海上衝突予防法に関する裁判例のうち、同法を根拠条文とするものを網羅しています。
海上衝突予防法
(昭和52年6月1日法律第62号)
同法は、1972年の「海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約」(COLREGS)に添付されている1972年の「海上における衝突の予防のための国際規則」の規定に準拠しています。
同法は、船舶の遵守すべき航法、表示すべき灯火・形象物ならびに行うべき信号に関し必要な事項を定めることにより、海上における船舶の衝突を予防し、もって船舶交通の安全を図ることを目的としています。
海洋衝突予防法(昭和28年法律第151号)を全部改正して制定されました。
同法は、行政法、海事法、運輸法の1つです。
関連法令として、船員法、港則法、海上交通安全法、海難審判法などがあります。
目次
第1部 民事訴訟事件・最高裁判例
第1章 1、互に航路を横切る両船が海上衝突予防法第19条にいう「衝突の虞」がないものとされる事例
2、互に航路を横切る両船が、そのまま進めば無難に替り行くことを相互に看取し得る状況にあったにかかわらず、1船がその後速力を減じたため、新たに衝突の危険を惹起こするに至った場合において、両船のいずれに避譲義務があるか
第2章 1、裁判官の常識により認識し得べき推定法則と鑑定の要否
2、海上衝突予防法(旧)第19条にいう「衝突ノ虞アルトキ」の意義
第3章 1 私人間の操業規約が強行規定に反してはならず,捕鯨会社間の捕鯨操業規約によって旧海上衝突予防法による艦長,海員の義務が免除されることはないとした事例
2 捕鯨船同士の衝突事故について,一方の船舶の船橋頂部で見張に当たっていた被上告人の過失について,その証明がないとして同人の過失を否定した原判決の認定は首肯できず,原判決は破棄を免れないとした事例
第2部 民事訴訟事件・下級審判例
第1章 狭い水道を夜間航行する動力船の船長の注意義務
第2章 海上衝突予防法第25条の適用ある狭い水道における同法第19条の適用の有無
第3章 1、狭い運河を回頭出航中の航海船に、平水船が前方注視、減速、衝突後の機関停止の注意義務を怠ったため衝突し損害賠償を命ぜられた事例
2、航海船と平水船との衝突にも商法690条の適用ありとした事例
第4章 1 海難事故につき、衝突の事実及び2等航海士の航行上の過失を認めたうえ、商法690条に基づき、加害船の船主に対して損害賠償を命じた事例
2 海難事故の損害賠償請求事件につき、業務上過失往来妨害、業務上過失致死被告事件の刑事判決とは異なる認定をした事例
第5章 漁船と帆走中のヨットとの衝突事故によりヨット等に乗船していた高校生が死傷した事故について、学校側にも指導監督上の過失があったとし、被害者に損害賠償した漁船の操船者の学校側に対する求償金請求が認容された事例
第6章 瀬戸内海播磨灘沖における貨物船同士の衝突事故において、第3船との衝突を避けようとして急激に左転舵をとった貨物船(C号)に過失があり、追い越しを継続した貨物船(A号)には過失がないとされた事例
第7章 漁港内の航路筋に無灯火で錨泊中の台船に,未明に航行中の漁船が衝突した事故につき,台船側に7割の過失があったとして,その損害賠償責任が認められた事例
第8章 1 船舶が輻輳し同一地点に集まっていた場合における船舶間の衝突事故に関し,船員の常務の適用を否定し,横切り船航法が適用されるとした事例
2 船舶の衝突事故に関し横切り船航法が適用される場合において,避航船及び保持船の双方に過失を認め,過失割合を7対3とした事例
第9章 横切り船の航法(海上衝突予防法15条)と「新たな衝突の危険」ないし「新たな衝突のおそれ」との関係
第10章 漁港内において、未明に無灯火で操船中の漁船に対して、航行中の漁船が後方から衝突した事故につき、双方に過失を認め、過失割合を7対3とした事例
第11章 1 海上で衝突した両船舶にそれぞれ海上衝突予防法所定の義務違反による「過失」(商法690条)があったことを認定した上でその過失割合を示した事例
2 船舶の衝突事故の被害者が滅失当時における船価相当額につき賠償を得た場合において,滅失した船舶の不稼働損害の賠償請求を否定した事例
第3部 行政訴訟事件・最高裁判例
第1章 1、海上衝突予防法第25条第1項による航路筋の右側航行が免除される場合
2、海上衝突予防法第25条の適用ある狭い水道における同法第19条第21条の適用の有無
第2章 明石海峡航路北側の航路外で西に向かう甲船と東に向かう乙船が衝突した事故について,海技士である甲船の船長を戒告とした高等海難審判庁の裁決が適法であるとされた事例
第4部 行政訴訟事件・下級審判例
第1章 (1)海港港則施行規則第14条にいう雑種船の意義。
(2)海港港則施行規則第10条と海上衝突予防法第21条との関係。
(3)甲船船長が乙船の紅灯を認め、その速力により発動機船であることを知つたが、乙船が成規の白灯をかかげなかったため、函館港においては雑種船とみなされているいか釣船と思い誤り、ほぼ防波堤の入口で出会することを知りながら、海港港則施行規則第10条に従い乙船の進路を避けることをしないで、機関用意をさえ命ぜず全速力のまま進行したため衝突をじやつ起した場合における甲船々長の過失の認定。
(4)乙船船長が成規の白灯をかかげなかったため甲船の運行を誤らせ、かつ、港内からの出航船としてとるべき態度の自覚なく、雑種船としての行動をとろうとして、甲船面前でみだりに転針したため衝突をじやつ起した場合における乙船船長の過失の認定。
第2章 1、内海水路誌記載の注意事項を無視した航法を船長の過失とし、海難事故発生の一因と認めた事例
2、甲船が乙船との衝突直前に右転したことが、甲船の自ら招いた危険を避けるための措置にすぎず、切迫した危険を避けるため止むをえざるに出た臨機の措置といえないとされた事例
第3章 2隻の捕鯨船が同一鯨を追跡する場合と衝突防止のため準拠すべき基準
第4章 船舶の衝突の原因につき船長が海上衝突予防法29条に違反したためであると認められた事例
第5章 港外ではあるが港界付近における船舶の衝突事故につき港則法18条の適用はなく海上衝突予防法13条を適用すべきであるとされた事例
第6章 1 「追い越される船」に対する海上衝突予防法の規定の適用関係
2 海難審判庁が漁船と貨物船の衝突事故について、追い越される船である漁船の船長に対してした戒告の裁決の取消しを求める訴えが、右船長に海上衝突予防法上の義務を怠った過失があるとして棄却された事例
第7章 1 A船とB船の衝突事故について、A船がB船と見合関係を生じるとほぼ同時にC船とも見合関係を生じた場合であっても、原則として2船間の関係に還元して考察すべきであるとして、横切り船航法の適用が認められた事例
2 潜水艦なだしおと遊漁船第1富士丸の衝突事故の発生については、なだしお艦長の不当運航により大きな原因があるが、第1富士丸船長にも過失があるとして、同船長に対する業務停止1箇月の処分が適法とされた事例
第8章 貨物船と引船の被引台船との衝突事件について引船船長に対する海難審判の戒告裁決が取り消された事例
第9章 1 貨物船と漁船との衝突事故について,両船の位置関係から海上衝突予防法15条1項の横切り船航法の適用が認められた事例
2 貨物船と漁船とが衝突し漁船船長が溺死した事故について,貨物船航海士の見張り義務違反の過失と漁船船長の避航措置を講じなかった過失の大きさとを比較のうえ,広島地方海難審判所のした海技士である同航海士に対する業務停止1箇月の裁決が重すぎ相当性を欠くとして取り消された事例
第10章 貨物船が係留中の潜水士船に衝突した海難における貨物船船長の過失の存否と海難審判裁決の適否
第11章 貨物船が瀬戸内海音戸ノ瀬戸を航行中台船の引船を避けようとして護岸に衝突した海難における引船の船長の過失の存否と海難審判裁決の適否
第5部 刑事事件・下級審判例
第1章 旧海上衝突予防法第27条にいわゆる臨機の処置をなすべき時機
第2章 海上における漁業に関する現行犯の検挙と海上衝突予防法規遵守の要否
第3章 1、レーダー装備船と海上衝突予防法第16条第2項
2、国鉄宇高連絡船と航海副直の船長補佐業務
第4章 衝突のおそれのある横切り関係で来航してくる船舶を発見した場合に海上衝突予防法第21条による保持船(権利船)の船長が尽すべき業務上の注意義務
第5章 大阪港内遊覧船やそしま丸沈没事件第1審判決
第6章 狭い水道において旅客フェリーと大型貨物船とが衝突し、同フェリーの乗客が死傷した事故について、信頼の原則が適用される旨の主張が排斥され、同フェリーの船長の過失が認められた事例
第7章 1 横切り船関係にある避航船と保持船にいずれも業務上過失艦船覆没罪及び業務上過失致死傷罪が成立するとされた事例
2 保持船が疑問信号を吹鳴させなかったことも衝突事故と相当因果関係のある過失に含まれるとされた事例
第8章 行会い船を認めて針路を右に転じたが、その後上記行会い船の動向を確認しなかったことにつき過失が認められた事例
第9章 海上自衛隊護衛艦「あたご」事件