害が填補されたと評価すべき時期
【判決要旨】 1 被害者が不法行為によって死亡した場合において,その損害賠償請求権を取得した相続人が労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金の支給を受け,又は支給を受けることが確定したときは,損害賠償額を算定するに当たり,上記の遺族補償年金につき,その填補の対象となる被扶養利益の喪失による損害と同性質であり,かつ,相互補完性を有する逸失利益等の消極損害の元本との間で,損益相殺的な調整を行うべきである。
2 被害者が不法行為によって死亡した場合において,その損害賠償請求権を取得した相続人が労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金の支給を受け,又は支給を受けることが確定したときは,制度の予定するところと異なってその支給が著しく遅滞するなどの特段の事情のない限り,その填補の対象となる損害は不法行為の時に填補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが相当である。
【参照条文】 民法709
労働者災害補償保険法16
民法412
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集69巻2号178頁
判例タイムズ1414号140頁
金融・商事判例1474号8頁
金融・商事判例1466号24頁
判例時報2264号46頁
金融法務事情2022号94頁
労働判例1114号6頁
労働経済判例速報2247号9頁