液化石油ガス法に関する裁判例を網羅しています。
液化石油ガス法の正式名称は、
液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律
(昭和42年12月28日法律第149号)です。
同法は、行政法、産業法、事業法、経済法の1つです。
関連法令として、ガス事業法、高圧ガス保安法、電気事業法、
特定ガス消費機器の設置工事の監督に関する法律(ガス事業法とも関連する、ガス消費器具の工事に係る規制)
などがあります。
液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律とは、一般消費者等に対する液化石油ガスの販売、液化石油ガス器具等の製造及び販売等を規制することにより、液化石油ガスによる災害を防止するとともに液化石油ガスの取引を適正にし、もって公共の福祉を増進することを目的とする法律です。
なお、液化石油ガスとは法律上、次のように定義されている。
液化石油ガス
プロパン、ブタン、プロピレンを主成分とするガスを液化したもの
適用範囲
一般消費者等
調理器具、給湯器、空気調和設備など、生活のために液化石油ガスを使用する一般消費者
液化石油ガスの使用方法が一般消費者と類似する業務の場合
これらの液化石油ガスの流通過程(供給設備への可搬容器の運搬まで)、あるいは自動車(=LPG自動車)の燃料容器へ液化石油ガスを充填する販売行為及びこれを消費する自動車は本法律の適用外であり、それらに関する液化石油ガスの規制は高圧ガス保安法令による。よって、物理的には供給設備への容器の着脱・充填行為から貯蔵設備(固定バルク容器、貯槽等)、ガスメーター、配管、圧力調整器具等、消費器具までが対象となる。
ただし、液化石油ガスを消費者等の敷地外からガス導管により販売する行為は簡易ガス事業またはガス導管事業となり、その売買及び設備の保安管理に際してはガス事業法令による規制が優先される。
目次
第1部 民事訴訟事件
第1章 プロパンガス容器の転倒により流出したガスの引火による火災事故につきプロパンガス販売業者に損害賠償請求が認められた事例
第2章 発火そのものが火薬、ガス類の爆発によるときは「失火ノ責任ニ関スル法律」の適用はない
第3章 道路上に置かれたプロパンガスボンベに自動車が衝突しプロパンガスが炎上して付近の工場を全焼させた事故につき、プロパンガスの使用者、販売業者、市の損害賠償責任を肯定した事例
第4章 建売住宅への引越しの際のプロパンガスの引火爆発による住宅全焼、居住者負傷事故につき、建売業者とプロパンガス販売業者の損害賠償責任が認められた事例
第5章 1 液化石油ガス消費設備が民法717条にいう「土地の工作物」に当たるとされた事例
2 液化石油ガスの供給者がガス消費設備について民法717条にいう「占有者」に当たるとされた事例
第6章 ビルにおけるガス爆発事故についてLPガス販売事業者の土地工作物責任が認められた事例
第7章 1 事前協議約款に違反して保安業務を廃止した一事をもって、本件解雇が無効であるとはいえないとして、解雇の効力は、保安業務の廃止に合理性が認められるか否かによって決まるとされた例
2 いっきに右業務を全面的に廃止するというのは性急にすぎ、従業員の退職に直結する重大事項であり、全面的廃止だけは回避すべきであって、本件業務の全面的廃止に合理性を見いだすことは困難であるとされた例
3 本件解雇が、債権者らの組合活動を嫌悪するが故に行った不当労働行為であると判断された例
第8章 ガス湯沸器を原因とする一酸化炭素中毒事故につきガス器具の点検業者の責任が肯定され、ガス器具の販売業者、設置業者、賃貸人の責任が否定された事例
第9章 1 プロパンガスなどの販売を業とする甲社が、同業の乙社において不公正な取引によって甲社の顧客を奪い、また、甲社が顧客に提供していたプロパンガス設備の所有権を侵害しているとして、乙社に対して損害賠償を求めた訴えにつき、不公正な取引を理由とする不法行為の成立は認められないが、ガス設備の所有権侵害を理由とする不法行為の成立が認められるとされた事例
2 右の場合において、甲社が顧客に提供していたガス供給設備に対する乙社の所有権侵害につき、民事訴訟法248条の趣旨を忖度するなどして、甲社の被った損害が算定された事例
第10章 アパートの賃借人が,一酸化中毒で死亡した事故に関して,死亡者の相続人が,ガス器具(湯沸器)の販売業者,ガスの販売事業者,ガス器具の設置業者及びアパートの賃貸人に対し,不法行為若しくは債務不履行に基づく損害賠償を求めた事案について,液化石油ガスの販売事業者である第1審被告ほくねんは,販売事業者がなすべき点検義務を怠った過失があるとして,損害額を算定し,原判決中同被告に関する部分を変更して,第1審原告承継人らの請求を一部認容し,その余の請求を棄却した事例
第11章 建売住宅について,液化石油ガス設備を敷設し,LPガス販売契約に基づき,LPガスを販売した場合につき,販売契約の解除に伴うLPガスの消費設備相当額の請求を認めなかった事例
第12章 本件は,原告が,被告との間でLPガス消費設備等の利用に関する契約(以下「本件契約」という。)を締結し,原告居住建物にLPガス配管設備を設置し,同契約には,被告が本件契約を解約する場合,同設備をその残存価値を代金として買い取る旨の特約(以下「本件特約」という。)が存したところ,被告が原告に対しLPガスの購入先を他社に変更する旨通知し,同契約を解約したとして,上記設備の買取代金8万0997円及びこれに対する同解約の日の翌日からの商事法定利率による遅延損害金の支払を求めている事案である。
第13章 1 大手販売会社によるLPガスの販売が地域による不当な差別対価に当たらないとして、中小小売業者からの独占禁止法24条に基く差止請求が棄却された事例
2 大手販売会社によるLPガスの販売が相手方による不当な差別対価に当たらないとして、中小小売業者からの独占禁止法24条に基く差止請求が棄却された事例
第14章 大手販売会社によるLPガスの販売が相手方による不当な差別対価に当たらないとして、中小小売業者からの独占禁止法24条に基く差止請求が棄却された事例
第15章 LPガスの配管等を設置した上で,LPガスの供給取引を行った場合につき,供給取引を解約した場合の設備買取請求を認めなかった事例
第16章 LPガスの供給先を他の業者に切り替えた消費者に対する元供給先LPガス販売業者のLPガス設備費用請求が契約不成立および錯誤無効により棄却された事例
第17章 LPガスの供給先を他の業者に切り替えた消費者に対する元供給先LPガス販売業者のLPガス設備費用請求が契約不成立および錯誤無効により棄却された事例
第18章 継続的なLPガス供給元切換顧客紹介業務委託契約に基づき未払紹介手数料を請求すると共に,被告が当該業務委託契約を一方的に解除したため資本投下した広告費及び人件費相当額の損害賠償に対し,被告は,原告との業務委託契約は試験契約であり遡及的な解除権が被告にあった旨や,原告が紹介した顧客は紹介手数料の支払対象となるような顧客とはいえない旨などを主張して,原告の請求を争ったが,原告の請求は理由がないとして棄却した事例
第19章 原告(LPガス販売事業者)が被告らに対し,被告ら所有建物内のLPガス消費設備の所有権を主張し,被告らと締結した同設備等の利用契約に基づき,同消費設備の買取代金等を請求した事案につき,被告らの同契約中の買取条項の合意がない等の主張に対し,合意の成立は認めるが原始的に不能であり,合意は無効,或いは,法律行為の要素の錯誤を認め,原告の請求を棄却した事例
第20章 LPガス供給販売契約に付随して締結された設備無償使用契約に基づき,LPガス供給販売契約の終了時に,LPガス貯蔵供給設備等の買取を求めることは,公序良俗に違反し無効であるとはいえない
第21章 LPガスの継続的供給契約に基づき、原告の費用で被告家屋に設置したガス設備につき、原告主張の停止条件附売買代金請求は理由がないとし、又利益調整合意による償金請求の合意の成立は認められないとし、さらに同供給契約の中途解約による損害賠償の合意があったとも認められないとして本訴請求を棄却した事例
第22章 LPガス,ガス器具の販売及びガス配管工事の施工を目的とする原告が,被告との間でLPガス販売及び設備貸与契約を締結し,被告へのLPガスを継続的に供給する取引を行っていたところ,被告が前記取引を中止したことから,被告に対し,契約に基き清算金を請求した事案で,被告の契約締結の意思表示は,その要素に錯誤があり,契約は無効と解すべきであるとして,原告の請求を棄却した事例
第23章 1 建売住宅にあらかじめLPガス消費設備(住宅内のガス配管等)等を設置したLPガス販売事業者と消費者との間でLPガス供給契約とともに締結された上記設備等に関する合意が,減価償却計算を基礎として同設備等の設置費用の負担,帰属,利用関係,LPガス供給契約解除の場合における原状回復の内容を合理的に定める利益調整合意として,上記設備等が建物に付合するか否かにかかわらず有効に成立しており,単に売買契約という法形式を採用していることからその契約の成立ないし効力を否定することは許されないとされた事例
2 建売住宅に上記LPガス消費設備等とともに設置された給湯器について,これを設置したLPガス販売事業者と消費者との間でLPガス供給契約とともに締結された上記給湯器に関する合意には,給湯器の耐用年数の経過前にLPガス供給契約の解除がされた場合に消費者がLPガス販売事業者に対して給湯器の残存価格を補償費として支払うことによって給湯器の所有権を取得することを内容とする停止条件付き売買契約が含まれているとされた事例
第24章 本件は,液化石油ガス(以下「LPガス」という。)販売事業者である原告において,被告3ないし98(一括して,以下「被告消費者ら」という。)との間で,LPガスの販売契約(以下「販売契約」という。)を締結し,LPガス供給及び消費のための設備(ガスボンベから燃焼器具に至るまでの1連のガス流通設備及びこれに附属する保安設備類をいい,以下「ガス設備」という。)を,被告消費者らの住宅に設置した際,主位的には,原告との販売契約を解消する場合には,未償却期間に相当する額に減額したガス設備代金(以下「減額後設置代金」という。)を支払うとの合意が成立したとして,予備的には,原告との販売契約を解消する場合には,未償却期間に相当する額に減額した売買代金でガス設備を買い取るとの合意(原告が主位的に主張する減額後設置代金支払合意又は予備的に主張するガス設備買取合意を,一括して,以下「本件精算合意」といい,被告消費者らが支払うべき金員を一括して「本件精算金」という。)が成立したとして,また,被告消費者らが被告Y1及び被告Y2(両者を一括して,以下「被告会社ら」という。)に委任してガス設備の一部を取り外させた行為が所有権侵害に該当するとして,被告3ないし37についてはそれぞれ被告Y2と連帯して,被告38ないし被告98についてはそれぞれ被告Y1と連帯して,本件精算合意に基づき請求目録の「番号」3ないし98の各「設備残費用」欄記載の各減額後設置代金又は各売買代金及びガス設備の所有権を侵害した不法行為に基づき各5万円の損害賠償金(弁護士費用)並びに遅延損害金の支払を,被告Y1及び被告Y2に対しては,原告と被告消費者らとの間の販売契約を侵害するとともに,原告の営業権を侵害し,名誉及び信用を毀損したとして,不法行為に基づき,被告Y1については損害賠償金1770万1018円〔被告38ないし98,訴え取下げ前の被告であったB1(以下「消費者100」という。),E1(以下「消費者101」という。),F1(以下「消費者102」という。),G1(以下「消費者103」という。)及びH1(以下「消費者104」という。)の各減額後設置代金又は売買代金相当額の合計である780万1018円並びに営業権侵害,名誉及び信用毀損の慰謝料等990万円。〕及び遅延損害金の支払を,被告Y2に対して,損害賠償金970万1409円〔被告3ないし37及び訴え取下げ前の被告であったI1(以下「消費者99」という。)の減額後設置代金又は売買代金相当額の合計である430万1409円並びに営業権侵害,名誉及び信用毀損の慰謝料等540万円。〕及び遅延損害金の各支払を,それぞれ求めた事案である。
第25章 液化石油ガスの保安の確保及び取引きの適正化に関する法律16条17号の規定は,一般消費者等からLPガス販売契約解除の申出があった場合において,消費設備にかかる配管であって,LPガス販売業者が所有する場合の規定であるから,バルク設備費用及びその配管の買取代金については,適用されないとした事例
第26章 消費者に対し継続的にLPガスを供給することによって本件設備等の設置費用を回収し得る権利ないし地位は,法律上保護されるべき利益ということはできず,これを被侵害利益とする不法行為の主張は認められないとした事例
第27章 原告がLPガスの供給契約を締結している顧客に対し,被告が虚偽の事実を告知流布し,それにより原告の顧客を他社との供給契約に切り替えさせ,原告に損害を与えたと主張して,原告が,被告に対し,不正競争防止法に基づき虚偽事実の告知流布の差止めを求めるとともに,損害賠償を請求した事案について,被告が顧客を勧誘する際,虚偽の事実を告知流布した不正競争行為の事実を認め,原告の営業上の利益を侵害したとして,差止請求を認容し,認定した損害額等の限度で損害賠償請求を認容した事例
第28章 家庭用LPガス料金について適切な説明や値上げの通知がなく,原告らの承諾のない料金値上げは無効であるとして,不当利得返還及び不法行為に基づく損害賠償を請求した事案について,料金表には,料金改定を実施する場合があるとの記載があり,原告らは,ガス料金の値上げの通知を知っていたか,容易に知りうる状況で,異議を保留することなく任意に改定後の料金請求額を支払っており、料金値上げが有効に成立しているとして,請求が棄却された事例
第29章 不正改造されたガス湯沸器の不完全燃焼を原因とする一酸化炭素中毒による死傷事故について,ガス湯沸器が製造・販売された時点においてこれに欠陥が存在したことやガス湯沸器を製造又は販売した会社らにおいてこれを回収する義務があったこと等を否定したが,ガス湯沸器を販売した会社の従業員の過失に基づく不正改造により上記死傷事故が発生したことを認めて,同社に使用者責任(民法715条1項)に基づく損害賠償を命じた事例
第30章 受託者が委託者の顧客に対して継続的にLPガスを供給する旨のLPガス配送委託契約が合意解除された後,受託者が委託者の顧客に対して自らの営業活動を行ったことが,同契約に基づく守秘義務及び競業避止義務並びに信義則上の競業避止義務に違反する債務不履行にも,違法な勧誘行為により委託者の顧客を奪った不法行為にも当たらないとされた事例
第31章 プロパンガスの販売、供給設備の設置工事等を業とする原告が、賃貸不動産を有する被告に対し、ガス供給契約の解約に伴う解約清算金、慰藉料及び逸失利益等を請求した訴訟につき、不起訴の合意を内容とする確約書の存在に基づく被告の本案前の申立ては、確約書の原告作成部分は真正に成立したものとは認められないとした上で、本件契約の解除は、被告のリホーム計画によるもので、被告の責めに基づくものであるとして、解約清算金の支払いを命じ、その余の請求(慰藉料については、上記確約書が真正に作成たとは認められないが、誰が偽造したか捜査中で、被告による偽造とは認められない。)を棄却した事例
第32章 液化ガス等の販売業者である原告が,ガス供給設備が設置された本件建物を買い受けた被告に対し,主位的に,本件消費設備の売買予約の合意と予約完結権の行使による売買代金の請求,予備的に,利益調整合意に基づき又は同消費設備が建物に付合したと認められる場合は民法248条の償金支払請求権に基づき金員の請求をした事案。
第33章 原告と被告との間で締結したLPガス供給契約を解除した場合には,原告が被告の居住する建物に設置したLPガス消費設備(本件消費設備)を被告が買い取る旨の売買予約契約(本件契約)を締結した原告が,被告に対し,売買予約完結権の行使に基づき,売買代金等の支払を求めるなどした事案。
第34章 被告との間で,LPガスの供給契約を締結しその供給を開始した後,被告から供給取引停止の申出を受けた原告が,被告所有の建物に設置したLPガスの配管などの設備について,残存価値相当額の支払を求める事案。裁判所は,ガス設備のうち消費設備(LPガスメータ出口から消費機器まで)は建物に強く符合し独立の取引の対象とはなり得ないから,同設備に係る売買予約契約は不成立か原始的無効であり,償金請求(民法248条)も付合した時点の所有者は原告でないから認められないとし,また売買予約契約が供給契約解消に伴う利益調整契約と理解しても,消費者契約法9条の適用を受け,「平均的な損害の額」とは消費設備の残存価値相当額であるが,これに逸失利益は含まれず,それ自体の価値はないとして,請求を棄却した事例
第35章 LPガス供給業者の切替営業が,同業者に対する不法行為ないし不公正な取引方法としての「競争者に対する取引妨害」(一般指定14項)に当たらないとされた事例
第36章 本件は,液化石油ガス(以下「LPガス」という。)の販売事業者である原告が,被告が新築して所有する賃貸用共同住宅について原告が当該共同住宅にLPガスを供給し,当該共同住宅の居住者等においてこれを消費するための配管等の設備1式及びガス機器(給湯器)を設置し,当該共同住宅へのLPガスの供給契約を締結していた原告が,上記ガス供給契約とともに原告と被告との間でされた合意において,上記ガス供給契約ないし当該合意に基づく契約が被告の都合により解除された場合には,被告が原告に対して所定の計算方法により算出された上記ガス設備及びガス機器の残存買取価格を支払う旨の合意又は原告と被告との間の利益を調整するために被告が原告に対して所定の計算方法により算出される金額を支払う旨の合意がされているところ,上記ガス供給契約の締結ないし当該合意から1年余りで被告によりこれが解除された,また,上記合意において,清算が完了しない限り被告は原告以外のガス販売事業者へのLPガス供給変更等の着手はできないものとされ,これに違反した場合には,被告が原告に対して所定の違約金を支払う旨の合意がされているところ,被告において清算未了のまま他のガス販売事業者への変更を行ったと主張して,上記合意に基づき,被告に対し,上記ガス設備の残存買取価格として算出される96万3069円,上記ガス機器の残存買取価格として算出される136万2533円並びに上記所定の違約金28万円の合計260万5062円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。
第37章 本件は,液化石油ガス(以下「LPガス」という。)の供給会社である原告が,被告との間で,被告が購入した建売住宅へのLPガス供給契約を締結していたところ,同ガス供給契約を解約した被告に対し,同住宅のために原告があらかじめ設置していたLPガス設備に関し,主位的に,売買予約の予約完結権の行使により成立した売買契約に基づく代金として,予備的に,原告と被告との間の利益調整合意に基づく残存価値分として,又は,民法248条に基づく償金として,金15万4432円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。
第38章 本件は,プロパンガスの販売等を業とする原告が,被告との間で,原告が被告の自宅建物に設置したLPガス供給設備及び消費設備を利用して,被告にLPガスを供給するとともに,原告が被告に対して上記消費設備を約定の代金額で売り渡す旨の売買予約をし,上記LPガス供給取引が終了したときに予約完結権を行使し得る旨の契約を締結していたところ,原告が被告から上記LPガス供給取引を解除して他社との契約に切り替える旨の通知を受けたため,上記予約完結権を行使したと主張して,売買契約に基づき,上記約定の代金額である3万6164円及び遅延損害金の支払を求める事案である。
第39章 本件は,E株式会社(後記サブリース契約締結当時の商号は,E’株式会社。以下「E」という。)が,別紙物件1覧表中「所有者」欄記載の者(以下「本件各物件所有者」という。)との間で,Eが賃借人として一括管理する物件である別紙物件1覧表記載物件番号1ないし35の各物件(以下「本件各物件」という。)につきサブリース契約を締結し,Eの完全子会社であり,LPガス(以下,単に「ガス」という。)販売事業を営む原告が,本件各物件所有者との合意に基づいて,本件各物件にガスを供給していたところ,同じくガス供給事業を営む被告が,原告又は本件各物件所有者の設置したガス供給設備を撤去し,代わりに被告のガス供給設備を設置する工事をしたため,本件各物件に居住する者との間のガス販売契約に基づくガス販売代金の支払を受けることができなくなったなどと主張して,被告に対し,民法709条(不法行為)に基づく損害賠償として,前記のガス販売代金相当額等の支払及び遅延損害金の支払を求める事案である。
第2部 行政訴訟事件
第1章 通商産業大臣がした一般ガス供給区域拡張の許可処分及びこれに伴うガスの供給規程の変更認可処分の取消しを求める訴えにつき、液化石油ガスの販売事業を営む者の原告適格を否定した事例
第2章 考案の名称を「配管漏洩検知装置」とする実用新案登録に対し,実用新案登録を無効にすることについて審判請求をし,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決がされた場合につき,本件考案にいうガスの流れの異常に主管路のガス漏れによって生ずる,ガス漏れがないときは異なるガスの流れ一般が含まれ,したがって「一定期間ガス流れが停止しない」という漏洩も含むことが明らかであるとした事例
第3章 他の液化石油ガス販売事業者の所有する既設の供給設備を撤去したことが,液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(以下「液石法」という。)16条2項及び液石法施行規則16条15号の2に違反するとして,処分行政庁による液石法16条3項に基づく命令を,適法とした事例
第4章 本件は,B商店の屋号でLPガス,A重油,灯油等の燃料小売業を営む原告が,平成22年分から平成24年分まで(以下「本件各年分」という。)の所得税の確定申告において,原告が代表者を務める株式会社C(以下「本件会社」という。)にB商店の業務を委託したとして,その外注費(以下「本件外注費」という。)を事業所得の金額の計算上必要経費に算入したところ,兵庫税務署長が,本件外注費を必要経費に算入することはできないとして,原告に対し,本件各年分の所得税の更正(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定(以下「本件各賦課決定処分」といい,本件各更正処分と併せて「本件各処分」という。)をしたため,被告を相手に,本件各更正処分のうち各申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。
第5章 (1)被告は,平成30年3月9日,原告に対し,原告が,平成26年11月以降,既に他の販売事業者から液化石油ガス(以下「LPガス」という。)の供給を受けている一般消費者等に,供給元を自社に切り替えることを目的とした勧誘等の営業活動(以下「切替営業」という。)を行った販売事業者の入会申込みを否決しており,もって当該入会希望者が損害賠償責任保険に加入することができなくなることにより,原告が神奈川県内のLPガス販売事業に係る事業分野における現在又は将来の事業者の数を制限しており,これが私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)8条3号に該当し,同条に違反するとして,当該否決行為をしないことなどを命ずる排除措置命令(平成30年(措)第8号)をした。
(2)本件は,原告が,被告の事実認定及び法令の解釈,適用に誤りがあるとして,上記命令の取消しを求める事案である。
第3部 刑事事件
第1章 火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反被告事件
第2章 完全否認の過激派による放火事件につき、証人3名の人物識別供述の信用性を全て否定するなどして、無罪の1審判決を維持した事例
第3章 強制排気式ガス湯沸器が不正改造が原因で不完全燃焼を起こし,居住者他1名が一酸化炭素中毒により死傷した事故について,同湯沸器を製造・販売した会社の代表取締役社長及び品質管理部長に,点検・回収等の措置を講じなかった過失があるとされて,業務上過失致死傷罪の成立が認められた事例