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2020年02月16日
相続税と同族会社の行為計算の否認『租税判例百選 第6版』79事件

大阪高判平成14年6月13日
相続税更正処分取消等請求控訴事件
【判示事項】 相続税更正処分取消請求の控訴事件について、相続税の課税価格の算定につき本件農地を市街地農地と評価することの誤り、本件宅地等に対する相続税法64条1項の適用についての誤りなど控訴人らの当審における主張は,いずれも原審における主張の域を出ないもの若しくは原判決を論難する趣旨のものであって,いずれも当裁判所は採用できず、控訴人らの請求を棄却した原判決は相当として本件控訴を棄却した事例
【判決要旨】 (1) 省略
       (2) 相続により取得した財産の価額は、特別の定めのあるものを除き、当該財産の取得の時における時価により評価されるが(相続税法22条)、右「時価」とは相続開始時における当該財産の客観的な交換価値、すなわち、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間において自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価格をいうと解すべきである。もっとも、全ての財産の客観的な交換価値が必ずしも一義的に確定されるものではないから、納税者間の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減という見地に立って、合理性を有する評価方法により画一的に相続財産を評価することも、当該評価による価額が相続税法22条に規定する時価を超えない限り適法なものということができる。その反面、いったん画一的に適用すべき評価方法を定めた場合には、納税者間の公平及び納税者の信頼保護の見地から、評価通達によらないことが正当として是認され得るような特別な事情がある場合を除き、評価通達に基づき評価することが相当である。
       (3) 省略
       (4) 相続税法64条1項(同族会社の行為又は計算の否認)は、同族会社を一方当事者とする取引が、経済的な観点からみて、通常の経済人であれば採らないであろうと考えられるような不自然、不合理なものであり、そのような取引の結果、当該同族会社の株主等の相続税又は贈与税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがある場合には、課税庁は、当該取引行為又はその計算を否認し、通常の経済人であれば採ったであろうと認められる行為又は計算に基づいて相続税又は贈与税を課すことができるものと解するのが相当である。
       (5)・(6) 省略
       (7) 相続財産の評価に当たり、画一的に評価通達を適用することが時価の算定方法として適当でなく、その結果として納税者間の実質的な税負担の公平を著しく損なうと認められるときは、評価通達の規定によらずに、当該事案に照らして合理的と認められる方式により相続財産の時価を算定することが相当というべきであり、このような場合を想定して、財産評価基本通達6項は、この通達によって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価すると定めている。
       (8) 財産評価基本通達185項及び186-2項が評価差額に対する法人税額等相当額を控除することとしている趣旨は、個人事業の相続の場合には、事業用財産は被相続人たる事業主個人名義であるから、相続人は相続によって直接に事業用財産を取得することができ、事業用財産の評価差額(含み益)については、相続の時点において相続財産の評価に含められ、相続税の課税を受けることとなるものの、課税を受ける機会はその一度だけである。これに対し、法人事業の相続の場合には、事業用財産は法人名義であり、相続人は相続によって法人の持分を取得するにすぎず、事業用財産に対する支配は間接的なものであるから、もし相続人が事業用財産を取得して自己名義に変更しようとすれば、いったん相続によって法人の持分を取得した後に、法人を解散して残余財産の分配を受けるという手順を踏む必要があるところ、かかる場合、事業用財産の評価差額については、相続の時点において相続財産の評価に含められ、相続税の課税を受けることとなる上に、法人解散の時点においても清算所得に含められ、これに対する法人税、事業税、都道府県民税及び市町村民税の課税を受けることとなり、課税を受ける機会が2回あることになる。このように、株式等を所有することを通じて法人の資産を間接的に所有している場合と、個人事業主が事業用財産を直接所有している場合とでは、その所有形態が異なることから、将来法人を清算した場合において評価差額に対して清算所得として課される法人税額等を相続税評価額から控除することによって、両者の事業用財産の所有形態を経済的に同一の条件のもとに置き換えた上で相続財産の評価における両者の均衡を図ろうとしたものと解することができる。
       (9)~(14) 省略
【掲載誌】  税務訴訟資料252号順号9132
       LLI/DB 判例秘書登載

上告審である最3小決平成15年4月8日 税務訴訟資料253号順号9317は、上告棄却、上告不受理。

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