労働事件についての取締役の責任に関する裁判例のうち、主な裁判例を網羅しています。
目次
第1章 品質保持期限切れの牛乳を再利用し集団食中毒を発生させた会社が解散し、その結果、解雇された従業員が会社の代表取締役に対し、重大な過失による任務懈怠があるとして求めた損害賠償請求が認容された事例
第2章 Xらの本件解雇につき,Y1社の不法行為責任が認められ,またY1社の代表取締役であった一審被告Y2およびY3についても,Y1社とともに共同不法行為責任を負うとした一審判決が維持された例
第3章 Xは,疲労の蓄積により脳・心臓疾患を発症する危険性の高い状況にあり,被告Y1社はそれを十分に認識可能であったことが認められ,Y1社としては,Xにかかる負荷が過重なものとなって上記の危険性が現実化することのないよう,Xについて適正な労働条件を提供する義務があったというべきところY1社は,上記の義務をつくさず,Xを過重労働に従事させ,本件脳梗塞の発症に至らせたのであるから,Y1社に安全配慮義務違反があることは明らかであり,また,Y1社代表取締役の被告Y2は,Y1社の代表者として,その被用者につき適正な労働条件が確保されるよう管理する職務上の義務を負っていたところ,Y2は,重過失により上記義務を懈怠したものと認められるとされた例
第4章 時間外および休日労働に対して割増賃金を支払うことは,使用者の被用者に対する基本的な法的義務であり(労基法37条),株式会社の取締役および監査役は,会社に対する善管注意義務ないし忠実義務として,会社に労基法37条を遵守させ,被用者に対して割増賃金を支払わせる義務を負っているとされた例
第5章 Y2らは,悪意または重大な過失により,Y1社が行うべき労働者の生命・健康を損なうことがないような体制の構築と長時間労働の是正方策の実行に関して任務懈怠があったとして,会社法429条1項に基づき損害賠償責任を負うとされた例
第6章 被告Y1社と被告Y3社の間に資本関係はなく,経理も別々になされていたこと,業務指示の主体等を考慮すると,両社が一種の協力企業関係にあった程度を超えて,Y3社の法人格の形骸化および濫用や,両社の一体性は認められないとして,Y1社とY2(Y1社代表取締役)に対するY3社社員の原告A~G,X1支部,X2分会の慰謝料請求が退けられた例
第7章 Kは,遅くともD店で勤務し始めた平成20年2月頃から,恒常的に長時間労働を行い,Y3からパワハラを受けていたのであり,これらによってKには強度の心理的負荷がかかっていたといえ,またY3の電話での発言によってKが過度のストレスを受けていたこと等から,Kは自殺する数か月前または遅くとも自殺する直前には自殺を惹起させ得る精神障害を発症していたというべきであり,他方,Kの自殺の原因となる業務以外の要因を認めることはできないとして,Kの被告Y1社における長時間労働およびY3からのパワハラとKの自殺との間の相当因果関係が認められ,Y3は,Kの長時間労働について把握していたのであるから,パワハラに加えて上記を原因とするKの自殺について不法行為責任を負うとされた例
第8章 事業の主要部分を会社分割により新設会社に移転し,分割前会社の事業を廃止したことは,本件組合壊滅を目的とした不当労働行為であり違法であるとして,分割前の本件会社の被控訴人(第2事件一審原告)元代表取締役D1および新設会社M産業の代表取締役(第1事件一審被告)C2による共同不法行為に当たるとされた例