ストーカー行為による諭旨免職処分については懲戒権の濫用が認められないとして,一審判断を変更し,Xの同処分無効確認請求が棄却された例
PwCあらた有限責任監査法人事件
降格による賃金差額及び損害賠償等請求控訴事件
【事件番号】 東京高等裁判所判決/令和2年(ネ)第2821号
【判決日付】 令和3年7月14日
【判示事項】 1 本件ストーカー行為の態様や被害女性の精神的苦痛の程度,被控訴人兼控訴人(一審原告)Xの反省態度,再発の危険性等に鑑みれば,同行為を理由とするXへの本件諭旨免職処分については懲戒権の濫用が認められないとして,一審判断を変更し,Xの同処分無効確認請求が棄却された例
2 Xは平成28・29年度にM評価(5段階中3番目の評価)を受けていたことを根拠に,30年度の人事評価での低評価を踏まえて控訴人兼被控訴人(一審被告)Y法人が行った本件降格決定が不当である旨主張するものの,①上記M評価は前回解雇後に復職して間もないXの特殊事情を踏まえた寛大なものであったこと,②復職後のXには業務範囲の拡大や文書作成・資料のまとめ方の改善等が求められていたものの改善がみられなかったこと,③30年1月の担当業務(本件配信業務)廃止後,待機時間が長時間に及んでいたにもかかわらず,Xは業務獲得に向けた活動を積極的に行っておらず,自己研鑽にも熱心ではなかったこと等を踏まえれば,30年度の人事評価についてY法人の裁量権の濫用は認められないとして,一審判断が維持された例
3 ①Xが基本的な業務対応をほとんどできていなかったこと,②本件配信業務を問題なく遂行していたとはいえないこと,③補助業務等を担当する意思がない旨を表明していたこと,④Y法人のバックオフィスの職員は7割が女性であり,本件ストーカー行為を行ったXを他の部署に異動させることが困難であったこと,⑤令和元年度の業務目標設定に際しての上司の提案に反発し,同年度の目標を設定しなかったこと,⑥令和元年度も最低の人事評価が見込まれていたこと等から,Y法人の就業規則が規定する普通解雇事由(「職務の遂行に必要な能力を欠き,かつ他の職務に転換することができない」こと,および「職務怠慢がひどく,勤務成績が著しく不良」であること)が認められるとして,一審判断を変更し,Xの解雇無効確認請求が棄却された例
4 ①Xが本件ストーカー行為等について真摯に反省しておらず,②Y法人のアサイン制度や人事評価制度を否定していたこと等からすれば,Xの言動はY法人との間で構築されるべき誠実な信頼関係を破壊するものであり,Y法人の就業規則が規定するその他の解雇事由(「その他……やむを得ない事由」)も認められるとして,一審判断を変更し,Xの解雇無効確認請求が棄却された例
【掲載誌】 労働判例1250号58頁
労働契約法
(懲戒)
第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
(解雇)
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
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