都市再生特別措置法に関する裁判例をすべて網羅しています。
都市再生特別措置法は、近年における急速な情報化、国際化、少子高齢化等の社会経済情勢の変化に日本における都市が十分対応できたものとなっていないことにかんがみ、これらの情勢の変化に対応した都市機能の高度化および都市の居住環境の向上を図るため、都市の再生の推進に関する基本方針等について定めるとともに、都市再生緊急整備地域における市街地の整備を推進するための民間都市再生事業計画の認定および都市計画の特例ならびに都市再生整備計画に基づく事業等に充てるための交付金の交付等の特別の措置を講じ、もって社会経済構造の転換を円滑化し、国民経済の健全な発展および国民生活の向上に寄与することを目的として2002年(平成14年)に制定された法律である。
目次
第1部 民事訴訟事件
第1章 民間都市開発の推進に関する特別措置法に基づいて設立された財団法人に対して,民間都市開発事業用地を売り渡した会社につき民事再生手続開始決定がされた後,同社が売買契約上の約定解除権を行使した場合,これによって財団法人が取得する原状回復請求権は民事再生法119条5項所定の共益債権に当たるとした事例
第2章 被告は,原告に無断で通路を大型工事用重量車両の通行の用に供する等して,あえて原告との紛争を招き,これにより原告に不信感を持つことになった開発事業者が原告との車路共用化協議に非協力的となって,原告が建設を予定していた建物の建設工事の着工および完成が遅れたため,建物完成遅延期間分の賃料収入相当額の損害を被ったとして,不法行為に基づき損害の賠償を求めたが,棄却された事例
第2部 行政訴訟事件
第1章 圏央道建設事業等に伴う土地収用法に基づく事業認定並びに権利取得裁決および明渡裁決について、いずれも違法であるとは認められないとして、その取消請求が棄却された事例
第2章 市制100周年記念事業の1つとして計画した「テクノポート大阪計画」のため,大阪市が民間企業と共同出資して設立したいわゆる第三セクターの株式会社A,B,C(以下,3社)は,開業直後から経営状態がおもわしくなく,数年で債務超過に陥ったことから,大阪市長は,3社に対する追加出資,損失補償の履行,補助金交付,劣後債権化(特定調停受諾行為)等を決裁したが,これらの決裁は違法であるとして,原告(住民)および参加原告(法人)が,被告(大阪市長)に対して,決裁時の市長および3社に対し損害賠償の請求をすること並びに補助金の支出差止めなどを求めた事案
第3章 国土交通大臣がした土地収用法20条に定める本件事業認定は,(1)起業者らは当該事業を遂行する充分な能力を有せず,(2)事業の合理性ないし公益性が認められず,(3)事業を施行することにより,α1山(関東山地の南東端に位置する標高599メートルの山)の歴史的な自然環境や生態系,水脈,景観等を破壊し,重大な大気汚染,騒音,振動,等が発生して周辺住民の生活環境を破壊する等として,各事業は同法の要件に該当せず,また,都市計画法および自然公園法にも違反するなどとする本件事業認定の取消請求が棄却された事例
第4章 控訴人らが被控訴人に対し,国土交通省中国地方整備局長(以下,単に「整備局長」という。)が株式会社A(以下「A」という。)に対してした,①平成26年12月12日付けの,広島市中区(以下略)地先の河岸(××箇所。以下「本件土地」という。)における船上食事施設(「かき船」。以下「本件施設」という。)の設置に係る河川法(以下,単に「法」という。)24条に基づく土地の占用の許可処分(以下「本件旧占用許可処分」という。)および法26条1項に基づく工作物の新築等の許可処分(以下「本件新築許可処分」という。)(国中整太河管第710号)の取消し,②平成29年3月31日付けの,上記①と同様の土地の占用の許可処分(国以下「本件新占用許可処分」といい,本件旧占用許可処分と併せて「本件各占用許可処分」といい,さらに本件各占用許可処分と本件新築許可処分を併せて「本件各処分」という。)の取消しを,それぞれ求めた事案である。
第3部 地方自治法に基づく住民訴訟
第1章 大阪市が中心となって実施している地下鉄新線北港テクノポート線の建設事業ないしその事業につき,地方自治法242条の2第1項1号に基づく公金支出または本線に係る支出負担行為の差止請求を認めなかった事例
第2章 被告が市街地再開発事業の事業計画を決定し,その管理処分計画を決定したことについて,原告が事業計画の決定および管理処分計画の決定の各取消しを求めたが,訴えは不適法であるから却下するとした事例
第3章 訴外会社(大手家電メーカー)の工場建設に際し,府・市が財政支援したところ,①市住民の原告らが,被告市長に対し,訴外会社らに対する不均一課税措置の差止めおよび不当利得返還請求権に基づく前記措置による減免税の返還・遅延損害金の支払請求の義務付け,②府住民である原告らが,府知事に対し,訴外会社らに対する先端産業補助金交付の差止めおよび不当利得返還請求権に基づく前記交付金の返還・遅延損害金の支払請求の義務付けを,各求めた事案
第4部 建物の所有者である原告が,本件建物を,賃借している被告に対し,再開発計画の円滑な遂行等を正当事由として,正当事由の補完として,立退料の支払を申し出て,解約による賃貸借終了に基づき,賃貸部分の明渡を求めた事案
第1章 建物の所有者である原告が,本件建物の一部を,それぞれ賃借している被告らに対し,主位的に,建物の老朽化による賃貸借契約解約の正当事由が存在するとして,予備的に,正当事由の補完として,被告らに対し,立退料の支払を申し出て,解約による賃貸借終了に基づき,各賃貸部分の明渡を求めるとともに,被告Y1に対し,本件建物中の使用貸借部分の明渡を求めた事案
第2章 建物の賃貸人である原告が,賃借人である被告に対し,解約申入れに正当理由があるので原告と被告との間の賃貸借契約が終了したとして,建物の明渡しを求めた事案
第3章 原告(建物所有者)が,本件貸室(同建物内の一室)の賃借人である被告に対し,渋谷駅周辺地区の再開発計画の円滑な遂行等を正当事由として,建物賃貸借契約の更新を拒絶し,同契約終了に基づき,正当事由を補完する金員の給付と引換えに本件貸室の明渡しを求めた事案
第4章 原告が取得したビル(新宿駅西口前所在ビル)の5区画を被告Y1および被告Y2が前所有者から賃借していたが,原告が賃貸借契約の解約を申し入れ,正当事由を補完するものとして立退料の申出を行い,立退料の支払と引換えに各区画の明渡しなどを求めた事案
第5章 渋谷駅の地域再開発計画の円滑な遂行のための本件建物(貸室)賃貸借解約の申入れにつき,原・被告双方の建物使用の必要性に関する事情等を踏まえれば,本件解約申入れが、それのみで正当事由を具備しているとまでは認められないが,相当な立退料を支払うことにより,本件解約申入れには正当事由が具備されるとして,賃貸人の地位を喪失した原告の請求は理由がないが,原告訴訟承継参加人(原告の解約申入れ後に本件土地・建物の所有権を取得)が立退料(2376万円)を支払うのと引き換えに本件貸室の明渡しを求める限度で理由があるとした事例
第6章 東京都中央区京橋二丁目西地区第一種市街地再開発事業に係る資産価額請求事件