社会保険審査会法に関する裁判例を網羅しています。
社会保険審査会法の正式名称は、
社会保険審査官及び社会保険審査会法
昭和28年法律第206号
社会保険における不服申立てについて定めています。
社会保険関係に係る不服申立てに対する審査を扱わせる機関として、厚生労働省の職員である社会保険審査官と、厚生労働省内に設置される社会保険審査会の2段階となっています。所管する各法令により、一部の不服申立てについては本法に基づく審査請求を経た後でなければ処分の取消しの訴えは提起できません
通称・略称は、社審法など。
同法は、行政法、社会保障法の1つです。
関連法令として、国民年金法、厚生年金保険法、健康保険法などがあります。
目次
第1部 行政訴訟事件・最高裁判例
第1章 国民健康保険の保険者の処分を取り消した国民健康保険審査会の裁決の取消訴訟と保険者の原告適格
第2部 行政訴訟事件・高裁判例
第1章 1、社会保険庁長官が、船員保険法に基づいてなした遺族年金の額に関する決定の違法事由として、知事のなした標準報酬の決定を主張することの可否
2、知事が、船員保険法4条に基づいてなして標準報酬の決定に対する不服申立権者及びその不服申立期間
3、社会保険庁のなした遺族年金の給付に関する処分の取消訴訟において、知事のなした標準報酬の決定の違法を主張することが信義則に反しないとされた事例
第2章 控訴人の年金支給額算定の基礎とした標準報酬月額を低額に認定し,控訴人の被保険者期間を実際より短く認定した誤りがあると主張して,被控訴人に対し,本件支給裁定の取消しを求めた事案
第3章 厚生年金保険法に基づいて設立された厚生年金基金が,その設立事業所の事業主に対して,規約に基づく特別掛金の納入告知をしたところ,その取消を求めて審査請求をした事案
第3部 行政訴訟事件・地裁判例
第1章 社会保険庁長官がした遺族一時金不支給処分についての再審査請求に対する裁決を経ないことにつき、代理人となった者が病気になったことは行政事件訴訟法8条2項3号にいう「正当な理由」に当たらないとされた事例
第2章 障害基礎年金・厚生年金を支給しない旨の社会保険庁長官の処分が適法なものとされた例
第3章 原告は,被保険者の死亡当時に同人と法律上婚姻関係にあり,被告から,国民年金法による遺族基礎年金及び厚生年金保険法による遺族厚生年金の支給裁定を受け,各年金を受給していた者であるが,被告から,支給裁定を取り消す旨の処分を受け,処分は違法であるとして,その取消しを求めた。
第4章 特別支給老齢厚生年金支給裁定は,原告の年金支給額算定の基礎とした標準報酬月額を低額に認定した誤りがあり,又原告の被保険者期間を実際より短く認定した誤りがあって,違法であると主張して,その取消しを求めた事案
第5章 社会保険審査会が,法律上の婚姻関係にある被告補助参加人に対してした遺族厚生年金支給裁定の取消を求めた事案
第6章 原告が,被告において支給したと主張する厚生年金の脱退手当金を受領していないため,当該金員に対応する部分を現在受給している老齢基礎年金及び老齢厚生年金の年金額算定基礎に含めるべきであるところ,原告の請求にかかわらず,支給を示す証拠を一切明示せずに行った裁決は違法であるとして,その取消しを求めたが,棄却された例
第7章 審査請求前置の要件を欠く不適法なものとして,障害年金支給停止処分取消請求の訴えを却下した事例
第8章 厚生年金基金である原告が,その設立事業所の事業主である被告らに対し行った特別掛金納付告知につき,被告らが,その取消しを求めた審査請求に対し,裁決行政庁の審査請求却下の裁決の取消しを求めた事案について,原告は,本件各裁決の取消しを求めるにつき,法律上の利益を有しているとは認められないとして訴を却下した事例
第9章 原告会社の代表取締役であるA及び取締役であるBが,社会保険事務所長から,職権により,遡及して,健康保険及び厚生年金保険の被保険者資格を喪失したことを確認する旨の処分を受けたことに対し,原告会社が,その処分の取消を求めた事案について,本件訴えは,本件処分に対する再審査請求の社会保険審査会裁決を経たものとは認められないから,不適法な訴えであるとして,訴えを却下した事例
第10章 社会保険庁長官が,亡Aといわゆる重婚的内縁関係にあった被告補助参加人に対して,Aに係る遺族厚生年金を支給する旨の処分をしたことから,Aと法律上の婚姻関係にあった原告が,同処分の取消しを求める事案
第11章 社会保険審査会に対して再審査請求をすることができる期間の起算日を定める社会保険審査官及び社会保険審査会法32条1項にいう「審査官の決定書の謄本が送付された日」について判断された事例
第12章 亡Aの妻である原告が,Aは障害基礎年金及び障害厚生年金(以下,併せて障害給付)の受給権者であったが,裁定請求をなさずに死亡したとして,社会保険庁長官に対し,国民年金法及び厚生年金保険法に基づいて未支給の障害給付の裁定請求をしたところ,これを却下する旨の処分(以下,本件処分)をしたことから,本件処分の取消しを求めた事案
第13章 1 厚生年金保険法(昭和60年法律第34号による改正前のもの)42条に基づく老齢年金の不支給決定を受けた被保険者が同決定に対する審査請求の係属中に死亡した場合において,被保険者の子は,前記決定の取消訴訟の原告適格を有するとされた事例
2 厚生労働大臣から裁定を受けた厚生年金保険法(昭和60年法律第34号による改正前のもの)42条に基づく老齢年金の一部について消滅時効が完成しており,同部分は時効特例法1条に基づく給付の対象にならない旨の決定が適法とされた事例
第14章 原告が,処分行政庁(厚労省)に対し,障害の状態にあるとして,国民年金法に基づく障害認定日における障害基礎年金の裁定を請求したところ,同庁から受給発生日を平成13年某日との障害基礎年金の裁定を受けたが,平成20年5月以前の年金は時効消滅により支給しない(以下,本件不支給処分)とされ,審査請求を却下決定・再審査請求を却下裁決(以下,本件裁決)されたことから,本件処分・本件裁決の取消しを求めた事案。裁判所は,本件処分は行政庁の処分に該当せず,存在しない処分(本件処分)の不服申立ては不適法であるとして,本件処分取消の訴えは不適法により却下し,その余の請求を棄却した事例
第15章 A社との間で雇用契約締結し,A社に英語指導助手業務を委託した市の設置する市立小学校で英語指導助手業務に従事した原告が,被告(日本年金機構)に対し,厚生年金保険及び健康保険の被保険者であることの確認請求の却下処分の取消しと被保険者であったことの確認の義務付け及び,国に対し,再審査請求の棄却裁決の取消しを求めた事案
第16章 老齢基礎年金等の受給者である原告の年金加入期間確認通知に係る再審査請求却下裁決の取消訴訟
第17章 原告は,国民年金法(以下「国年法」という。)の規定による障害基礎年金の裁定の請求をしたのに対し,厚生労働大臣からこれを支給しない旨の決定(以下「本件処分」という。)を受けたことから,本件処分の取消しを求めて,関東信越厚生局社会保険審査官に対して審査請求(以下「本件審査請求」という。)をしたところ,同局社会保険審査官から,本件審査請求を棄却する旨の決定(以下「前回棄却決定」という。)を受けた。そこで,原告は,前回棄却決定の取消しを求める訴えを提起したところ,東京地方裁判所は,前回棄却決定における審査官が原告に対して口頭で意見を述べる機会を与えることなく決定をしたとして,前回棄却決定を取り消す旨の判決をした。同判決の確定後,本件審査請求について担当することとなった関東信越厚生局社会保険審査官(以下「本件審査官」という。)は,本件審査請求を棄却する旨の決定(以下「本件棄却決定」という。)をした。
本件は,原告が,本件棄却決定について,①口頭で意見を述べる機会を与えられなかったこと,②本件審査官が原告の提出した証拠を採用しなかったこと,③本件審査請求について除斥ないし忌避事由のある本件審査官が本件棄却決定をしたことが違法であるとして,本件棄却決定の取消しを求める事案である。
第18章 厚生年金保険の保険給付及び保険料の納付の特例等に関する法律(平成26年改正前)1条1項に基づく厚生年金保険の被保険者に係る標準報酬月額の決定と当該被保険者を使用していた事業主の不服申立適格
第19章 特例解散制度により解散する旨の方針の意思決定をしていた厚生年金基金における選択一時金の支給を停止する旨の規約変更につき、その効力を同基金の設立事業所の従業員又は元従業員に対して主張することが信義則違反になるということはできないとした事例
第20章 厚生年金保険法及び健康保険法適用事業所の事業主である原告が,両保険料につき延滞金督促を受け,これを不服とする審査請求を棄却する本件裁決を受けたことから,本件保険料滞納には止むを得ない事情があるとして,①本件督促処分の取消しを,②本件裁決の取消しを,③原告に本件延滞金の納付義務が存在しないことの確認を各求めたところ,移送前裁判所は①請求を却下した。本件は移送された②③請求に係る事案。
第21章 老齢基礎年金の支給繰上げの請求をした原告(60歳)が,受給権を取得した年月を平成27年1月,支給開始年月を同年2月とする裁定を受けたため,①本件処分の取消しを求め,②受給権を取得した年月を平成26年12月,支給開始年月を平成27年1月とする老齢基礎年金の支給繰上げの裁定の義務付けを求め,③被告国に対し,同月分の老齢基礎年金の支給を求めた事案
第22章 1 口頭による審査請求がされたとは認められなかった事例
2 審査請求期間内に審査請求をすることができなかったことに「正当な事由」があると認められなかった事例
第23章 本件は,原告が,①平成30年3月10日,厚生労働大臣に対し,傷病の初診日を平成29年2月17日として,国民年金法(以下「国年法」という。)及び厚生年金保険法(以下「厚年法」という。)に基づく障害認定日による障害給付(障害基礎年金・障害厚生年金・障害手当金)の裁定の請求をしたところ,厚生労働大臣から,障害認定日(傷病が治った日)が到来していないとして,平成30年7月23日付けで当該請求に係る障害給付を支給しない旨の処分(以下「本件不支給処分」という。)を受け,関東信越厚生局社会保険審査官に対して審査請求をしたが,これについても棄却する旨の決定(以下「本件裁決」という。)を受けたことから,本件不支給処分及び本件裁決の各取消しとともに,厚生労働大臣に対し,原告の障害の状態が国民年金法施行令(以下「国年令」という。)別表に定める障害等級2級に該当するものとして,上記裁定の請求に係る障害給付を支給する旨の処分(以下「主位的2級処分」という。)をすることの義務付けを求める訴えを提起し,②平成30年10月12日,再度,同じ傷病について,障害認定日による障害給付の裁定の請求をしたところ,厚生労働大臣から,平成31年3月20日付けで,受給権を取得した年月を平成30年8月,障害の状態を厚生年金保険法施行令(以下「厚年令」という。)別表第1に定める障害等級3級として,障害厚生年金を支給する旨の処分(以下「本件3級処分」という。)を受けたことから,予備的に,本件3級処分の取消しとともに,厚生労働大臣に対し,原告の障害の状態が障害等級2級に該当するものとして,上記裁定の請求に係る障害給付を支給する旨の処分(以下「予備的2級処分」という。)をすることの義務付けを求める請求を追加した事案である。
第24章 平成12年度からの特例措置に基づき本来よりも高い水準に据え置かれた国民年金及び厚生年金の年金額の給付水準を一部引き下げる内容の厚生労働大臣による平成25年度の年金額の改定は適法であるとした事例
第4部 民事訴訟事件
第1章 被控訴人企業年金基金の前身である厚生年金基金の規約変更の内容・程度,受給者に代替的な選択肢が用意・周知されていたこと,母体企業の経営状況や基金存続のための変更の必要性,説明会等の実施や受給者の同意状況等から,本件規約変更に合理性があるとして,控訴人らによる減額分(差額)の支払請求が退けられた例
第2章 障害基礎年金を支給しない旨の決定に対する審査請求につき,口頭による意見陳述の機会を与えることなく審査請求を棄却した決定が違法な公権力の行使に当たるとして,国家賠償を求めた事案。裁判所は,審査請求代理人は原告が障害等級2級に該当する旨を資料とともに詳細に主張する理由書を提出し,本件決定が行われるまでの間,その他の追加主張を行う旨の申入れをしなかった等の事情から,審査官が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本決定をしたとまでは認め難く,口頭意見陳述の機会を付与することなくされたことについて,国賠法上の違法性を有するとまでは認められないとして,請求を棄却した事例
第3章 原告が,国年法の障害基礎年金及び厚年法の障害給付の裁定請求での不支給処分に対する審査請求の棄却決定につき,審査官が職務上の義務を果たさず違法として,国家賠償を求めた事案
第4章 社会保険労務士の原告が,申請者の申請代理人として行った障害厚生年金の額の改定請求に対する厚労大臣の額改定をしない処分の審査請求につき,社会保険審査官がした棄却決定は裁量権を濫用,逸脱しており,その違法な行為により報酬請求権を失わせる損害を受けたとして,被告に対し,国賠法1条1項に基づき損害賠償を求めた事案
第5章 精神疾患で休業し,休職期間満了を理由にした退職扱いの無効確認等請求の前訴で勝訴した原告が,被告会社に対し,賃金相当額の支払を求めるとともに,被告国に対し,前訴裁判官の行為及び国会の立法不作為につき国賠請求をした事案
第5部 民事保全事件
第1章 労働者が厚生年金保険料等を使用者に償還しないことを理由とする解雇の効力及び地位保全仮処分の必要性