生産緑地法に関する裁判例を網羅しています。
生産緑地法
(昭和49年法律第68号)
生産緑地とは、1992年(平成4年)に生産緑地法で定められた土地制度で、要約すると、最低30年は農地・緑地として土地を維持する代わりに税制優遇を受けられるものです。
2022年(令和4年)に法律の期限切れでしたが、2032年まで延長されました。
同法は、農業法、行政法の1つです。
関連法令として、農地法、都市計画法、地方税法(固定資産税・都市計画税)、相続税法などがあります。
目次
第1部 民事訴訟事件・最高裁判例
第1章 小作地に対する宅地並み課税により固定資産税等の額が増加したこと
第2部 民事訴訟事件・下級審裁判例
第1章 生産緑地であることによる納税猶予の特例の適用を前提とする相続税申告の手続を委任された税理士が,当該農地が特例適用の対象外であるのに,依頼者に誤った説明をしたため,依頼者が延滞税等の損害を被ったとする損害賠償請求を認めた事例
第2章 被告らに対し,複数回にわたり,不動産売買等のための資金の貸付け名下に金員を交付した原告が,被告らに対し,主位的には,不法行為(詐欺)による損害賠償請求権に基づき,予備的には,消費貸借契約ないし保証契約に基づき,損害賠償金又は貸金等の支払を求めた事案
第3章 地域コミュニティ活動事業用地の取得について,被告市が原告ら(土地開発公社元理事長ら)を背任罪で告発し,記者発表したのを社会的信用及び名誉を毀損したと主張する原告らが,国家賠償法に基づき慰謝料を請求した事案
第3部 行政訴訟事件・下級審裁判例
第1章 1 地方議会における議員の発言について議長の発した取消命令の法律適合性の有無は、司法審査の対象とならないとした事例
2 地方議会の議員が、その発言の一部を会議録副本において削除されたことによって、議員の地位・信用が低下するとはいえず、その削除については、地方議会の自律的な手段によってのみ対処すべきであるとした事例
第2章 土地区画整理事業において仮換地指定処分が照応の原則に違反するとして取り消された事例
第3章 相続財産である土地の評価にあたり、生産緑地地区に適合していることが指定告示により確認された農地については、生産緑地地区指定の申込時から生産緑地地区の農地として法的に取り扱われるべきであるとの納税者の主張が、生産緑地地区となるためには、都市計画において生産緑地地区と定められることを要し、右都市計画はこれを決定又は変更した旨の告示があった日からその効力を生ずるとして排斥された事例
第4章 1 相続財産である土地の評価にあたり、納税者が依頼した鑑定評価書による評価額は、土地の種別が宅地見込地地域内の宅地見込地であるにもかかわらず、農地地域内の農地であることを前提として行ったものであるから、鑑定の方法自体に問題があることになり、これに示された鑑定評価額は採用し難いものであるから、右鑑定評価書による土地の評価額が土地の適正な時価を示すものであると認めることはできず、右鑑定評価書によって、財産評価基本通達によらない「特段の事情」があるということはできないとされた事例
2 相続財産である土地の評価にあたり、納税者らが遺産分割協議のために依頼した評価時点を平成8年とする鑑定評価書は、その評価手法におおむね問題がないものと認められるから、右単価を基に個別的要因による補正を行い、地積を乗じ、さらに相続開始時点(平成4)までの時点修正を行うことにより、課税時点の時価を算出すると、その合計額は約3億円となり、財産評価基本通達により算定された価額(約4億円)を下回るものであり、右土地につき財産評価基本通達に従って課税価格を算定することが著しく不合理な結果になると認められる特段の事情があるということができるから、右土地の価額は、約3億円と認めるのが相当であるとされた事例
第5章 (4) 相続財産である農地の評価に当たり耕作権の価額を控除するには、当該農地につき農地法20条1項本文の規定が適用される貸借権が成立していなければならないところ、本件相続開始時点において、当該農地に農地法3条1項の許可を受けた貸借権が存在していたとは認められないとされた事例
(5) 相続により取得した農地は納税者が当該農地の貸借権を時効取得していたから当該農地の評価においては、自用地としての価額から貸借権を控除すべきであるとの納税者の主張が、農業を営む者は、農地法3条1項の許可がない限り当該農地の貸借権を取得し得ないことを知り得たものというべきであり、また納税者主張のとおり昭和56年ころから新たに貸借の意思に基づく占有が開始されたとしても、時効期間は20年となり、右期間は未だ経過していないとして排斥された事例
(6) 課税庁は、租税特別措置法70条の6所定の納税猶予の制度を熟知していたのに、納税者にこれを説明し納税猶予を選択する機会を与えることなく、本件農地に係る貸借権を否定して不当に高額な納税負担を強いる更正処分を一方的にしたことは違法であるとの納税者の主張が、納税猶予を受けるためには、相続税の申告期限までに納税猶予分の相続税に相当する担保を提供し、納税猶予の対象となる農地等について遺産分割協議が調っていなければならないが(同法70条の6第1項、4項)、本件ではそのいずれもが満たされていないのであるから、結局、前記の納税猶予の制度を適用すべき前提を欠くものであって、たとえ課税庁が更正処分に当たり納税者に納税猶予の制度を説明しなかったとしても、本件更正処分が違法性を帯びるとはいえないとして排斥された事例
第6章 生産緑地法10条に規定する「主たる従事者」の要件
第7章 相続財産である各土地のうちU商事が賃借権を有するとされた土地については、賃借人をU商事とする当初の建物所有目的の土地賃貸借契約の残存期間を基礎として評価すべきであるとの納税者の主張が、当該賃貸借契約の存否にかかわらず、その後被相続人とU商事との間で締結された使用目的を駐車場等とする賃貸借契約は契約期間が満了しており、解約申入れから1年を経過したときに終了することになる(民法617条)から、相続税法23条(地上権及び永小作権の評価)に定める法定地上権割合(残存期間が10年以下の地上権割合の100分の5)の2分の1に相当する割合を乗じて計算した金額を控除して計算した金額で評価すべきであるとして排斥された事例
第8章 「農地等に係る贈与税及び相続税の納税猶予等の適用に関する取扱いについて」(昭和50年11月4日付、国税庁長官通達57)の趣旨
第9章 課税負担の錯誤を理由に私法上の法律行為が無効であることを主張することの可否
第10章 藤沢市(市)が藤沢市土地開発公社(公社)との間で,土地(本件土地)の先行取得委託契約を締結し,公社が本件土地を取得したことについて,地方自治法242条の2第1項1号により,本件土地売買契約締結の差止めを求めた事案である。
第11章 被相続人がその所有する土地(農地を含む。)の売買契約を締結し,手付金を除く残代金の受領及び農地法所定の届出の前に死亡した場合において,相続税の課税財産が売買残代金請求権であるとされた事例
第12章 1 農地法18条2項1号の「賃借人が信義に反した行為をした場合」に当たるとはいえないと判断された事例
2 農地法18条2項5号の「その他正当の事由がある場合」に当たるとはいえないと判断された事例
第13章 生産緑地に指定された農地の所有者が,下水道事業受益者負担金賦課決定処分の取消しを求める請求が,棄却された事例
第14章 生産緑地に指定された農地の所有者が,下水道事業受益者負担金賦課決定処分の取消しを求める請求が,棄却された事例
第15章 原告らは,農地である別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を所有し,これを適法に第3者に賃貸し,耕作させていたところ,処分行政庁に対し,農地法18条1項に基づき,この賃貸借契約の解除,解約申入れの許可申請をしたが,処分行政庁はこれを不許可とする処分(以下「本件処分」という。)をした。本件は,原告らが,処分行政庁に対し,本件処分は農地法18条2項1号,2号及び6号の規定に反し違法であると主張してその取消しを求めるとともに,本件土地の賃貸借契約の解除,解約申入れを許可することの義務付け(以下「本件義務付けの訴え」という。)を求めた事案である。
第16章 原告らは,本件被相続人の平成24年11月11日の死亡により開始した本件相続に係る相続税の申告をした。
これに対し,武蔵野税務署長は,原告X1に対し,平成27年7月6日付けで更正処分(以下「本件X1第1次更正処分」という。)及びこれに基づく過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件X1第1次賦課決定処分」という。)をした。さらに,同税務署長は,同月7日付けで,原告X1に対する再更正処分(以下,後の本件異議決定及び本件裁決により,その一部が取り消された後の同更正処分を「本件X1第2次更正処分」という。)及びこれに基づく過少申告加算税の賦課決定処分(以下,後の本件異議決定及び本件裁決により,その一部が取り消された後の同賦課決定処分を「本件X1第2次賦課決定処分」という。),並びに原告X2に対する更正処分(以下「本件X2更正処分」という。)及びこれに基づく過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件X2賦課決定処分」という。)をした。本件は,原告らが,本件相続に係る相続財産である土地家屋の評価額及び葬式費用の該当性についての課税庁の判断を争い,原告X1において,本件X1第2次更正処分のうち申告額を超える部分並びに本件X1第1次賦課決定処分及び本件X1第2次賦課決定処分の取消しを,原告X2において,本件X2更正処分のうち申告額を超える部分及び本件X2賦課決定処分の取消しをそれぞれ求める事案である。
第4部 国税不服審判所裁決
第1章 農業の主たる従事者の死亡により、市町村長に買取りの申出ができる生産緑地の価額は、生産緑地でないものとして評価した価額から、その価額に100分の5の割合を乗じて計算した金額を控除した価額で評価するのが相当であるとした事例
第2章 滞納国税である相続税を徴収するために行った相続人の固有財産の差押えが適法であるとした事例
第3章 相続開始日現在、都市計画案の生産緑地地区内にあった農地について、相続開始後、生産緑地として指定されたとしても、財産評価基本通達40-2を適用して評価することはできないとした事例
第4章 倍率方式で評価する地域内に所在する市街地農地を評価するに当たり、当該農地が宅地であるものとした場合における固定資産税評価額が明らかな場合には、当該固定資産税評価額を基として当該農地が宅地であるものとした場合の価額を算定すべきであり、また、控除すべき造成費に給水管等敷設費は含まれないとした事例
第5章 評価対象地は、道路を開設するなどした開発を行うことが最も合理的であり、広大な市街地農地として評価するのが相当であるとした事例
第6章 青地(旧水路)により分断されている2つの土地についてその利用状況等から1つの評価単位とすると判断した事例