家屋所有権の移転と賃貸人の地位の承継
家屋明渡請求事件
【事件番号】 最高裁判所第2小法廷判決/昭和35年(オ)第596号
【判決日付】 昭和39年8月28日
【判示事項】 1、家屋所有権の移転と賃貸人の地位の承継
2、家屋所有権の移転による賃貸人の地位の承継に関し審理不尽の違法があるとされた事例
【判決要旨】 1、自己所有家屋を他に賃貸している者が賃貸借継続中に第三者に右家屋の所有権を移転した場合には、特段の事情のないかぎり、賃貸借の地位もこれにともなつて右第三者に移転するものと解すべきである。
2、賃料不払により賃貸借契約を解除したことを理由とする家屋明渡請求訴訟において、賃借人(被告)から、賃貸人(原告)は右解除の意思表示をした当時すでに右家屋を第三者に売り渡してその実体的権利を失つているから明渡請求権を有しない旨の主張がされたのに対し賃貸人(原告)に右主張に対する認否を求めることなく、本訴請求は賃貸借の消滅による目的物返還請求権に基づくものであるから、かりに賃貸人(原告)が右家屋の所有権を他に移転しても右請求権の行使を妨げる理由にはならないとして、右主張を排斥するのは、審理不尽の違法がある。
【参照条文】 借家法1
民事訴訟法394
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集18巻7号1354頁
平成29年改正により、民法605条の2第1項が新設された。
(不動産の賃貸人たる地位の移転)
第六百五条の二 前条、借地借家法(平成三年法律第九十号)第十条又は第三十一条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。
2 前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する。
3 第一項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。
4 第一項又は第二項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、第六百八条の規定による費用の償還に係る債務及び第六百二十二条の二第一項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する。
借地借家法
(平成三年法律第九十号)
(建物賃貸借の対抗力)
第三十一条 建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)
(上告の理由)
第三百十二条 上告は、判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、することができる。
2 上告は、次に掲げる事由があることを理由とするときも、することができる。ただし、第四号に掲げる事由については、第三十四条第二項(第五十九条において準用する場合を含む。)の規定による追認があったときは、この限りでない。
一 法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと。
二 法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。
二の二 日本の裁判所の管轄権の専属に関する規定に違反したこと。
三 専属管轄に関する規定に違反したこと(第六条第一項各号に定める裁判所が第一審の終局判決をした場合において当該訴訟が同項の規定により他の裁判所の専属管轄に属するときを除く。)。
四 法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。
五 口頭弁論の公開の規定に違反したこと。
六 判決に理由を付せず、又は理由に食違いがあること。
3 高等裁判所にする上告は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由とするときも、することができる。