謝罪広告等請求事件
【事件番号】 最高裁判所第1小法廷判決/平成14年(受)第846号
【判決日付】 平成15年10月16日
【判示事項】 一 テレビジョン放送をされた報道番組の内容が人の社会的評価を低下させるか否かについての判断基準
二 テレビジョン放送をされた報道番組によって摘示された事実がどのようなものであるかについての判断基準
三 テレビジョン放送をされた報道番組によって摘示された特定産地の野菜のダイオキシン類汚染に関する事実についてその重要な部分が真実であることの証明があるとはいえないとされた事例
【判決要旨】 一 テレビジョン放送をされた報道番組の内容が人の社会的評価を低下させるか否かについては、一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準として判断すべきである。
二 テレビジョン放送をされた報道番組によって摘示された事実がどのようなものであるかについては、一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準とし、その番組の全体的な構成、これに登場した者の発言の内容、画面に表示された文字情報の内容を重視し、映像及び音声に係る情報の内容並びに放送内容全体から受ける印象等を総合的に考慮して判断すべきである。
三 テレビジョン放送をされた報道番組において、A市産の野菜のダイオキシン類汚染に関し、B研究所の調査結果によればA市産の野菜のダイオキシン類濃度が一g当たり〇・六四~三・八〇ピコグラムである旨記載されたフリップが示され、その野菜がほうれん草をメインとするA市産の葉っぱ物であるとの説明がされたなど判示の事実関係の下では、その番組により摘示された事実の重要な部分は、ほうれん草を中心とするA市産の葉物野菜が全般的にダイオキシン類による高濃度の汚染状態にあり、その測定値が上記数値で示される高い水準にあることとみるべきであり、別の調査結果においてA市産のラベルが付けられた白菜一検体から上記最高値に比較的近似した測定値が得られたことなどをもって、上記摘示された事実の重要な部分について真実であることの証明があるとはいえない。
(三につき、補足意見がある。)
【参照条文】 民法709
民法710
刑法230の2-1
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集57巻9号1075頁
民法
第五章 不法行為
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
刑法
第三十四章 名誉に対する罪
(名誉毀き損)
第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
(公共の利害に関する場合の特例)
第二百三十条の二 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
2 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
3 前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
(侮辱)
第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
(親告罪)
第二百三十二条 この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
2 告訴をすることができる者が天皇、皇后、太皇太后、皇太后又は皇嗣であるときは内閣総理大臣が、外国の君主又は大統領であるときはその国の代表者がそれぞれ代わって告訴を行う。