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2023年04月17日
金融法の内容(金融商品取引法を含む)

金融法の内容(金融商品取引法を含む)

金融法は、司法試験の科目とされていない。
法務省は司法試験の選択科目とするためには、学問として確立していること(受験生から見れば学習範囲が明確であること)、大半の法科大学院で4単位以上であることを目安としている。
司法試験の選択科目の場合、合格に必要な勉強時間としては、法科大学院の授業・ゼミが最低でも合計8単位は必要であろう。

司法試験の選択科目とすべきかどうか議論があった。しかし、
① 行政法や民事法と学習範囲が重複するし、
② 対象となる法律が業種ごとに多岐にわたること、
③ 金融機関に対する公法上の規制法(銀行法など業種ごとに異なる)、
④ 投資関係に関する金融機関に対する民事の損害賠償請求事件、
⑤ 金融機関の融資に関する取締役の善管注意義務に関する損害賠償請求事件など、
⑥ 金融法といっても、教授によって講義内容が異なり、学問的に確立しているとはいえないのではないか
⑦ 金融法は司法試験合格後に、実務家となってから、必要とされる人が勉強すればよい
⑧ 金融法は法科大学院によって開講されていない場合もあるし、開講されている単位数にバラツキがある。
と指摘されて、選択科目とされていない。

金融法といっても、
・金融商品取引法
・金融機関などに対する公法上の規制法(銀行法、貸金業法、出資法など)、
・金融機関などに関係する民事法、
・投資関係に関する金融機関に対する民事の損害賠償請求事件
・金融機関の融資に関する取締役の善管注意義務に関する損害賠償請求事件など、
・民法と金融法の関連(民法債権総論、担保物権法など)
・民事手続法との関連(民事訴訟法、民事執行法、民事調停法など)
・倒産法との関連(破産法、民事再生法、会社更生法、会社法のうち特別清算、特定調停法など)
・社債
・債権譲渡等を活用した資金調達手法(ファクタリング、売掛債権担保融資、シンジケートローンなどの新しい資金調達手法)
・ABL(流動資産一体型担保)、動産譲渡担保と債権譲渡担保を活用した資金調達手法
・資産流動化取引
・債権流動化取引の意義と基本的スキームの理解
・ 不動産流動化取引の意義と基本的スキームの理解
・電子記録債権法
など、法科大学院・教授によって講義内容が異なり、学問的に確立しているとはいえないのではないかと指摘されている。

◎金融商品取引法について
当時の証券取引法については、上場企業・証券会社・株式投資家等の特別法という印象が強かった。
しかし、証券取引法が金融商品取引法と名称が改正され、金融商品取引法の適用される対象が金融商品一般となった。その意味では、金融商品取引法は金融商品の一般法となったといっても過言ではない。それに伴い、概念定義が抽象度を増し、条文の数も増え、準用条文や政令委任などが増えて複雑となった。
また、例えば、会社法では「募集株式の発行等」という概念とは違い、金融商品取引法では「売出し」などの独自の概念が用いられている。
金融商品取引法の条文、準用条文、政令、内閣府令は、条文の数が多いので、大変である。また、準用条文による読み替えも、
 概念の定義、制度趣旨が丁寧に押さえ、テクニカルタームをまずは覚え、制度趣旨から考えて、金融商品取引法の規制からすると、こうなるはずと考えながら読むと、理解しやすいと思われる。
名称が似ていて類似の別の概念・用語は、定義にさかのぼれば区別できるし、それぞれの要件・効果も確認しておくとよい。
判例として、金融商品取引法や旧・証券取引法に関する最高裁判決等。類似の法律として、商品取引所法に関する裁判例がある。
ただし、金融商品取引法は毎年改正されていることには、留意が必要である。
金融商品取引関係訴訟として、取引損害訴訟、差損金請求訴訟、デリバティブ取引関係訴訟、外国証券取引関係訴訟があるが、金融商品取引法の対象となる以前に別の法律で規制されていた時代の裁判例も多いので、注意が必要である。
金融商品取引法は法科大学院でも開講している学校も少なく、2~4単位が多いとされている。
ただし、金融商品取引法は上場企業にとって必須であり、今後の裁判例の展開も見込まれる。
なお、金融商品取引法は公認会計士試験の必須科目であり、金融商品取引法の一部は不動産鑑定士試験の択一式試験の科目にも含まれている。

◎金融商品取引法
 第1章 総則(第1条・第2条)
定義(2条)
1 金融商品(金融商品取引法の適用対象)
2 第1項有価証券(上場株券その他)
2 第2項有価証券
デリバティブ取引、信託受益権、集団投資スキーム持分(ファンド)、不動産証券化スキーム、不動産投資スキーム、排出権取引、外国証券等については第2項有価証券として金融商品取引法が適用される。
3 金融商品取引業
 投資信託及び投資法人に関する法律に基づく投資信託・投資法人について、金融商品取引法が適用される。
資産の流動化に関する法律に基づく特別目的会社(SPC)、民法組合、投資事業有限責任組合(LPS、投資事業有限責任組合契約に関する法律)、有限責任事業組合(LLP、有限責任事業組合契約に関する法律 )であって信託業法が適用されないもの、発行者のための代理・媒介は、金融商品取引法が適用される。
例外的に、信託業法の適用される発行者の場合には信託業法で金融商品取引法が準用される。
4 開示に関する用語
 募集、売出し、 私募
 第2章 企業内容等の開示(第2条の2―第27条)
・発行市場における開示
1 有価証券届出書
2 目論見書
3 有価証券通知書
4 発行登録制度
・流通市場における開示
1 有価証券報告書
2 内部統制報告書
3 四半期報告書
4 臨時報告書
5 自己株券買付状況報告書
6 親会社等状況報告書
・適時開示
 第2章の2 公開買付けに関する開示(TOB)
  発行者以外の者による株券等の公開買付け、発行者による上場株券等の公開買付け
第2章の3 株券等の大量保有の状況に関する開示、大量保有報告制度(5%ルール)
 第2章の4 開示用電子情報処理組織による手続の特例等
 第2章の5 特定証券情報等の提供又は公表
 第3章 金融商品取引業者等
  第1節 総則
   第2款 金融商品取引業者
   第3款 主要株主
   第4款 登録金融機関
   第5款 特定投資家
 適格機関投資家、特定投資家、一般投資家であって特定投資家へ移行可能である場合がある。それ以外は一般投資家である。
  第2節 業務
・金融商品取引業者等の行為規制
1 広告等規制(広告類似の規制含む)
2 契約締結前交付書面の交付義務
3 行為規制(禁止行為等)
  クーリング・オフが導入されたことの意義は大きい。
金融商品取引業者の行為規制(説明義務、適合性の原則、断定的判断の提供・無断売買・一任売買・損失補てん等の禁止など)について、金融商品取引法の改正により、業者の義務の内容がより厳しくなっている点に注意が必要である。
・信用取引、委託証拠金
・証券取引所の受託契約準則
・未公開有価証券の販売、無登録業者と金融商品取引法、不法行為責任
  第2款 投資助言業務に関する特則
   第3款 投資運用業に関する特則
   第4款 有価証券等管理業務に関する特則(第43条―第43条の4)
   第5款 弊害防止措置等(第44条―第44条の4)
クレジット・カード決済による累積投資の許容、親法人等・子法人等の間の取引に係る弊害防止措置
  第3節 経理
   第1款 第1種金融商品取引業を行う金融商品取引業者(第46条―第46条の6)
   第2款 第1種金融商品取引業を行わない金融商品取引業者
   第3款 登録金融機関(第48条―第48条の3)
   第4款 外国法人等に対する特例(第49条―第49条の5)
  第4節 監督(第50条―第57条)
  第4節の2 特別金融商品取引業者等に関する特則
   第1款 特別金融商品取引業者(第57条の2―第57条の11)
   第2款 指定親会社(第57条の12―第57条の25)
  第5節 外国業者に関する特例
   第1款 外国証券業者(第58条・第58条の2)
   第2款 引受業務の一部の許可(第59条―第59条の6)
   第3款 取引所取引業務の許可(第60条―第60条の13)
   第4款 外国において投資助言業務又は投資運用業を行う者(第61条)
   第5款 情報収集のための施設の設置(第62条)
  第6節 適格機関投資家等特例業務に関する特例(第63条―第63条の4)
  第7節 外務員
 第3章の2 金融商品仲介業者
  業務、経理、監督
 第3章の3 信用格付業者
  業務、経理、監督
 第4章 金融商品取引業協会
  第1節 認可金融商品取引業協会
   設立及び業務、協会員、管理、監督
  第2節 認定金融商品取引業協会、第3節 認定投資者保護団体
    認定及び業務、監督
 第4章の2 投資者保護基金
  会員、設立、管理、業務、負担金、財務及び会計、監督
 第5章 金融商品取引所
  第2節 金融商品会員制法人・自主規制法人・取引所金融商品市場を開設する株式会社
   第1款 金融商品会員制法人
    設立、登記、会員、管理
   第1款の2 自主規制法人
    設立、登記、会員、自主規制業務、管理
   第2款 取引所金融商品市場を開設する株式会社
    第2目 自主規制委員会(第105条の4―第106条の2)
    第3目 主要株主(第106条の3―第106条の9)
    第4目 金融商品取引所持株会社(第106条の10第109条)
  第3節 取引所金融商品市場における有価証券の売買等
  第4節 金融商品取引所の解散、合併
 会員金融商品取引所と会員金融商品取引所との合併、会員金融商品取引所と株式会社金融商品取引所との合併、会員金融商品取引所の合併の手続、株式会社金融商品取引所の合併の手続
  第5節 監督
 第5章の2 外国金融商品取引所
 第5章の3 金融商品取引清算機関等
  金融商品取引清算機関、外国金融商品取引清算機関、金融商品取引清算機関と他の金融商品取引清算機関等との連携
 第5章の4 証券金融会社
 第5章の5 指定紛争解決機関
  業務、監督
 第5章の6 取引情報蓄積機関等
  第1節 清算集中
  第2節 取引情報の保存及び報告等
  第3節 取引情報蓄積機関
 第6章 有価証券の取引等に関する規制(第157条―第171条の2)
インサイダー取引規制、相場操縦・仮装取引・虚偽の風説流布の禁止
 第6章の2 課徴金
  納付命令、審判手続、訴訟
 第8章 罰則
 第9章 犯則事件の調査等

◎金融法
実体法と訴訟法の双方の問題
根拠条文、関係判例およびその理由づけについては、自分で確認する必要がある。
また、当該金融取引の仕組み自体についての説明がほとんど記載されていないため、初学者がいきなり理解するのは難しいであろう。
金融商品販売関係訴訟
預貯金取引関係訴訟
信託取引関係訴訟
商品先物取引関係訴訟(損害賠償請求訴訟)
平成21年に旧・商品取引所法が商品先物取引法に改正され、業者の顧客に対する義務(説明義務、適合性の原則、断定的判断の提供や無断売買・一任売買などの禁止)が法定されている。また、金融先物取引については、金融商品取引法が適用される。なお、いずれの場合にも、金融商品の販売等に関する法律が適用される。
貸金業取引関係訴訟(貸主側の提起する訴訟、借主側の提起する訴訟)
    利息制限法、出資法が問題となる。
信販取引関係訴訟(販売業者等の提起する訴訟、購入者等の提起する訴訟)
    割賦販売法が問題となる。
特定商取引関係訴訟(販売者等の提起する訴訟、購入者等の提起する訴訟)
    特定商取引法の定めるクーリング・オフ、取消権、解除権、中途解約権

金融取引に関する特別法、銀行法などの概説
伝統的銀行取引として、受信取引法(預金等)、与信取引法(貸出し、債権の管理・保全・回収)がある。
現代型金融取引として、シンジケート・ローン、デリバティブ、資産運用、社債、LBO・MBO、証券化がある。

銀行・金融機関の法的責任
貸付、民商法の一般法理、債権回収、詐害行為取消権、否認権行使、投資取引、変額保険、付随業務、銀行等の役員の損害賠償責任


[金融法の主な法律]
銀行法
信用金庫法
労働金庫法
信用協同組合法
中小企業等協同組合法
農業協同組合法
農林中央金庫法
水産業協同組合法
協同組合による金融事業に関する法律
株式会社商工組合中央金庫法

金融商品取引法
金融商品販売法
投資信託及び投資法人に関する法律(投信法)
投資主、協同組織金融機関の優先出資に関する法律
資産の流動化に関する法律
不動産特定共同事業法
資金決済に関する法律
動産債権譲渡特例法
電子記録債権法
担保付社債法
社債、株式等の振替に関する法律
信託法
信託業法
金融機関の信託業務の兼営等に関する法律
商品先物取引法
出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)
割賦販売法
貸金業法
特定商品等の預託等取引契約に関する法律
商品投資に係る事業の規制に関する法律
金融業者の貸付業務のための社債の発行等に関する法律

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