海上運送法に関する裁判例を網羅しています。
海上運送法
(昭和24年6月1日法律第187号)
同法は、海上運送事業の運営を適正かつ合理的なものとすることにより、海上運送の利用者の利益を保護するとともに、海上運送事業の健全な発達を図り、もって公共の福祉を増進することを目的としています。
主に旅客自動車運送であるフェリーなどの事業、また海運仲立業及び海運代理店業についての法律です。
同法は、行政法、運輸法、海事法の1つです。
目次
第1部 民事訴訟事件
第1章 海上運送法(昭和24年法律第187号)附則第6項の「この法律施行の際限に定期航路事業を営んでいる者」の意義
第2章 フェリーに乗船するため瑕疵あるふ頭上を後退運転中に海に転落した自動車事故につき、県はふ頭の設置者、町は管理事務の受託者、会社はフェリーを運航する運送業者として損害賠償責任があるとされた事例
第3章 日本国有鉄道の職員のいわゆる遵法闘争により急行列車が延着した場合と日本国有鉄道旅客営業規則289条2項の適用
第4章 一部保険における保険者の請求権代位の範囲
第5章 市政広報誌の地元観光船業者の経営姿勢等に対する批判記事について名誉毀損の成立を認め、66万円の損害賠償の支払いを命じた事例
第6章 1 船荷証券裏面の約款の解釈から、運送人の負う損害賠償額は、CIF価額を基に算定される額に限定されるとした事例
2 遅延損害金の請求は、主たる債権の準拠法によるものであるが、右準拠法には遅延損害金の規定がないとして、右請求を棄却した事例
第7章 破産者株式会社A(以下「破産者」という。)は,海運代理店業,海上保険代理店業,海運仲立業等を主たる営業目的とする株式会社であるが,平成13年2月7日午後3時,東京地方裁判所において破産宣告を受け,同時に原告が破産管財人に選任された(東京地裁平成13年(フ)第586号破産申立事件)。
被告は,倉庫業,港湾運送業等を主たる営業目的とする株式会社である。
第8章 1 海上運送契約上の荷送人の特定について判断した事例
2 国際海上物品運送法20条1項・商法758条による運送人の競売権不行使による荷送人に対する権利の喪失が認められなかった事例
第9章 海上運送された貨物の損傷について,コンテナ内で採られた貨物の移動防止策が不十分であったため,貨物が輸送船舶のローリングによってコンテナ方向へ移動を繰り返し,コンテナ壁に衝突したことにより生じたものと認めるのが相当であるとして,貨物事故は,荷送人の積付不良が原因となって発生したもので,被告の,海上物品運送契約上の債務不履行が原因となって発生したものではないとした事例
第10章 1 離島航路における一般旅客定期航路事業許可処分の審査基準を満たさないことを理由とするサービス改善命令に「速やかに」応じなかったとしてされた事業停止命令につき裁量権の逸脱又は濫用が認められないなどとして違法性が否定された事例
2 海上運送法19条1項所定のサービス改善命令の要件と同法4条6号の許可要件等の審査基準であるサービス基準との関係
第11章 被告が運航する大阪港発上海港行きの船舶に乗船した亡訴外人が行方不明になったことから,両親である原告らが,旅客を安全に運送すべき契約上の義務を怠ったとして,被告に対し,債務不履行に基づき逸失利益等の賠償を求めた事案。裁判所は,亡訴外人が本船に乗船中に死亡したかどうかは明らかではないが,乗船中に行方不明になったことは当事者間に争いはないところ,監視カメラには亡訴外人がナップザックを背負ったまま船室を出るところまでの映像があり,全船安全巡視検査の結果は異常がなく,何らかの理由で本船から転落した可能性が高いとし,他方本船周辺の天候は終始良好で,悪天候等を理由に被告が特段の措置を講ずべき状況にあったともいえず,被告は,旅客の安全を図るべき一般的な注意義務も尽くしていたと認められるとし,被告の債務不履行責任を否定して,請求を棄却した事例
第2部 民事保全事件
第1章 1、伊豆箱根鉄道株式会社と箱根登山鉄道株式会社との間に箱根地区を中心とする一般乗合旅客自動車運輸協定が締結された場合においてその一方が右協定に違反したことを理由としてこれを解約したことが権利の濫用に当たるかどうかの判定
2、道路運送法第20条の「運輸に関する協定」に基く自動車運輸業を休廃止する場合と行政庁の認可の要否
第2章 1 左舷側外板亀裂による浸水沈没事故が生じた船舶について発航の当時公的検査に合格し船体外板が船級協会の規則を満たす板厚を有していたとしても国際海上物品運送法5条1項1号の堪航能力保持につき注意義務が尽くされたとは認められないとされた事例
2 運送契約により運送品である丸太を陸揚港の岸壁に陸揚げして引き渡すことが約定されている場合における船舶の沈没事故により海没した丸太の引揚げ費用と商法580条2項の適用
第3部 行政訴訟事件
第1章 海運局長と旅客定期航路事業者との間の契約に基く右業者の申請に対して右局長がした船舶の建造を承認する旨の通知は、抗告訴訟の対象となる処分か。
第2章 公有水面埋立てによる航路廃止に伴い旅客定期航路事業者に交付された航路営業補償金が事業所得に当たるとされた事例
第3章 子会社である日本法人の海運代理業者が支出した交際費を親会社であるオランダ法人の船会社が負担した場合において、右交際費を税法上、子会社の支出に帰すべきであるとした事例
第4章 サービスの改善に関する命令に違反したことを理由とする一般旅客定期航路事業の一部停止命令について,サービスの改善がされる蓋然性がある日の前日まで同命令の効力の停止が認められた事例
第5章 1 一般乗用旅客自動車運送事業に従事する運転者が,その労働条件の適正を保護される利益を有する者として,一般乗用旅客自動車運送事業者を処分の相手方とする運賃認可処分の取消訴訟を提起する原告適格を有するか(消極)
2 国土交通大臣の権限の委任を受けた地方運輸局長は,道路運送法の規定に基づいて運賃認可処分をするに当たり,一般乗用旅客自動車運送事業に従事する個々の運転者に対する関係で,その適正な労働条件の保護について配慮すべき職務上の法的義務を負うか(消極)
第4部 刑事事件
第1章 1、刑法1条2項にいう「日本船舶」にあたるとされた事例
2、公海上における船舶覆没行為につき刑法1条2項により同法126条2項の規定の適用があるとされた事例