家事事件手続法の概要
テーマ:離婚、養育費、慰謝料、財産分与、親権
2013年1月1日から家事審判法にかわって家事事件手続法が施行されます。
新法では家事事件手続の透明化,当事者の手続保障の規定が入りました。
例えば,申立書の写しは相手方に送付されることになりますし,審判記録の閲覧謄写は,旧家事審判法では裁判所の裁量に任されていましたが,当事者からの申立てを原則許可しなければならないとされます。
また,子どもの手続代理人や電話会議・テレビ会議など新しい制度も導入されています。
・旧家事審判法の甲類の事件は、家事事件手続法の別表第1、旧家事審判法の乙類の事件は、家事事件手続法の別表第2におおむね相当する。
・公示送達の規定が新たに設けられた(家事事件手続法36条)。
・証拠調べ期日を除き、電話・テレビによる会議により、裁判所に物理的に出頭しなくても済むようになった(家事事件手続法54条)。少なくとも一方当事者が出頭しなければならない民事訴訟と異なり、当事者双方が裁判所に出頭しなくてよい。
・家事審判手続の通則として、家事事件手続法39条~67条に規定があり、相手方のある審判事件(別表第2の事件)については、家事事件手続法68条~72条に特則がある。
・相手方のある審判手続(別表第2の事件)においては、当事者から裁判所に審問の申し出がある場合には、原則として、審問期日を開いて、当事者の陳述を聞かなければならない(家事事件手続法68条)。相手方当事者は審問期日を開く旨の通知がなされ(家事事件手続規則48条)、審問期日に立会権がある(家事事件手続法69条)。
・調停でも審判においても、証拠について、「資料説明書」(民事訴訟における証拠説明書に相当するもの)を当事者は提出しなければならない。
・調停手続においては、裁判所の許可を得て、記録の閲覧謄写等ができるが(家事事件手続法254条)、閲覧謄写等の許可は裁判所の裁量であり(254条3項)、裁判所の不許可決定については即時抗告できない。
・別表第2の事件に関する審判手続では、事実の調査がされた場合は、当事者に通知がされ(家事事件手続法70条。なお、別表第1の事件については家事事件手続法63条)、閲覧謄写等ができる(家事事件手続法47条)。裁判所が閲覧謄写等を不許可とした場合には即時抗告できる(家事事件手続法47条8項~10項)。
・別表第2の事件に関する審判手続では、相当の猶予期間を定めて審理を終結する日を定め(家事事件手続法71条)、審判日が定められる(家事事件手続法72条)。この点、旧家事審判法では、規定がなく、不備があった。
・家事審判の申立ての取下げは審判があるまでできるが(家事事件手続法82条)、例外的に、相手方の同意が必要な場合(審判後の場合の家事事件手続法82条2項、財産分与の153条、遺産分割の199条)、裁判所の許可が必要な場合(後見の家事事件手続法121条、遺言確認・遺言検認の212条、任意後見監督人選任の221条)。
<即時抗告審>
・別表第2の事件に関する審判について、即時抗告ができる者は、手続の種類ごとに定められている(例えば、家事事件手続法156条、242条など)。
・なお、即時抗告手続では、不利益変更禁止の原則がなく(第1審よりさらによくない結論となる可能性がある。)、また、附帯抗告の制度がなくなった。
・例えば、遺産分割事件で、高等裁判所で調停ができる(家事事件手続法84条)。
<審判前の保全処分>
・調停の申立があった場合に、審判前の保全処分の申立ができる(家事事件手続法105条)。旧家事審判法では、審判が係属していることが要件であったのが改正された。
<履行の確保>
・家事事件手続法289条4項(関係機関との調整等)5項(官庁等への嘱託、勤務先や銀行等への財産状況の報告を求めることができる)の規定が新設された。