論究ジュリスト(2017年夏号)№22
■座談会参加者(レギュラーメンバー) 研究者:道垣内弘人・山本和彦・小粥太郎/裁判官:岸 日出夫・山田真紀・朝倉佳秀・武部知子
(ゲスト山下純司)
信認義務は、法律の条文に基づくものではない。
英米法は、信認義務は、判例によって認められている。判例法の国では、判例は、条文と同じ意味を持つ。
日本の民法では、詐欺、錯誤、担保責任、委任契約などの規定から、情報提供義務・説明義務が導かれる。
消費者法や個別の業法(金融商品取引法、宅地建物取引業法など)から、情報提供義務・説明義務が認められることもある。
社会が複雑化・専門化した現代では、民法を改正して、情報提供義務・説明義務の条文を置くべきである。
英米法にならって、情報提供義務・説明義務が信認義務に基づくと主張しても、条文上の根拠が定かでないならば、その主張は根拠薄弱であろう。
B to B取引(企業間取引訴訟)においては、情報提供義務・説明義務がないとする裁判例が複数存在する。
ことに、M&A、フランチャイズ契約、コンサルタント契約などで、その旨の裁判例がみられる。
しかし、売買において、売主は、売買の対象について、最もよく知っているのであるから、担保責任などが認められているのである。
売主に情報提供義務・説明義務を認めても、何の弊害もない。
悪意・有過失の買主は保護しない。
善意の買主を犠牲にして、悪意・有過失の売主を保護する必要はない。
したがって、B to B取引においても、売主(供給者・受託者)側に、情報提供義務・説明義務を認めるべきである。