労働者(従業員)の出向に関する主要な裁判例を網羅しています。
出向については、労働契約法14条にも規定があります。
目次
第1部 最高裁判例
第1章 本人の同意を伴わない出向命令は違法かつ無効
第2章 在籍出向中の労働者に対する復帰命令と当該労働者の同意の要否
第3章 転勤命令が権利の濫用に当たらないとされた事例
第4章 取引先会社への出向命令につき、業務上の必要性、人選の合理性ともに認められず、権利の濫用にあたるとした原判決が維持された例
第5章 使用者が労働者に対し個別的同意なしにいわゆる在籍出向を命ずることができるとされた事例
第2部 高裁判例
第1章 出向労働者に対する解雇に関し、出向労働者たる地位の確認という救済方法をとった原判決が維持された例
第2章 労働組合の法人格を有する支部が構成員を欠いたことによって自然消滅した場合における、団体交渉応諾、組合費控除禁止、控除組合費相当額及びこれに対する遅延損害金の支払、支配介入禁止並びにポストノーティスを使用者に命じた救済命令の取消しを求める訴えの利益
第3章 親会社から子会社に出向中の者による子会社におけるセクシュアル・ハラスメントについて、子会社の使用者責任は認められたが、出向元の親会社は実質上の指導監督関係を有していなかったとしてその使用者責任が否定された事例
第4章 出向(在籍出向)においては、出向者と出向元会社との間の労働契約は維持されているものの、労務提供の相手方が変わり、労働条件や生活関係等に不利益が生じる可能性があるので、出向を命じるためには、これらの点の配慮を要し、当該労働者の承諾その他これを法律上正当づける特段の根拠が必要であるとされた例
第5章 出向先の労働条件が通勤事情等をも付随的に考慮して出向元と比べて著しく劣悪となるか否か、対象者の人選が合理性を有し妥当なものであるか否か、出向の際の手続きに関する労使間の協定が遵守されているか否か等の諸点を総合考慮して、出向命令が人事権の濫用に当たると解されるときは、当該出向命令は無効であるとされた例
第6章 「過去の法律行為(本件出向命令)の無効確認を求める訴え」が,控訴審で主任的に追加された「出向先に労務を提供する義務のないことの確認を求める訴え」について判断すれば足りるとして,確認の利益を欠き不適法であるとして却下された例
第7章 被控訴人Y1社から訴外Z社に出向していた控訴人Xが,遅刻が多く,睡眠覚醒リズム障害の疑いとの診断書に基づき業務を軽減してもなお遅刻が続いたため,被控訴人Y1社は,控訴人の健康を害することがないように控訴人を異動させることを検討し,その結果,勤務時間が午前8時半から午後5時までの間とほぼ一定しており, 残業の少ない被控訴人Y2社の配送管理部への配置が適切であると判断して,平成16年10月1日付で本件出向を命じたことが認められ,これらの事実によれば,控訴人について出向措置を講ずる必要があり,かつ,出向先の選択にも合理性があるから,本件出向命令が権利の濫用に当たるとはいえないとされた例
第3部 地裁判例
第1章 系列会社への出向と労働者の同意の要否
第2章 同一企業グループ3社間の出向につき、入社時の包括的同意により個別的同意はいらないとされた例
第3章 出向社員に対する賃金支払義務
第4章 系列会社への転属命令が、入社時の包括的同意、就業規則の規定を根拠に有効とされた例
第5章 1、親会社から子会社への出向命令拒否を理由とする懲戒解雇が問題とされた事例
2、出向先と出向元が密接な関係をもつことから、出向は、実質的に配転と同一であるとして配転に関する法理が適用された事例
第6章 出向命令拒否を理由とする懲戒解雇につき、出向命令の無効、賞罰審査委員会の議を経ていないことを理由に、右懲戒解雇が無効とされた例
第7章 雇用調整のための出向命令が、実質的にみて、解雇を回避するための措置としてなされた退職勧奨としての性格を強く有している場合、右出向命令の拒否を理由とする解雇については、整理解雇の法理を適用すべきであるとされた事例
第8章 造船不況下での余剰人員に対策としての出向命令に従わなかったことを理由とする解雇が有効とされた例
第9章 出向者の退職金につき、出向元会社が支払うべきものとされた例
第10章 在籍出向と退職金
第11章 出向先会社における上司に対する侮辱的言動等を理由として、出向元及び出向先会社がした出勤停止、降格等の懲戒処分が適法とされた事例
第12章 秘書業務代行業を営む会社を退職した後、その顧客を奪って同種の営業をした者及びこれを命じた者の損害賠償責任が認められた事例
第13章 赤字対策としての工場の分離・子会社化に伴う移籍を拒否したことを理由とする解雇を解雇権の濫用にあたり無効とした原判決が相当とされた例
第14章 採用時の就業規則・出向規程による出向への包括的同意は復職を前提とするものであり、右包括的同意は定年退職時まで復職を認めない本件出向までも含むものとはいい難いとされた例
第15章 出向先会社は、工事請負会社として工事の進捗状況のチェックや工事の遅れに対する手当、(出向)労働者の健康状態への留意義務などがあるとして、Aの死亡(自殺)につき過失(安全配慮義務違反)があったとされた例
第16章 被告会社は、原告らとの間に雇用契約が存在することを前提として、子会社で勤務している原告らに人事や賃金変更等に関する辞令を交付していたというべきであり、原告らと被告会社との間の雇用契約は合意解除されたとは認められないとして、原告らの子会社での勤務は転籍ではなく出向に当たるとされた例
第17章 出向社員に対し、出向先社員の不正行為に関して出向元の監督者懲戒処分規定を適用ないし準用することが許されるとしても、出向元の企業秩序第18章 Xらは,いずれもYの指示に従い,退職出向(転籍)によりO社に出向して定年退職を迎えたものであるが,定年退職時の退職金支払義務は出向先のO社にあるとされた例
に及ぼす影響が間接的なものにとどまることは解雇の有効性を検討するうえで考慮されなければならないとされた例
第19章 JR貨物から川崎重工に出向した社員が,出向中に精神疾患に罹患した場合,JR貨物と川崎重工の安全配慮義務違反の責任が認められなかった事例
第20章 被告の従業員であった原告が,被告が,原告を懲戒解雇したのは違法であり,その告知により,原告の社会的評価が著しく低下し,再就職にも支障が生じたとして,退職金及び名誉毀損による慰謝料の支払と,被告の債務不履行ないし不法行為に基づく,慰謝料の支払及び謝罪文の交付及び掲示を求めた事案について,原告が,海外の出向先から帰国後,出社しないことをもって無断欠勤とし,懲戒解雇したのは相当性を欠き,適法性が認められないとして,被告の自己都合退職による退職金の請求に限り,これを認容し,被告にも相応の責任があるとして,その余の請求を棄却した事例
第21章 手歯止め粉砕事故を起こした電車運転士に対する、事故後の再教育・審査不合格の結果なされた、清掃業務従事をもたらす出向命令が有効とされた例
第22章 管理職に対する単純事務作業への配転命令について、配置の目的、人選に合理性があり、業務量が過重にならないよう配慮されたものであるから、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものではなく、業務上の必要性があるとされた例
第23章 在籍出向中の労働者がうつ病に罹患し自殺した場合の安全配慮義務違反
第24章 使用者が労働者に出向を命ずるに当たっては,当該労働者の同意その他出向命令を法律上正当とする明確な根拠を要するというべきであるとされた例
第25章 元々は,厚生労働省の一部局であった国立研究開発法人と独立行政法人間の人事異動について,労働者の同意が必要な転籍出向にあたると判断した事例