新国立劇場オペラ合唱団員事件その1
上告参加人・新国立劇場運営財団
上告人・日本音楽家ユニオン
不当労働行為救済命令取消請求事件
【事件番号】 最高裁判所第3小法廷判決/平成21年(行ヒ)第226号、平成21年(行ヒ)第227号
【判決日付】 平成23年4月12日
【判示事項】 年間を通して多数のオペラ公演を主催する財団法人との間で期間を1年とする出演基本契約を締結した上,各公演ごとに個別公演出演契約を締結して公演に出演していた合唱団員が,上記法人との関係において労働組合法上の労働者に当たるとされた事例
【判決要旨】 年間を通して多数のオペラ公演を主催する財団法人との間で期間を1年とする出演基本契約を締結した上,各公演ごとに個別公演出演契約を締結して公演に出演していた合唱団員は,次の(1)~(5)など判示の事実関係の下では,上記法人との関係において労働組合法上の労働者に当たる。
(1) 出演基本契約は,上記法人が,試聴会の審査の結果一定水準以上の歌唱技能を有すると認めた者を,原則として契約期間の全ての公演に出演することが可能である合唱団員として確保することにより,上記各公演を円滑かつ確実に遂行することを目的として締結されていた。
(2) 合唱団員は,出演基本契約を締結する際,上記法人から,あらかじめ上記法人が指定する全ての公演に出演するために可能な限りの調整をすることを要望され,合唱団員が公演への出演を辞退した例は,出産,育児や他の公演への出演等を理由とする僅少なものにとどまっていた。
(3) 出演基本契約の内容や,契約期間の公演の件数,演目,各公演の日程及び上演回数,これに要する稽古の日程,その演目の合唱団の構成等は,上記法人が一方的に決定していた。
(4) 合唱団員は,各公演及びその稽古につき,上記法人の指定する日時,場所において,その指定する演目に応じて歌唱の労務を提供し,歌唱技能の提供の方法や提供すべき歌唱の内容について上記法人の選定する合唱指揮者等の指揮を受け,稽古への参加状況について上記法人の監督を受けていた。
(5) 合唱団員は,上記法人の指示に従って公演及び稽古に参加し歌唱の労務を提供した場合に,出演基本契約で定められた単価及び計算方法に基づいて算定された報酬の支払を受け,予定された時間を超えて稽古に参加した場合には超過時間により区分された超過稽古手当の支払を受けていた。
【参照条文】 労働組合法3
労働組合法7
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集65巻3号943頁
昭和二十四年法律第百七十四号
労働組合法
(労働者)
第三条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう。
(不当労働行為)
第七条 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
一 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。
二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
三 労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。ただし、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、かつ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
四 労働者が労働委員会に対し使用者がこの条の規定に違反した旨の申立てをしたこと若しくは中央労働委員会に対し第二十七条の十二第一項の規定による命令に対する再審査の申立てをしたこと又は労働委員会がこれらの申立てに係る調査若しくは審問をし、若しくは当事者に和解を勧め、若しくは労働関係調整法(昭和二十一年法律第二十五号)による労働争議の調整をする場合に労働者が証拠を提示し、若しくは発言をしたことを理由として、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること。