金融機関更生特例法に関する裁判例を網羅しています
金融機関更生特例法の正式名称は、
金融機関等の更生手続の特例等に関する法律
(平成8年法律第95号)です。
同法は、金融機関の倒産手続について定めています。
略称は、更生特例法です。
同法は、金融法、倒産法の1つです。
関連法令として、会社更生法、民事再生法、破産法、銀行法、金融商品取引法(旧・証券取引法)、保険業法などがあります。
目次
第1部 民事訴訟事件
第1章 更生債権届出期間満了後に相殺適状となる更生債権を更生担保権として扱うことの可否(消極)
第2章 預金保険法74条1項に基づく金融整理管財人による業務および財産の管理を命ずる処分を受けた金融機関が、その賃借している期間の定めのある建物賃貸借契約を解約することができるか(消極)
第3章 後に解散した被告に対し,劣後ローンとして,弁済期を定め金員を貸付けていた原告が(原告は,他方で,被告から劣後ローンとしての貸付けを受けていたが,後に更生手続においてその全額を免除された。),当該貸金を請求している事案で,被告のした相殺が有効か否か,被告の解散により弁済期が到来したといえるか,原告の請求が信義則違反ないし権利濫用にならないか,などが争われたが,請求を一部認容した事例
第2部 保険会社
第1章 千代田生命および協栄生命会社更生手続開始決定
第2章 原告が,解約した新企業年金保険契約の解約返戻金のうち,早期解約控除制度の適用により,控除したとする返戻金残金の支払を求めた事案について,本件解約が,保険契約の条件変更に関する特則7条2項1号所定の早期解約控除適用除外事由に該るとして,原告の請求を認容した事例
第3章 原告が,A生命保険を含む生命保険会社と締結した企業保険年金契約により,各保険会社は,分担割合に応じて責任準備金を保有するところ,更生会社A生命が前記契約に基づき,責任準備金を他の保険会社に移管する義務を負っていることの確認を更生管財人(被告が訴訟承継した。)に求めた事案
第4章 証券投資信託における委託者の業務等を営む会社が、後に金融機関更生特例法に基づく適用申請をした保険会社発行のコマーシャルペーパーを中期国債ファンドの信託財産に組み入れたことについての損害賠償請求責任及び同保険会社の上記適用申請があった後に上記国債ファンドを解約した者に対する同保険会社の更生計画に基づく弁済金の分配・清算義務がいずれも否定された事例
第5章 保険会社の会社更生計画における更生特例法に基づく早期解約控除特則が、いわゆる代行返上に伴なう厚生年金基金保険解約の解約返戻金に適用されないとされた事例
第3部 証券会社
第1章 証券取引法79条の20第3項2号に規定する「証券業に係る取引」と証券会社が同取引を仮装して行った取引
第4部 取締役の責任
第1章 生命保険会社の融資等に関し取締役の損害賠償責任の更生特例法上の査定がされた事例
第2章 公正ナル会計慣行、日本長期信用銀行事件
第3章 公正な会計慣行、日本債券信用銀行事件
第4章 一 銀行の元頭取ら役員および監査法人に対し、その有価証券報告書における貸付金の償却不足および保有株式の評価損の不計上の虚偽記載があるとして、株主の提起した損害賠償が棄却された事例
二 銀行保有の上場株式の市場価格が薄価で売り渡すプットオプション取引がされたときにつき、当該株式を薄価で評価計上する会計処理が適法とされた事例
三 会計基準の確立されていない新たな会計問題については、類似の会計問題についての会計基準を類推適用して処理することが許される
第5章 1 銀行の元取締役が母体行責任を前提に系列ノンバンクに対して行った金融支援(損益支援・資金繰り支援)について,経営判断に誤りはなく,かつ,社会的相当性の逸脱もないとして,善管注意義務違反が否定された事例
2 銀行の元取締役が系列ノンバンクに対する支援として受皿会社に対して行った融資(不良債権肩代わり資金及び債権簿価譲渡資金)について,社会的相当性を逸脱したとして,善管注意義務違反が肯定された事例
3 銀行の元取締役が母体行責任を前提に系列ノンバンクに対する支援として,受皿会社に対して行った物件引取資金の融資について,経営判断に誤りはなく,かつ,社会的相当性の逸脱もないとして,善管注意義務違反が否定された事例
第6章 平成9年9月期及び平成10年3月期における銀行の関連ノンバンクに対する貸出金の償却・引当に関する会計処理をするに当たり,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)32条2項所定の公正なる会計慣行と認められる資産査定通達等により補充される改正後の決算経理基準によることなく,それまで公正なる会計慣行とされていた税法基準により補充される改正前の決算経理基準によった場合であっても,前者の基準が当時における唯一の公正なる会計慣行とはいえず後者の基準もなお当時における公正なる会計慣行であったとして,同基準に従い配当可能利益があるとしてした配当手続に違法はないとされた事例
第5部 労働事件
第1章 1 労働組合による会社批判のピラ配付行為が違法といえるか(消極)
2 ビラ配付行為が正当な組合活動か否かを判断するに当たっては,摘示事実の真実性,表現自体の相当性,表現活動の目的,態様,影響などを総合して判断するのが相当であるとされた事例
第2章 裁判所は,保険会社の営業社員懲戒規程の懲戒基準中,替玉審査又は無診査を認め,解約と新規契約の繰返しの不利益並びに保険契約と相続時精算課税制度適用の必要手続につき,保険契約者に十分説明した旨の原告主張を認めず,素預かり及び代筆につき,原告には被告(保険会社)主張に係る懲戒事由は存するとし,懲戒解雇につき,その選択は相当であるとして有効とし,請求をいずれも棄却した事例
第6部 文書提出命令
第1章 1 保険管理人によって設置された弁護士及び公認会計士を委員とする調査委員会が作成した調査報告書が民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらないとされた事例
2 民訴法197条1項2号所定の「黙秘すべきもの」の意義
3 保険管理人によって設置された弁護士及び公認会計士を委員とする調査委員会が作成した調査報告書が民訴法220条4号ハ所定の「第197条第1項第2号に規定する事実で黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書」に当たらないとされた事例
第7部 情報公開
第1章 1 行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条2号イ所定の「おそれ」の有無の判断方法
2 行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条2号イ所定の不開示情報に該当するとして不開示とした行政文書の中に、他の法令において開示が認められている部分が含まれているとしても、当該不開示情報を細分化して不開示部分を除いた部分を開示すべき義務はないとされた事例
3 保険会社からの金融庁に対する報告内容等に関する情報が、行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条2号ロに該当するとされた事例