家事調停における事実の調査及び証拠調べ
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第4款 事実の調査及び証拠調べ
(事実の調査及び証拠調べ等)
第56条 家庭裁判所は、職権で事実の調査をし、かつ、申立てにより又は職権で、必要と認める証拠調べをしなければならない(家事事件手続法258条1項、56条1項)。
2 当事者は、適切かつ迅速な審理及び審判の実現のため、事実の調査及び証拠調べに協力するものとする(家事事件手続法258条1項、56条2項)。
(疎明)
第57条 疎明は、即時に取り調べることができる資料によってしなければならない(家事事件手続法258条1項、57条)。
(家庭裁判所調査官による事実の調査)
第58条 家庭裁判所は、家庭裁判所調査官に事実の調査をさせることができ(家事事件手続法258条1項、58条1項)、家庭裁判所調査官は、事実の調査の結果を書面又は口頭で家庭裁判所に報告するものとする(58条3項)。 家庭裁判所調査官は、この報告に意見を付することができる(58条4項)。
(家庭裁判所調査官の期日への立会い等)
第59条 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、家事調停の手続の期日に家庭裁判所調査官を立ち会わせることができる(家事事件手続法258条1項、59条1項)。
2 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、立ち会わせた家庭裁判所調査官に意見を述べさせることができる。
3 家庭裁判所は、家事調停事件の処理に関し、事件の関係人の家庭環境その他の環境の調整を行うために必要があると認めるときは、家庭裁判所調査官に社会福祉機関との連絡その他の措置をとらせることができる。
(裁判所技官による診断等)
第60条 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、医師である裁判所技官に事件の関係人の心身の状況について診断をさせることができる(家事事件手続法258条1項、60条)。
2 第58条第2項から第4項までの規定は前項の診断について、前条第1項及び第2項の規定は裁判所技官の期日への立会い及び意見の陳述について準用する。
(事実の調査の嘱託等)
家庭裁判所は、他の家庭裁判所又は簡易裁判所、受命裁判官、裁判所書記官、家庭裁判所調査官に事実の調査を嘱託することができる(家事事件手続法258条、61条)。
(調査の嘱託等)
第62条 家庭裁判所は、必要な調査を官庁、公署その他適当と認める者に嘱託し、又は銀行、信託会社、関係人の使用者その他の者に対し関係人の預金、信託財産、収入その他の事項に関して必要な報告を求めることができる(家事事件手続法258条1項、62条)。
(事実の調査の通知)
第63条 家庭裁判所は、事実の調査をした場合において、その結果が当事者による家事調停の手続の追行に重要な変更を生じ得るものと認めるときは、これを当事者及び利害関係参加人に通知しなければならない(家事事件手続法258条1項、63条)。
(証拠調べ)
第64条 家事調停の手続における証拠調べについては、民事訴訟法の規定が準用されている(家事事件手続法258条1項、64条1項)。
3 当事者が次の各号のいずれかに該当するときは、家庭裁判所は、20万円以下の過料に処する(家事事件手続法258条1項、64条3項)。
一 第1項において準用する民事訴訟法第223条第1項 (同法第231条 において準用する場合を含む。)の規定による提出の命令に従わないとき、又は正当な理由なく第1項において準用する同法第232条第1項 において準用する同法第223条第1項 の規定による提示の命令に従わないとき。
二 書証を妨げる目的で第1項において準用する民事訴訟法第220条 (同法第231条 において準用する場合を含む。)の規定により提出の義務がある文書(同法第231条 に規定する文書に準ずる物件を含む。)を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたとき、又は検証を妨げる目的で検証の目的を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたとき。
4 当事者が次の各号のいずれかに該当するときは、家庭裁判所は、10万円以下の過料に処する(家事事件手続法258条1項、64条4項)。
一 正当な理由なく第1項において準用する民事訴訟法第229条第2項 (同法第231条 において準用する場合を含む。)において準用する同法第223条第1項 の規定による提出の命令に従わないとき。
二 対照の用に供することを妨げる目的で対照の用に供すべき筆跡又は印影を備える文書その他の物件を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたとき。
三 第1項において準用する民事訴訟法第229条第3項 (同法第231条 において準用する場合を含む。)の規定による決定に正当な理由なく従わないとき、又は当該決定に係る対照の用に供すべき文字を書体を変えて筆記したとき。
5 家庭裁判所は、当事者本人を尋問する場合には、その当事者に対し、家事調停の手続の期日に出頭することを命ずることができる。
6 民事訴訟法第192条 から第194条 までの規定は前項の規定により出頭を命じられた当事者が正当な理由なく出頭しない場合について、同法第209条第1項 及び第2項 の規定は出頭した当事者が正当な理由なく宣誓又は陳述を拒んだ場合について準用する。
(調停委員会を組織する裁判官による事実の調査及び証拠調べ等)
第261条 調停委員会を組織する裁判官は、当該調停委員会の決議により、事実の調査及び証拠調べをすることができる。
2 裁判官は、家庭裁判所調査官に事実の調査をさせ、又は医師である裁判所技官に事件の関係人の心身の状況について診断をさせることができる(家事事件手続法261条2項)。家事事件手続法第58条第3項及び第4項の規定は、事実の調査及び心身の状況についての診断について準用する(家事事件手続法261条3項)。
4 裁判官は、裁判所書記官、家庭裁判所調査官に事実の調査をさせることができる(家事事件手続法261条4項、5項)。
(家事調停委員による事実の調査)
第262条 調停委員会は、相当と認めるときは、当該調停委員会を組織する家事調停委員に事実の調査をさせることができる。ただし、家庭裁判所調査官に事実の調査をさせることを相当と認めるときは、この限りでない(家事事件手続法262条)。
(意見の聴取の嘱託)
第263条 調停委員会は、他の家庭裁判所又は簡易裁判所、家事調停委員に事件の関係人から紛争の解決に関する意見を聴取することを嘱託することができる(家事事件手続法263条)。
(家事調停委員の専門的意見の聴取)
第264条 調停委員会は、必要があると認めるときは、当該調停委員会を組織していない家事調停委員の専門的な知識経験に基づく意見を聴取することができる(家事事件手続法264条1項)。
2 前項の規定により意見を聴取する家事調停委員は、家庭裁判所が指定する。
3 前項の規定による指定を受けた家事調停委員は、調停委員会に出席して意見を述べるものとする。
この場合、いつも家事調停を担当している調停委員ではない別の調停委員が指名され、専門的な意見を述べることとなる。例えば、財産分与の対象となる不動産の価格について、不動産鑑定士である家事調停委員が指名され、意見を述べる場合などがある。
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