コナミデジタルエンタテインメント事件・産前産後休業とこれに続く育児休業からの復職後,平成21年度(平成21年6月16日以降の1年間)の原告Xの役割グレードをB-1からA-9に引き下げ,役割報酬を550万円から500万円に減額させるとともに,同日以降の成果報酬をゼロと査定して,Xの年俸を,産休,育休等の取得前の合計640万円から復職後は520万円に引き下げたことは,人事権の濫用に当たり無効であるとして,役割報酬の減額に伴う差額請求が認容された例
マタニティ・ハラスメント
地位確認等請求控訴事件
【事件番号】 東京高等裁判所判決/平成23年(ネ)第2946号
【判決日付】 平成23年12月27日
【判示事項】 1 産前産後休業とこれに続く育児休業からの復職後,平成21年度(平成21年6月16日以降の1年間)の原告Xの役割グレードをB-1からA-9に引き下げ,役割報酬を550万円から500万円に減額させるとともに,同日以降の成果報酬をゼロと査定して,Xの年俸を,産休,育休等の取得前の合計640万円から復職後は520万円に引き下げたことは,人事権の濫用に当たり無効であるとして,役割報酬の減額に伴う差額請求が認容された例
2 役割報酬の引下げは,労働者にとって最も重要な労働条件の一つである賃金額を不利益に変更するものであるから,就業規則や年俸規程に明示的な根拠もなく,労働者の個別の同意もないまま,使用者の一方的な行為によって行うことは許されないとされた例
3 Xの成果報酬の査定に当たり,被告Y社は,Xが育休等を取得したことを合理的な限度を超えて不利益に取り扱うことのないよう,成果報酬を合理的に査定する代替的な方法を検討することなく,機械的にゼロと査定したことは,人事権の濫用として違法とされた例
4 成果報酬のゼロ査定について,成果報酬についてはしかるべき金額が決定されておらず,賃金支払請求権として具体化していないとして,その差額支払請求が棄却された例
5 Y社におけるBクラスの成果報酬の平均は60万円であり,平成20年度のXの成果報酬額は90万円だったことから,21年度のXの成果報酬は,本来であれば,Bクラスの平均60万円を下ることはないとし,調整報酬20万を控除し,Xが22年2月には退職したことを考慮のうえ,不法行為に対するXの慰謝料として30万円とするのが相当とされた例
【掲載誌】 労働判例1042号15頁
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
(平成三年法律第七十六号)
(妊娠又は出産等についての申出があった場合における措置等)
第二十一条 事業主は、労働者が当該事業主に対し、当該労働者又はその配偶者が妊娠し、又は出産したことその他これに準ずるものとして厚生労働省令で定める事実を申し出たときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者に対して、育児休業に関する制度その他の厚生労働省令で定める事項を知らせるとともに、育児休業申出等に係る当該労働者の意向を確認するための面談その他の厚生労働省令で定める措置を講じなければならない。
2 事業主は、労働者が前項の規定による申出をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。