中小小売商業振興法に関する裁判例を網羅しています。
中小小売商業振興法(昭和48年法律第101号)は1973年(昭和48年)に成立した法律で、商店街の整備、店舗の集団化、共同店舗等の整備などの事業の実施を円滑にし、中小小売商業者の経営の近代化を促進することなどにより、中小小売業の活性化と振興を目的としています。
日本においてもフランチャイズ事業を行う企業は増えており、加盟店も増えています。
日本ではフランチャイズに関する明確な法律はなく、中小小売商業振興法の中にフランチャイズに関する規定がいくつか設けられています。
目次
第1部 フランチャイジーからフランチャイザーに対する損害賠償請求が認められた事例
第1章フランチャイズ・チェーン店の経営行き詰りによる閉店につき、フランチャイザーがフランチャイジーに対して適正な情報を提供すべき信義則上の保護義務を怠ったとして、フランチャイザーの損害賠償責任が認められた事例
第2章 フランチャイジーがフランチャイザーに対してした保護義務違反(不正確な情報の提供)による損害賠償請求が認容された事例(過失相殺7割)
第3章 フランチャイズ契約において、フランチャイジーらが共謀してフランチャイズシステムを破壊したとして共同不法行為を認め、フランチャイザーのフランチャイジーらに対する損害賠償請求が認容された事例
第4章 業務委託契約(実質はフランチャイズ契約)につき、原告の主張のうち、立替払いの合意および損失補填の合意は採用できないとしたが、被告らの説明義務違反を認め、正確な情報を提供しないことは信義則上の義務に違反して不法行為となるとし、他方店舗の損益は事業者としての原告に帰属すること、原告は前記契約により店舗の経営を被告Dに委任してあまり関与していないことを考慮し、損害の公平な分担の観点から、原告の過失を5割として過失相殺するのが相当とした事例
第5章 被告との間で飲食店のフランチャイズ契約を締結して,飲食店を出店した原告が,契約締結に際して,合理的な算定方法に基づく正確な売上げ,収支予測を提供する義務を怠った,あるいは,契約締結に際し,詐欺,錯誤があったとする債務不履行に基づく損害賠償請求を認めた事例
第6章 フランチャイザーがフランチャイズ契約に定めのない支払差額および仕入割戻金を取得したことについて,契約に付随する信義則上の説明義務違反を認めた事例
第2部 フランチャイジーからフランチャイザーに対する損害賠償請求が棄却された事例
第1章 フランチャイズ契約締結にあたって、加盟店となる者に対し、売上予測等について内容虚偽の情報を提供したとは認められないし、また情報提供義務の違反も認められないとして、加盟店からの詐欺または契約締結上の過失に基づく損害賠償請求が棄却された事例
第2章 フランチャイズ契約について、フランチャイザーの情報提供義務違反、指導援助義務違反等を理由とした損害賠償請求が棄却された事例
第3章 被告Y1との間でフランチャイズ契約を締結した原告らが,この契約はY1の違法な勧誘等により締結させられたものであり,Y1の契約上の義務不履行により原告らは多大の損害を被り,廃業に追い込まれたと主張して,被告らY1に対し,損害賠償を請求した(本訴)のに対し,被告Y1らが原告らに対し,未払のロイヤリティ等,賃料および規定損害金,名誉信用毀損,恫喝,業務妨害による損害賠償の請求をした(反訴)事案。
Y1の勧誘から原告らの閉店に至るまでの間,Y1の1連の行為について,原告らに対する不法行為と評価すべき行為を認定するに足りる証拠はないなどとして本訴請求をいずれも棄却し,反訴請求(未払ロイヤリティ等請求)の1部を認容した事例
第4章 コミュニティストア加盟契約における立替金、解約金の支払請求を認め、同契約締結の過程における欺罔行為ないし情報提供義務違反の主張、また同契約の解約条項における解約金の定めは適用される余地はなく、公序良俗、信義則に反するとの主張はいずれも採用できないとされた事例
第5章 フランチャイザーとフランチャイジーである加盟店との間において,フランチャイザーが加盟店に対して推薦する仕入先業者との間で仕入価格交渉代行事務を行う旨の準委任関係が存在することを否定し,フランチャイザーが同仕入先業者から仕入割戻金等の名目の金員を受領してはならない義務や,フランチャイザーが加盟店に対して同金員を引き渡すべき義務および信義則上同金員の取得について説明し承諾を得るべき義務を負うことを否定した事例
第6章 個別指導学習塾のフランチャイズチェーンを展開する被告との間で,FC契約を締結し,学習塾を経営していた原告らが,被告提供のテキストに係るシステムに重大な欠陥があるのに十分な説明をせず,学習指導用システムの導入を強要してその使用料を徴収したことにより損害を被ったと主張し,不法行為または債務不履行に基づく賠償請求をした事案。
裁判所は,被告は独自に本件システムを開発し,被告教室の重要な指導ツールと位置づけ,システムの導入なしのFC契約は認めていなかったこと,被告教室は,学校教育の補修塾の色合いが強かったことなどから,原告らのシステムの欠陥等の主張を退け,不法行為や債務不履行の成立も否定して,請求を棄却した事例
第3部 請求書引渡等請求事件
第1章 フランチャイズ・チェーン運営者が,加盟店に報告すべき義務を負うとされた事例
第2章 被告が展開するコンビニエンスストアのフランチャイズにフランチャイジーとなって参入した原告が,フランチャイザーである被告に対し,領収書等の引渡し等を求めた事案について,■■■・システムにおける仕入れ等の取引の概要についての被告の主張を認め,仕入先から加盟者宛に請求書,領収書等が被告に交付されることはないと認め,被告は本件書類を所持していないから,原告の被告に対する所有権に基づく,本件書類の引渡請求は理由がないなどとして,原告の請求を棄却した事例
第3章 フランチャイズ契約による加盟店経営者がコンビニエンスストア事業を展開する会社に対し、同契約に付随する信義則上の義務に基づき、請求書・領収書等の書類の引渡および取引先からの割戻金・協賛金等の情報の開示を求めた請求が認められなかった事例
第4部 フランチャイザーからフランチャイジーに対する、競業禁止条項に基づく損害賠償請求
第1章 コンビニエンスストアのフランチャイズ契約におけるフランチャジー(加盟店)が競業他者の経営に関与し、もしくはこれらの者と業務提携あるいはフランチャイズ契約を結ぶことを禁止した約定が独占禁止法の定める不公正な取引方法に当たらないとされた事例
第2章 学習塾チェーン経営会社が競業禁止条項に違反して独立した元フランチャイズ契約加盟店に対して行った違約金請求につき,違約金条項の1部が公序良俗に反するとして請求額の1部のみが認容された事例
第3章 フランチャイズ契約において,契約終了後の競業避止義務規定が公序良俗に違反せず,無効とはいえないとされた事例
第4章 持ち帰り弁当販売事業を展開するフランチャイズシステムのマスターフランチャイザーである原告が,同システムにおける一定の地域内でのサブフランチャイズ権を与えられた被告に対し,被告が本契約に違反したとして,同契約における損害賠償額の予定の規定に基づき,損害賠償金の1部等の支払を求めた事案。
1審判決は、原告の請求を棄却したため,原告が控訴(請求を減額)したところ,控訴審は,原判決を変更し,原告請求を認容したため,被告が上告した事案。
上告審は,本件上告理由は民訴法312条1・2項の規定事由に該当しないとして上告棄却・上告を受理しない旨の決定をした事例
第5部 リース料等請求
第1章 学習塾のフランチャイズ契約に関してユーザーとファイナンスリース会社間でリース契約が有効に成立したとされた事例
第6部 フランチャイズ加盟店店長の「労働者」制
第1章 1 労働基準法9条および労働契約法2条1項の各規定によれば,労働者とは,使用従属性の要件を満たす者,すなわち,使用者の指揮監督の下に労務を提供し,使用者から労務の提供の対価として報酬を支払われる者をいうと解されるとされた例
2 原告Xは,個人もしくは本件有限会社の代表取締役として,被告Y社との間で本件各店舗の経営に関するフランチャイズ契約である本件各基本契約を締結し,同契約に基づき,独立の事業者として,本件各店舗を経営していたものであって,このことはXが労働者であることと本質的に相容れないものであるとされた例
3 業務遂行上の指揮監督,時間的・場所的拘束性,代替性,報酬の算定・支払方法等およびその他の事情といった各観点からXの就労実態をみれば,使用従属性が認められるとのXの主張について,Xが指摘する各事情は,いずれもXの事業者性を減殺して,Xの労働者性を積極的に肯定できるまでの事情とはいえず,Xは労働者に該当しないというべきであるとされた例
4 Xが労働者に該当せず,Y社の使用者としての安全配慮義務への違反が肯定されない場合であっても,Y社が不法行為責任を負うことがありうるとしつつ,本件訴訟提起時点で損害賠償請求権についてすでに消滅時効が完成していたことは明らかであるところ,Y社は同時効を援用しており,上記請求権に基づくXの請求を認めることはできないとされた例
5 Xは労働者に該当せず,そもそも,XとY社との法律関係が労働契約であるということはできないから,Xの賃金支払請求を認めることもできないとされた例
第2章 フランチャイジーが労働者であることを前提とするフランチャイザー代表取締役らに対する賃金・時間外賃金相当額の、会社法に基づく損害賠償請求が認められなかった事例
第7部 行政訴訟
第1章 知事が福井県中小企業高度化資金貸付規則(昭和43年福井県規則第43号)に基づいてしたショッピングセンター協同組合に対する中小企業高度化資金の貸付決定が、行政処分に当たらないとされた事例
第2章 「経営システム」等に関するノウハウ等を譲渡する旨の契約を締結したとして,その譲渡対価を収益に計上した上,確定申告をしたところ,控訴人が,譲渡契約は架空の取引であるから,資金移動は,法人税法所定の受贈益に該当する旨認定した上,減額更正処分をし,さらに,法人税の各更正処分および過少申告加算税の各賦課決定処分をしたことから,被控訴人が,各処分の取消しを求めた抗告訴訟で,原審は,資金移動は受贈益に該当しないとして,被控訴人の請求を認容した原審を相当であるとした事例