退職に追い込むためのパワハラ事案~アールエフ事件
テーマ:解雇、退職、退職金
アールエフ事件・長野地方裁判所判決平成24年12月21日労働判例1071号26頁
配転命令無効確認等請求(第1事件)、不当利得返還反訴請求(第2事件)、地位確認等請求事件(第3事件)
【判示事項】 1 就業規則に配転条項が置かれる一方で,雇入通知書に配転の可能性について記載がなく,また,採用時に基本的には転勤がなく,転勤の場合には本人の意思を尊重する旨の説明がなされていたという主張
がなされている場合に,就業規則の配転条項に基づく包括的配転命令権を肯定し,黙示の合意による勤務地の限定を否定した例
2 本件社長ミーティングで社長の意に沿わない発言を行った原告X1およびX1を擁護する言動を行った原告X2に対して配転がなされ,社長が,当該配転から1か月も経たない時期に「辞めさせたいが辞めない」,「同じ従業員から認められなければ辞めるはずだ」などといってXらに退職を迫るための本件社員集会の開催を指示し,Xらの宿泊先・作業場所等について嫌がらせを指示し,従業員に対してXらを無視すること,監視して言動を報告すること,Xらのあら探しをすることを命じていた場合に,当該配転命令が不当な目的により権利を濫用して行われたとして無効とした例
パワーハラスメント事案である。
3 Xらを退職に追い込むための精神的圧迫(本件社員集会において退職強要を行う,Y社が隔離・監視および嫌がらせ的な業務指示を行い,従業員に威圧的・脅迫的な圧迫を行わせるなど)が加えられ,Xらに対する差別的取扱い(一般社員用の社内報を見せない,賞与を支給しないなど)が行われていた場合に,不法行為の成立を認めた例
4 Xらが時間外労働等を行うに当たり,所属長の許可を得ることが求められていた場合に,Xらが会社の業務を業務上の必要性に基づいて行っている限りは,所属長の許可が必要であるとのY社の運用があったとしても,Xらに対して業務を止め退出するように指導したにもかかわらずXらが労働を継続したという事実がない限り,Xらの時間外に該当する時間の労働がY社の指揮命令下に置かれていることは明らかであるとした例
5 勤務成績・勤務態度の不良,協調性の欠如,服務規程・禁止事項の不遵守などを理由として行われた解雇について,社長の意思に沿わないXらを退職に追い込むためにさまざまな精神的圧迫を加え,それでも退職しないXらをY社から排除するために行ったものであるとして,解雇権の濫用および不法行為の成立を認めた例