取締役の善管注意義務
会社法330条、民法644条
(株式会社と役員等との関係)
第三百三十条 株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。
民法644条
(受任者の注意義務)
第六百四十四条 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
取締役の忠実義務
会社法355条
(忠実義務)
第三百五十五条 取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。
会社法355条(忠実義務)は、旧・商法のときには、商法254条の2である。
八幡製鉄事件
取締役の責任追及請求事件
【事件番号】 最高裁判所大法廷判決/昭和41年(オ)第444号
【判決日付】 昭和45年6月24日
【判示事項】 1、政治資金の寄附と会社の権利能力
2、会社の政党に対する政治資金の寄附の自由と憲法3章
3、商法254条ノ2の趣旨
4、取締役が会社を代表して政治資金を寄附する場合と取締役の忠実義務
【判決要旨】 1 会社による政治資金の寄附は、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められるかぎり、会社の権利能力の範囲に属する行為である。
2 憲法3章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものであるから、会社は、公共の福祉に反しないかぎり、政治的行為の自由の一環として、政党に対する政治資金の寄附の自由を有する。
3 商法254条ノ2の規定は、同法254条3項、民法644条に定める善管義務をふえんし、かつ、一層明確にしたにとどまり、通常の委任関係に伴う善管義務とは別個の、高度な義務を規定したものではない。
4、取締役が会社を代表して政治資金を寄附することは、その会社の規模、経営実績その他社会的経済的地位および寄附の相手方など諸般の事情を考慮して、合理的な範囲内においてなされるかぎり、取締役の忠実義務に違反するものではない。
(1につき意見がある)
【参照条文】 民法43
商法166
憲法3章
商法254の2
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集24巻6号625頁