著者らは、東京地方裁判所判事補である。
転倒・転落、誤嚥・栄養管理、感染症・褥瘡、その他に分けて、過失が肯定・否定された裁判例のポイントを指摘している。
なお、介護施設における高齢者の事故についての、権威とされている、別のある論者は、転倒・転落、誤嚥にしか分けて論じていないので、上記の分類論は重要である。
損害論については、高齢者だから慰謝料を減額できるという独特の理論により、その根拠づけを試みている。
しかしながら、その試みは、分析の対象とした裁判例や文献に基づくものではなく、独自の見解であり、失敗している。
判事補という肩書きからして明らかなとおり、裁判官経験10年未満であって、おそらく20・30歳代と思われる。
高齢者は逸失利益の算定上不利であり、かつ、慰謝料の類型としても、もともと少ない類型に位置付けているのだから、敢えて特別の減額をする合理的な理由も必要性もないのである。