福岡高判平成27年1月29日、社会医療法人A会事件
『平成27年度重要判例解説』労働法1事件
損害賠償請求控訴事件
【判示事項】 1 (個人情報保護法)法23条1項の「第三者」に当たるか否かは外形的に判断されるべきであって,ある情報を保有する個人情報取扱事業者(法2条3項)および当該情報の主体である本人(同条6項)以外の者を意味するというべきであり,本件情報共有は第三者提供には該当しないとした一審判断が維持された例
2 本件情報共有は,院内感染の防止を目的として,被控訴人(一審原告)Xの就労に関する方針を話し合うためであったのであるから,診療目的の範囲には含まれず,労務管理目的であったと認められ,法16条1項が禁ずる目的外利用に当たるとした一審判断が維持された例
3 HIV感染症に罹患しているという情報は,他人に知られたくない個人情報であり,本件情報を本人の同意を得ないまま法に違反して取り扱った場合には,特段の事情のない限り,プライバシー侵害の不法行為が成立するとした一審判断が維持された例
4 被用者が労働契約に基づいて働き賃金を得ることは義務であるとともに権利でもあり,これを不当に制限することは許されず,病欠等被用者の都合により勤務を休む場合には,賃金の減少といった不利益をももたらすことからすると,被用者が病欠として勤務を休むことについては,病気により勤務に耐えられる状況にない等勤務を休ませざるをえないような合理的理由があるか,その自由な意思に基づくものでなければならず,雇用者が合理的理由なく,被用者に対して勤務を休むように指示するなどして勤務を休むことを強いることは不法行為になるとされた例
【参照条文】 民法709
個人情報保護法
【掲載誌】 判例時報2251号57頁
労働判例1112号5頁
労働経済判例速報2239号21頁
その上告審である最3小決平成28年3月29日LLI/DB 判例秘書/平成27年(受)第910号
上告不受理。