テーマ:行政救済法,行政事件訴訟法、国家賠償法
最高裁判所第2小法廷判決/昭和61年(オ)第329号、昭和61年(オ)第330号
平成3年4月26日
『平成3年重要判例解説』行政法事件
水俣病認定待たせ賃訴訟
水俣病認定業務に関する熊本県知事の不作為違法に対する損害賠償請求事件
【判示事項】 1、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法3条1項または公害健康被害補償法(昭和62年法律第97号による改正前のもの)4条2項に基づき水俣病患者認定申請をした者が相当期間内に応答処分されることにより焦燥、不安の気持ちを抱かされない利益と法的保護の対象
2、右認定申請を受けた処分庁が応答処分をすべき条理上の作為義務に違反したといえるための要件
【判決要旨】 1、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法3条1項または公害健康被害補償法(昭和62年法律第97号による改正前のもの)4条2項に基づき水俣病患者認定申請をした者が相当期間内に応答処分されることにより焦燥、不安の気持ちを抱かされないという利益は、内心の静穏な感情を害されない利益として、不法行為上の保護の対象になる。
2、右認定申請を受けた処分庁には、不当に長時間にわたらないうちに応答処分をすべき条理上の作為義務があり、右の作為義務に違反したというためには、客観的に処分庁がその処分のために手続上必要と考えられる期間内に処分ができなかったことだけでは足りず、その期間に比して更に長時間にわたり遅延が続き、かつ、その間、処分庁として通常期待される努力によって遅延を解消できたのに、これを回避するための努力を尽くさなかったことが必要である。(1につき反対意見がある。)
【参照条文】 国家賠償法1-1
公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法3-1
公害健康被害補償法(昭和62年法律第97号による改正前のもの)4-2
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集45巻4号653頁
訟務月報38巻2号189頁
最高裁判所裁判集民事162号619頁
裁判所時報1049号87頁
判例タイムズ757号84頁