第一線で活躍中の弁護士が,その実務を支える技を網羅的に披露。受任の判断,解決手段の選択,各種書面の書き方,尋問のコツ,証拠集めの視点等々,労働者側弁護士として押さえるべきポイントがわかる。重要裁判例の紹介も充実。労働法実務初心者の必読書。
【LAWYERS’ KNOWLEDGE】シリーズ
目次.
PART1 解決手段の選択と実践的な対処
CH.1 初動(相談・受任)
CH.2 解決手段の選択
CH.3 本訴(通常訴訟)の提起と追行
CH.4 労働審判制
CH.5 仮処分(仮差押え,先取特権に基づく差押え)
CH.6 裁判手続内での手段の選択
PART2 紛争類型ごとの対応策
CH.1 解雇
CH.2 有期労働契約の雇止め
CH.3 退職勧奨,合意退職,辞職の自由
CH.4 残業代請求
CH.5 労働条件の切下げ
CH.6 人事異動(配転,出向,転籍)
CH.7 ハラスメント
CH.8 高齢者の雇用をめぐる問題
CH.9 非正規労働者の労働条件(均等・均衡)をめぐる問題
CH.10 経営危機(倒産)と労働債権の回収
CH.11 労災保険と損害賠償
CH.12 不当労働行為についての特別な救済
【感想】
おおむね詳しく具体的に思考過程を記載しており、非常に参考になる。
内容がよく整理されているので、全体的に読みやすい。
条文・裁判例を引用しており、親切。
裁判実務(労働者側に不利な内容を含めて)が明確に記述されている。
実務的に重要な論点にポイントを絞って、重点的に解説されている。
紛争類型ごとの解説が網羅的にわかりやすく整理されている。
著者は、労働者側で労働事件を数多く経験した弁護士で、労働者側で書いているが、労使双方どちらの立場でも参考になる。
実務ノウハウ、実践知が豊富に記載されておりお勧めである。
本書にも記載があるが、弁護士に受任を断られた相談者が、複数の弁護士を渡り歩いて法律相談を繰り返している場合(業界用語で「渡り鳥」という)にも、受任には気を付けたい。
労働事件に関する訴状・準備書面・陳述書の書き方・考え方が記載されている。
動かし難い事実から論述を始めるというのは、裁判官が事実認定する思考方法と同じであり、最も大事である。
尋問のコツも記載されている。
もっとも、反対尋問は誰がやっても、うまく行かないものだが。
私の考えでは、反対尋問のコツは、時系列一覧表・書証一覧表に基づいて、動かし難い事実から出発すると良いと思われる。そうでないと、言い訳されてしまうからである。
本書は、今後の実務書のスタンダードになるであろう。
p91
労働者の中間利得は、使用者のバックペイと裏腹の関係にあり、常に争点になるので、著者の主張は、筆の走りすぎか。
p390
津田電気計器事件最高裁判決の事案の特殊性の言及がない。
ただし、以下の章は、入門書レベルであり、さほど詳しくない。
CH.8 高齢者の雇用をめぐる問題
CH.10 経営危機(倒産)と労働債権の回収
CH.11 労災保険と損害賠償
CH.12 不当労働行為についての特別な救済