パート・有期雇用労働法に関する裁判例を網羅しています。
パート・有期雇用労働法の正式名称は、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」です。
法律の旧題名は、
短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
通称は、パートタイム労働法やパート労働法など。
令和2年(2,020年)4月の改正法施行により、同法の対象となる労働者の範囲を有期雇用労働者にも拡大したことから、法律の題名を「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」から現題名へと変更しました。
目次
第1部 民事訴訟事件・最高裁判例
第1章 1 有期契約労働者が定年退職後に再雇用された者であることと労働契約法20条にいう「その他の事情」
2 有期契約労働者と無期契約労働者との個々の賃金項目に係る労働条件の相違が労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるか否かについての判断の方法
3 無期契約労働者に対して能率給及び職務給を支給する一方で定年退職後に再雇用された有期契約労働者に対して能率給及び職務給を支給せずに歩合給を支給するという労働条件の相違が,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たらないとされた事例
第2章 1 有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が労働契約法20条に違反する場合における当該有期契約労働者の労働条件の帰すう
2 労働契約法20条にいう「期間の定めがあることにより」の意義
3 労働契約法20条にいう「不合理と認められるもの」の意義
4 無期契約労働者に対して皆勤手当を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例
第3章 1 郵便関連業務に従事する期間雇用社員について満65歳に達した日以後は有期労働契約を更新しない旨の就業規則の定めが労働契約法7条にいう合理的な労働条件を定めるものであるとされた事例
2 郵政民営化法に基づき設立されて日本郵政公社の業務等を承継した株式会社がその設立時に定めた就業規則により同公社当時の労働条件を変更したものとはいえないとされた事例
3 期間雇用社員に係る有期労働契約が雇止めの時点において実質的に期間の定めのない労働契約と同視し得る状態にあったということはできないとされた事例
第4章 無期契約労働者に対して賞与を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たらないとされた事例
第5章 無期契約労働者に対して退職金を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たらないとされた事例
第6章 無期契約労働者に対しては夏期休暇及び冬期休暇を与える一方で有期契約労働者に対してはこれを与えないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年改正前)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例
第7章 私傷病による病気休暇として無期契約労働者に対して有給休暇を与えるものとする一方で有期契約労働者に対して無給の休暇のみを与えるものとするという労働条件の相違が労働契約法(平成30年改正前)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例
第8章 3 無期契約労働者に対して年末年始勤務手当を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年改正前)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例
4 無期契約労働者に対して祝日を除く1月1日から同月3日までの期間の勤務に対する祝日給を支給する一方で有期契約労働者に対してこれに対応する祝日割増賃金を支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年改正前)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例
5 無期契約労働者に対して扶養手当を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年改正前)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例
第2部 民事訴訟事件・下級審裁判例
第1章 被告Y学院の短大総務課において,派遣労働者として3年間勤務した後に,有期嘱託職員として雇用され,従前と同様の業務に従事して当該雇用契約を2回更新した原告Xに対する雇止めにつき,本件嘱託雇用契約が実質的に期間の定めのない雇用契約と異ならない状態となっていたとはいえないが,原告が担当していた業務の恒常性および本件雇用契約更新時のX・Y学院間の合意内容,更新時のB事務局長等の説明等からすれば,Xには,本件雇用契約が締結された時点において,本件契約がなお数回にわたって継続されることに対する合理的な期待利益があるとされた例
第2章 都立高校の非常勤講師として平成19年度は合計週18時間の授業を担当していた原告が,同20年度の「はがし行為」により,前年度比3分の2の時間数を解雇されたとし,労基法等に違反する解雇権濫用の解雇で無効と主張し,差額報酬の支払と前年度までの職場への復帰を求めた事案
第3章 控訴人Xが,Xの労働はYの一般職員の労働と同一であるのに,YがXに一般職員の賃金よりも低い嘱託職員の賃金しか支給しなかったこと(本件賃金処遇)が,憲法13条・14条,労基法3条・4条,同一(価値)労働同一賃金の原則,民法90条に違反するとして,不法行為に基づき差額賃金相当額および慰謝料の請求を行った件につき,同請求を棄却した一審判断が維持された例
第4章 被告(国立大学法人)との間で任期1年の労働契約を締結して,附属病院に医員(非正規職員)として勤務する原告が,正規職員である助教昇任の人事案件が却下され,翌年度に医員の定年に達することから,平成20年7月から助教の地位にあることの確認とそれに相応する賃金請求等をした事案
第5章 委任契約あるいは準委任契約の解除においてなすべき損害賠償の範囲(民法651条2項)及びその支払に至る経緯について詳細に検討した上で,取締役会決議に基づき会社が同契約の相手方に支払った補償金は上記損害賠償の範囲を大幅に上回っており,上記取締役らにおいて,上記範囲について必要な検討を怠ったとして,株主らの請求により,取締役らの会社に対する損害賠償責任を認めた事例
第6章 1審被告Y1社と雇用契約を締結した1審原告X(契約社員のキャビンアテンダント)が,Y1社から雇用期間1年の契約が終了したとして雇止め(更新拒絶)を通告されたが,本件雇止めは無効であると主張して,Y1社に対し,地位確認および賃金支払いなどを求め,また,Xの上司であった1審被告Y2が退職を強要するなど,人格権を侵害したとして損害賠償を請求した事案
第7章 訴外会社経営のホテルのパートタイム従業員(1審原告)が,訴外会社から1審被告会社へ同ホテルの経営主体が変更された際の解雇は無効とし,同被告会社に対し,労働契約上の地位確認,未払賃金等の支払を求め,訴外会社代表者(1審被告)に対して,慰謝料の支払(会社法429条1項)を求めた事案
第8章 「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」(パートタイム労働法8条1項)に該当すると認められるXについて,正社員との間で,賞与額が大幅に異なる点,週休日の日数が異なる点,退職金の支給の有無が異なる点は,通常の労働者と同視すべき短時間労働者について,短時間労働者であることを理由として賃金の決定その他の処遇について差別的取扱いをしたものとして,同項に違反するものと認められるとされた例
第9章 被告のA奈良法律事務所に勤務していた原告が,雇用期間満了により労働契約が終了したとされたことから,パートタイム労働法8条違反,民法90条(同一価値労働同一賃金原則)違反,賃金の引下げは違法な労働条件の不利益変更に当たり無効,内部登用試験での不合格は公序良俗違反,期間の定めに係る合意無効,被告の更新拒否は「雇止めの法理」に照らし許されないなどを主張して,①主位的に未払賃金,予備的に不法行為による損害賠償を,また②被告の就労拒絶につき,主位的に常勤職員としての雇用契約上の地位の確認,予備的に非常勤職員としての雇用契約上の地位の確認などを求めた事案
第10章 原告が被告に対し,転勤拒否による解雇無効を主張して,労働契約上の権利を有する地位の確認及び賃金の支払を求めた事案
第11章 本件提案が継続雇用制度の趣旨に沿うものであるといえるためには,大幅な賃金の減少を正当化する合理的な理由が必要であるところ,月収ベースの賃金の約75パーセント減少につながるような短時間労働者への転換を正当化する合理的な理由があるとは認められないとされ,Y社が本件提案をしてそれに終始したことは,継続雇用制度の導入の趣旨に反し,裁量権を逸脱または濫用したものであり,違法性があるとして,不法行為の成立を否定した一審判決を変更して,Xに対する100万円の慰謝料等の支払いが命じられた例
第12章 被告を定年退職後,被告の嘱託教諭として就労した原告が,賃金が定年退職前の無期労働契約による賃金の約6割程度しかないことは不合理な労働条件の相違で,有期労働契約の就業規則等の賃金の定めは労契法20条により無効として,被告に対し無期労働契約により支給されるべき賃金と実際に支給された賃金との差額分の未払賃金(予備的に民法709条による同額の損害金)等の支払を求める事案
第13章 Xの定年退職時と嘱託社員および臨時社員時の業務内容および当該業務に伴う責任の程度(職務の内容)は大きく異なるうえ,職務の内容および配置の変更の範囲にも差異があるから,嘱託社員および臨時社員時の基本給ないし時間給と正社員の年俸の趣旨に照らし,Xの嘱託社員および臨時社員時の基本給および時間給が定年退職時の年俸よりも低額であること自体不合理ということはできないとされた例
第14章 控訴人(1審被告)を定年退職後再雇用により1年毎に期間更新し5年間勤務してきた被控訴人(1審原告)が,①控訴人の再雇用職員規定の賃金の順次逓減は労働基準法3条・労働契約法3条に反し無効などとし,雇用後1年目の賃金が支払われるべきとして,差額相当の未払賃金,②再雇用後の賃金の改定による期末手当不支給は不利益変更に当たり無効などとし,未払期末手当,③不法行為に基づく慰謝料等の各支払を求めた事案
第15章 被告経営大学の嘱託講師であった原告が,夜間授業を担当したにもかかわらず,大学夜間担当手当不支給は労契法20条・パートタイム労働法8条に違反し無効であるとして,①原・被告間の雇用契約に基づく賃金として,②不法行為に基づく賃金として,本件手当相当額の支払及び慰謝料等の各支払を求めた事案
第16章 物価手当の不支給は労契法20条に違反するものであるとした一審判断が維持された例
第17章 家族手当,精勤手当,住宅手当の不支給は労契法20条に違反するものであるとした一審判断が維持された例
第18章 出産休暇に関する労働条件の相違について,無期契約職員の職務内容,Y法人における女性職員の比率,出産休暇・出産手当金の内容に照らすと,当該制度の目的にはY法人の組織運営の担い手となる職員の離職を防止して人材を確保するとの趣旨が含まれており,その趣旨が合理性を欠くとは認められず,また,労働条件の実質的な相違が基本的には2週間の産前休暇期間および通常の給与額と健康保険法上の出産手当金との差額部分に留まることも考慮すると,当該相違は無期契約職員および有期契約職員の処遇として均衡を欠くものとはいえないとして,労働契約法20条にいう不合理性を否定された例
第19章 被告との間で有期労働契約を締結した原告が,無期労働契約を締結した正社員より基本給及び賞与が低額で,地域手当も支給されなかったことが労契法20条に違反するとして,正社員の各基本給及び地域手当の合計額と原告の基本給との差額,正社員の賞与と原告の賞与との差額の各支払を求めた事案
第20章 被控訴人と有期労働契約を締結し,大学の非常勤講師として就労していた控訴人が,専任教員(無期労働契約)との間で,本俸等に相違があるとして,不法行為に基づき差額相当の賠償請求,法学部長であった補助参加人が専任教員にするとの約束を破棄したとして,債務不履行等の賠償請求をした事案
第3部 文書提出命令
第1章 相手方(被告)の法律事務所の職員であった申立人(原告)が,賃金額,相手方の就労拒絶の効力を争い,差額賃金等の支払,地位確認等を求めた本案事件において,相手方の①タイムカード,②事件管理表の文書提出を求めた事案
第4部 行政訴訟事件
第1章 A社との間で雇用契約締結し,A社に英語指導助手業務を委託した市の設置する市立小学校で英語指導助手業務に従事した原告が,被告(日本年金機構)に対し,厚生年金保険及び健康保険の被保険者であることの確認請求の却下処分の取消しと被保険者であったことの確認の義務付け及び,国に対し,再審査請求の棄却裁決の取消しを求めた事案
第2章 厚生年金保険法(厚年法)は,労働力の対価として得た賃金を生計の基盤として生計を支えるといい得る程度の労働時間を有する労働者を被保険者とすることを想定しており,そのような労働者といえない短時間の労働時間を有する者は,厚年法9条にいう「適用事業所に使用される70歳未満の者」に含まれないとされた例
第3章 旧パート法には,労働基準法13条のような補充的効果を定めた条文は見当たらず,旧パート法8条1項違反によって,X嘱託職員らの主張するような請求権が直ちに発生するとは認めがたいとして,損害賠償請求権のみが認められた例