国立大学法人法の医療過誤に関する裁判例を網羅しています。
国立大学法人法を根拠条文とする裁判例のうち、医療過誤に関する裁判例です。
国立大学法人法
平成15年7月16日法律第112号
同法は、行政法、行政組織法、教育法の1つです。
同法の主な内容は、国立大学法人及び大学共同利用機関法人の組織及び運営について定めています。
関連法令として、国立大学法人法施行令、国立大学法人法施行規則、国立大学法人評価委員会令、教育基本法、学校教育法、独立行政法人通則法、旧・国立学校設置法(2004年(平成16年)4月1日に廃止)などがあります。
第1章 手術中の迅速病理検査により,控訴人の左オトガイ下に存在したリンパ節に転移性の扁平上皮癌が確認され,これが節外浸潤を起こして顎下部に腫瘍を形成していることが確認されたものであり,A医師は,診察日に,リンパ節の異常を認めなかったので,CT及びMRI検査等の精密検査を行うべき義務があったとはいえないこと,B医師は,控訴人に対し,放射線の術後照射の必要性の程度と理由,骨髄炎等の後遺症が発生する可能性などについて説明をしたことが認められるから,被控訴人病院医師は説明義務を尽くしたということができるなどとして,控訴人の請求を棄却した原判決を相当とし,控訴を棄却した事例
第2章 胃がんと診断されて,幽門側胃切除術を受けた患者が,術後加療中に胃十二指腸動脈瘤破裂に伴う出血により,多臓器不全を発生した死亡につき,国立病院に対する損害賠償請求を認めなかった事例
第3章 国立大学附属病院に入院中の患者に対する抗がん剤治療が,抗がん剤の投与法に関する比較臨床試験の目的をも有するものであるのに,そのことを説明しないでされたとして,説明義務違反を理由とする慰謝料請求を認めた事例
第4章 乳がんの手術に当たり,他に選択が可能で当時医療水準として確立されていた乳房温存療法についての説明が不十分であったなどとして,担当医師に診療契約上の説明義務違反があるとされた事例
第5章 承継前被告(国)が開設していた鹿児島大学医学部附属病院において生体腎移植手術を受けたが,結局,肺炎による敗血症のため死亡したCの長男である原告Aと亡Cの内縁の夫であった原告Bの,被告病院における亡Cに対する診療行為上の過失を理由に,債務不履行又は不法行為による損害賠償請求について,原告らの請求は,いずれも理由がないとして棄却した事例
第6章 大学附属病院における抜歯手術につき、担当歯科医師の過失を認めなかった事例
第7章 看護師が,患者の使用する人工呼吸器の加湿に用いるため本来は滅菌精製水を用意すべきであったのに,滅菌精製水タンクと容器が類似している消毒用エタノータンクを病室に持ち込み,その後同患者を担当した看護師らもその取り違えに気付かずに約53時間にわたり消毒用エタノールを患者に吸引させ,アルコール中毒によって死亡させた医療事故について,同看護師ら及びその使用者である被告京都大学の責任が認められた事例。
第8章 腰部脊椎管狭窄症で国立大学病院の後方椎弓切除術等の施行をされた原告が,脊椎の圧迫により体幹機能障害による歩行困難等の後遺障害を残したと主張し,被告国立大学法人に対し賠償請求をした事案。
第9章 患者に予期しない重篤な後遺症が残っているなどの判示の事情のもとでは,医療機関の患者に対するてん末報告義務として診療録等を示しながら診療経過等を説明する必要があったとして,診療録等を開示しなかった医療機関の債務不履行責任を肯定した事例
第10章 大学医学部附属病院医師には、手術中に胸骨下部での癒着剥離を継続した点に過失があると認定し、その過失により死亡した者の相続人らの不法行為に基づく損害賠償請求を認めた事例
第11章 肺動脈奇形に対する根治手術を受けた患者が低酸素脳症となり死亡した場合,希釈体外循環に加えて術中採血を行った医師に注意義務違反があったとして,病院側の不法行為責任が認められた事例
第12章 生後約9か月の時に急性細気管支炎と診断されて控訴人(1審被告)の開設するB大学医学部附属病院(本件病院)に入院し,人工呼吸等の治療を受けていた被控訴人兼附帯控訴人(1審原告)Aが,入院中に心停止状態に陥り,低酸素脳症による重篤な後遺障害を負ったのは担当医師らの過失によるとして,損害の賠償を求めた事案である。
第13章 乳癌を発症した亡Aが,被告の開設する病院において,乳房温存療法である右乳房の部分切除術を受けたものの,その後,癌が再発し骨等に転移して死亡したことについて,亡Aを相続した夫(原告)は,同病院の医師において,適応がない乳房温存療法を実施した過失,乳房温存療法の危険性等を説明しなかった過失,術後化学療法を誤った過失,再発後の薬物療法を誤った過失,骨転移に対する検査及び治療を怠った過失があったとして,被告の診療契約上の債務不履行又は不法行為(使用者責任)による慰謝料の支払を求めた。