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2020年02月16日
抑制具を用いて入院患者に対して拘束した行為が,診療契約上の義務に違反せず,不法行為ともいえないとされた事例

最高裁判所第3小法廷判決平成22年1月26日
損害賠償請求事件
『平成22年重要判例解説』民法7事件
【判示事項】 当直の看護師らが抑制具であるミトンを用いて入院中の患者の両上肢をベッドに拘束した行為が,診療契約上の義務に違反せず,不法行為法上違法ともいえないとされた事例
【判決要旨】 当直の看護師らが抑制具であるミトン(手先の丸まった長い手袋様のもので緊縛用のひもが付いているもの)を用いて入院中の患者の両上肢をベッドに拘束した行為は,次の(1)~(3)など判示の事情の下では,上記患者が転倒,転落により重大な傷害を負う危険を避けるため緊急やむを得ず行われた行為であって,診療契約上の義務に違反するものではなく,不法行為法上違法ともいえない。
       (1)上記患者は,上記行為が行われた当日,せん妄の状態で,深夜頻繁にナースコールを繰り返し,車いすで詰所に行ってはオムツの交換を求め,大声を出すなどした上,興奮してベッドに起き上がろうとする行動を繰り返していたものであり,当時80歳という高齢で,4か月前に他病院で転倒して骨折したことがあったほか,10日ほど前にもせん妄の状態で上記と同様の行動を繰り返して転倒したことがあった。
       (2)看護師らは,約4時間にもわたって,上記患者の求めに応じて汚れていなくてもオムツを交換し,お茶を飲ませるなどして落ち着かせようと努めたが,上記患者の興奮状態は一向に収まらず,また,その勤務態勢からして,深夜,長時間にわたり,看護師が上記患者に付きっきりで対応することは困難であった。
       (3)看護師が上記患者の入眠を確認して速やかにミトンを外したため,上記行為による拘束時間は約2時間であった。
【参照条文】 民法415
       民法709
【掲載誌】  最高裁判所民事判例集64巻1号219頁
       判例タイムズ1317号109頁
       判例時報2070号54頁

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