有給休暇に関する主要な裁判例を網羅しています。
年次有給休暇は、労働基準法39条で定められています。
同条を根拠条文で検索しました。
目次
第1部 最高裁判例
第1章 1、労働基準法39条3項にいう労働者の「請求」の意義
2、具体的な休暇日を特定してなされた年次有給休暇の時季指定の法的効果
第2章 1、年次有給休暇の利用目的と労働基準法
2、他の事業場における争議行為等への参加と年次有給休暇の成否
3、労働基準法39条3項但書にいう「事業の正常な運営を妨げる」か否かの判断基準
第3章 所属の事業所以外の事業所における争議行為に休暇中の労働者が参加した場合と当該年次有給休暇の成否
第4章 1、労働者が指定した年次有給休暇の期間が開始し又は経過したのちに使用者がした時季変更権行使の効力
2、労働者が指定した年次有給休暇の期間が開始し又は経過したのちに使用者がした時季更権行使の効力が認められた事例
第5章 郵政事業職員の年次有給休暇のうち所属長が年度の初頭に職員の請求により各人別に決定した休暇付与計画による休暇についての年度の途中における時季変更権行使の要件
第6章 年休請求者が当局の時季変更権の行使にもかかわらず欠務したことを理由とする戒告処分を有効とした原判決が維持された例
第7章 公立高校の教諭が教職員組合の動員指示に従って年次休暇の時季指定をして集会等に参加した行動が年次休暇に名を藉りた同盟罷業とはいえないとされた事例
第8章 期末テスト当日に学校長の承認を得ることなく年休をとり、職場離脱したテスト科目担当教員に対する戒告処分を有効とした原判決が維持された例
第9章 時季変更権の行使を適法なものとし、欠務を理由とする戒告処分を有効とした原判決が維持された例
第10章 年休の時季指定に対し、成田闘争へ参加するためのものであることを理由になされた時季変更権の行使は法的効果は生じないとした原判決が維持された例
第11章 勤務割における勤務予定日につき年次休暇の時季指定がされた場合に休暇の利用目的を考慮して勤務割を変更するための配慮をしないことの可否
第12章 勤務割における勤務予定日につき年次休暇の時季指定がされた場合に休暇の利用目的を考慮して勤務割変更の配慮をせずに時季変更権を行使することの許否
第13章 1、勤務割による勤務予定日についての年次休暇の時季指定に対し使用者が代替勤務者確保のための配慮をせずにした時季変更権の行使が適法である場合
2、勤務割による勤務予定日についての年次休暇の時季指定に対し使用者が代替勤務者確保のための配慮をせずにした時季変更権の行使が適法とされた事例
第14章 前年の稼働率によって従業員を翌年度の賃金引上げ対象者から除外する旨の労働協約条約の一部が公序に反し無効とされた事例
第15章 日本シェーリング(賃金引上げ)事件
第16章 労働者が自己の所属する事業場における争議行為に参加する目的をもって職場を離脱した場合と年次有給休暇の成否
第17章 1 労働基準法39条1項の「出勤率」の計算に際しての「全労働日」とは、1年の総暦日数のうち、労働者が労働契約上労働義務を課せられている日数をいうとされた例
2 祝日、土曜日、年末・年始等の各休日は、就業規則上、労働義務のない日とされていると解されるべきであるから、右「全労働日」のうちに含ましめることは許されないとした原判決が維持された例
3 適法な計算式によれば「全労働日」の8割以上出勤し、年休権が成立しているとした原判決が維持された例
4 年休取得日の属する期間に対応する賞与の計算上右年休取得日を欠勤として扱い、賞与を減額することは許されないとされた例
5 年休権行使に対し、前記計算式に基づき年休権はないものとして、欠勤として扱い、賃金カットし、また賞与を減額したことにつき、右カットおよび減額分の支払い請求を認容した原判決が維持された例
6 右賃金カット分について附加金の支払い請求を認容した原判決が維持された例
第18章 1 労働者が始期と終期を特定してした長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定に対する使用者の時季変更権の行使における裁量的判断
2 通信社の記者が始期と終期を特定して休日等を含め約1箇月の長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定をしたのに対し使用者が右休暇の後半部分についてした時期変更権の行使が適法とされた事例
第19章 タクシー会社の乗務員が月ごとの勤務予定表作成後に年次有給休暇を取得した場合に皆勤手当を支給しない旨の約定が公序に反する無効なものとはいえないとされた事例
第20章 年休を取得し、所属する事業場で行われた時限ストにおける職場集会に参加し、司会、演説等をした被上告人らに対する賃金カットおよび戒告処分を無効とした原審判断を正当として上告が棄却された例
第21章 通信社記者であるXの夏期約1ヶ月間の年次休暇申請に対し、会社が後半2週間分につき業務の正常な運営を妨げるとして時季変更権を行使したにもかかわらず、約1ヶ月間の休暇をとり、勤務しなかったXに対し、けん責処分および賞与を減額したことをいずれも適法として、Xの懲戒処分無効確認の訴えを棄却した(差戻)原審判決が正当とされ、上告が棄却された例
第22章 1箇月に満たない期間に集中的に高度な知識、技能を習得させることを目的として行われる訓練期間中における年次有給休暇の請求に対する時季変更権の行使
第23章 1 出勤率が90%以上の従業員を賞与支給対象者とする旨の就業規則条項の適用に関しその基礎とする出勤した日数に産前産後休業の日数等を含めない旨の定めが公序に反し無効とされた事例
2 賞与の額を欠勤日数に応じて減額することを内容とする計算式の適用に当たり産前産後休業の日数等を欠勤日数に含めた所定の減額を行わずに賞与全額の支払請求を認容した原審の判断に違法があるとされた事例
第24章 労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができなかった日と労働基準法39条1項および2項における年次有給休暇権の成立要件としての全労働日に係る出勤率の算定の方法
第2部 高裁判例
第1章 1、労基法39条1項所定の「全労働日」中に正当なストライキ期間は算入されるか(消極)
2、労働者が労基法39条1項所定の6労働日の有給休暇請求権を有する場合であっても、その出勤日数が前1か年の総暦日から所定の休日をのぞいた全日数の8割にみたないときは、右全日数の8割の6分の1を超える有給休暇請求権を行使することは権利濫用として許されない
第2章 同一使用者の他の事業場における争議行為を支援するために年次有給休暇を請求することは権利の濫用となるか(消極)
第3章 年休取得による県本庁舎での坐り込み闘争参加行為が、年休権行使に名をかりた同盟罷業とされた例
第4章 1、従業員のした使用者の業務上の秘密漏えい行為が政治活動に当たるとしても、右行為が労働協約、就業規則に定める懲戒事由に該当する以上、当該従業員は懲戒責任を免れるものではないとした事例
2、特定政党員である従業員に対してした使用者の業務上の重要秘密漏えい行為等を理由とする懲戒解雇が、思想ないし正当な組合活動の故にされたものではなく、組合の運営に対する支配介入に当たるとも認められないとして、有効とされた事例
第5章 電々公社職員(当時)の年次休暇指定に対する時季変更権の行使が適法とされた事例
第6章 郵便局集配課職員の年休権行使につき、所属課長の時季変更権行使を適法なものとした原判決が維持された例
第7章 鉄道郵便局に勤務する郵政事務官のした年次有給休暇の時季指定に対する時季変更権の行使が、週休日の振替、年次有給休暇の変更による服務差し繰りの方法を検討することなくされた点は相当であるが、非番日の者に服務差し繰りの可否についての事情を聴取することなくされた点において違法であるとされた事例
第8章 年次有給休暇手当額を健康保険法3条所定の標準報酬日額又は基本給日額とする賃金制度が、労働基準法39条の趣旨に反するとはいえず、無効ではないとされた事例
第9章 年休権を行使する者が予め代替勤務者の同意を取り付ける慣例があるのに労働者が右慣例によらず年休の時季指定をしたことが事業の正常な運営を妨げるとされた事例
第10章 1、労働基準法39条5項の意義
2、労働基準法39条5項所定の労使協定に基づく年次有給休暇の計画的付与がされた場合につき、その協定に反対する労働者も拘束されるとした事例
第11章 1 予定勤務割表上に時季指定等に関する何らの記載がないことをもって、時季指定がなされなかったとはいえないとされた例
2 代休を付与されるより年休を取得する方が、収入面で有利であったことが認められ、会社の、代休が付与されるのであればあえて年休の時季指定を維持しないというのが労働者の一般的な意思であるとの主張には理由がないとされた例
3 時季変更権の行使に対して異議を述べる者がいなかったことや、代替要員の確保がなされないままに勤務に就かなければ欠便が生じることが予測されるという運転係の職務の性質を考慮すると、異議を留めず就労したことを直ちに時季変更権の行使の容認、もしくは時季指定そのものの撤回と解することはできないとされた例
4 会社全体での業務量の予測があり、営業所での業務量調整も可能であったと認められる以上、系列会社から人員を採用するとの労使の合意があったにせよ、そのことが使用者として年休の時季指定がなされた場合に尽くすべき通常の配慮を尽くさなかったことや、要員不足が9か月にわたり常態化したことを正当化するものではないとされた例
5 年休指定に対する時季変更権の不当な行使により年休権が失効させられたことは、労働契約上の債務不履行に当たるとして、慰謝料25万円の支払を命じた原判決が維持された例
第12章 特定業務(タクシーの深夜乗務)の拒否を目的とする年次休暇権の行使が権利の濫用にあたるとされた事例
第13章 時季変更権を行使するとともに就業すべき業務命令を発したにもかかわらず勤務しなかったことは、職務上、上長の命令に違反した行為であって、懲戒解雇事由に該当するとされた例
第14章 労働基準監督署に割増賃金の未払いについて指導・勧告等を求めたことは、催告および民法149条の裁判上の請求のいずれにも当たらないとして、それによって債権の消滅時効は中断しないとされた例
第15章 年次有給休暇の請求要件である労基法39条1項所定の「1年間継続勤務」については、形式的判断ではなく、勤務の実態、当該雇用契約の期間、各雇用契約ごとに契約終了させて新たに雇用契約を締結する形態をとる理由、雇用契約と次に締結される雇用契約との間隔、雇用契約締結の際の採用手続きおよび有給休暇が付与されている他の労働者との均衡等を総合して、雇用契約が継続しているかを実質的に判断すべきであるとされた例
第16章 1 年次有給休暇の時季の事後指定の有効性
2 年次有給休暇の時季指定をした労働者が所属する事業場において、当該時季指定当時には争議行為が実施される蓋然性があったが、結果的には争議行為が行われなかった場合に、年次有給休暇が成立しないとされた事例
第17章 1 年休の時季変更権を行使するに当たり、使用者は他日を指定する義務を負わないとされた例
2 時季変更権の行使に当たり使用者には代替勤務者を確保して勤務割を変更すべく通常の配慮をすることが求められているにすぎないとして、相当数の休日予定者の中から協力してもらえる可能性の高そうな者についてだけ実際に休日出勤の打診をしたことについて、通常なすべき配慮に欠けるということはできないとされた例
第18章 合理的期間を徒過した年休の時季変更権の行使は無効であり,欠勤を理由とする給与減額,訓告および教務主任の命課換えが違法であるとして慰謝料請求が認められた事例
第19章 1 労働者が,有給休暇権を具体的に行使するに当たっては,その有する休暇日数の範囲内で,具体的な休暇の始期と終期を特定して時季指定をしたときは,客観的に労基法39条5項ただし書所定の事由が存在し,かつ,これを理由として使用者が時季変更権の行使をしない限り,上記指定によって年次有給休暇が成立し,当該労働日における就労義務は消滅すると解するのが相当であるとされた例
2 被控訴人(1審被告)Y1社で教材作成や授業を担当している控訴人(1審原告)X2が有給休暇を取得しようしたところ,有給休暇の取得は望ましくないとする意思を表明してX2に有休申請を取り下げさせた直属の上司である被控訴人(1審被告)Y2の発言につき,違法性を有するものであるとされた例
第20章 語学学校講師であった控訴人(1審原告)Xの雇止めについて,年次有給休暇と認められない欠勤があったこと等を理由に適法とした1審判決を破棄し,本件雇止めには客観的かつ合理的理由がなく社会通念上も相当とはいえないとして,Xの地位確認請求等が認容された例
第3部 地裁判例
第1章 年次有給休暇請求権の性質
第2章 労基法上の年次有給休暇請求権の翌年度繰越は許さないとした事例
第3章 常勤の正規職員を定年退職した後、月18日間(週4日相当)のみ勤務する非常勤の嘱託となった場合につき、「継続勤務」にはあたらないとされ、右嘱託職員の年休日数の算定にあたり「継続勤務」として取り扱わなかった使用者の処置が適法なものとされた例
第4章 事業が小規模で、従業員も小人数であることから代替勤務者が恒常的に不足する場合であっても、なお使用者において、従業員がその指定する時季に年休をとれるように配慮しておくべき義務があり、このような配慮をしないでした時季変更権の行使は違法となるとされた例
第5章 郵便局員の1時間の年次有給休暇の時季指定に対する時季変更権の行使が無効とされた事例
第6章 有期雇用と年次有給休暇
第7章 1 長期休暇取得の許可を得て、旅行等を計画中、その後の病気休暇を理由に右長期休暇の承認を取り消された原告からの旅行中止に伴う損害賠償請求が認められた例
2 「計画年休」に関する労使協定は休暇の時季および具体的日数を明確に規定することを要するから、原告の長期休暇が「計画年休」によるものではないとされた例
3 客室乗務員の長期の年次有給休暇については、人員確保計画上、使用者に一定の裁量的判断が許されるが、それは労基法39条の趣旨に沿う合理的なものでなければならないとされた例
4 原告の相当の期間にわたる病気休暇申請は、長期休暇取得制限事由に該当するが、使用者においていったん承認した年次有給休暇の時季を変更するには、事業の正常な運営を妨げる具体的事由が必要であるとして、その取消しが裁量の範囲を超えるとされた例
第8章 旧A村の編入に際しての原告Xの任用も,合併における債権債務を含む包括的な事務の承継の一環としてされた手続きにすぎず,Xの勤務実態が継続勤務であることを変更するようなものではないなどとして,Xの勤務実態が,旧A村における最初の任用時以降,「継続勤務」に該当するとされた例