勤務成績不良を理由とする解雇と、退職合意承諾の意思表示の錯誤~昭和電線電纜事件
テーマ:解雇、退職、退職金
横浜地方裁判所川崎支部判決平成16年5月28日
昭和電線電纜事件
地位確認等請求事件
【判示事項】 1 勤務成績不良を理由とする本件解雇の意思表示が有効であるか否かの判断に当たっては、客観的合理的な基準によるべきこと、解雇理由該当事実が解雇をもって臨まなければならないほど、質的にまたは程度的に重大な事実であるかどうか、使用者側が労働者に改善矯正を促したのに改善がなされなかったかどうか、指導による改善可能性が見込めないかどうか、職場の規律維持に重大な支障を与えたかどうか、使用者側に落ち度がなかったかどうかを総合考慮して決すべきであるとされた例
2 原告には勤務成績不良および業務上の都合の解雇事由が存在していたとはいえず、本件解雇の意思表示は無効であるとされた例
3 原告は退職願を提出しなければ解雇処分にされると誤信して、本件退職合意承諾の意思表示をしたと認められるのが相当であるから、本件退職合意承諾の意思表示にはその動機に錯誤があったとされた例
4 原告は、解雇事由が存在しないことを知っていれば、本件退職合意の意思表示をしなかったであろうと認められるから、本件退職合意承諾の意思表示には法律行為の要素に錯誤があり、無効であるとされた例
5 原告が陥った錯誤の性質、原告の知識、経験、労働組合から受けた前後矛盾する回答内容などを総合すれば、原告が錯誤に陥ったことにつき、少なくとも重大な過失があったとはいえないとされた例
【掲載誌】 労働判例878号40頁