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2023年04月19日
学校法人専修大学(無期転換)事件・科技イノベ活性化法15条の2は,研究開発に5年を超える期間の定めのあるプロジェクトが少なくないことを前提に,そのようなプロジェクトの終了前に雇止めがされることを回避するために,10年超えの特例を定めたものであり,同様の事態がすべての有期労働契約の労働者に当てはまるものとはいえないとされた例

学校法人専修大学(無期転換)事件・科技イノベ活性化法15条の2は,研究開発に5年を超える期間の定めのあるプロジェクトが少なくないことを前提に,そのようなプロジェクトの終了前に雇止めがされることを回避するために,10年超えの特例を定めたものであり,同様の事態がすべての有期労働契約の労働者に当てはまるものとはいえないとされた例

 

 

              無期労働契約の地位確認及び損害賠償請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/令和4年(ネ)第63号

【判決日付】      令和4年7月6日

【判示事項】      1 科技イノベ活性化法15条の2は,研究開発に5年を超える期間の定めのあるプロジェクトが少なくないことを前提に,そのようなプロジェクトの終了前に雇止めがされることを回避するために,10年超えの特例を定めたものであり,同様の事態がすべての有期労働契約の労働者に当てはまるものとはいえないとされた例

             2 科技イノベ活性化法15条の2第1項1号の「研究者」というには,研究開発法人または有期労働契約を締結した者が設置する大学等において,研究開発およびこれに関連する業務に従事している者であることを要するというべきであり,有期労働契約を締結した者が設置する大学において研究開発およびこれに関連する業務に従事していない非常勤講師については,同号の「研究者」とすることは立法趣旨に合致しないというべきであるとの一審判断が維持された例

             3 科技イノベ活性化法15条の2第1項1号の「研究者」につき,研究実績がある者,または,大学等を設置する者が行った採用の選考過程において研究実績を考慮された者であれば「研究者」に該当すると解した場合,大学教員は,研究実績がある者であったり,研究実績を選考過程で考慮された者であったりすることがほとんどであるから,任期法の定めと比べて10年超えの特例が広く適用されることとなり,このような解釈は不合理であるとされた例

             4 科技イノベ活性化法15条の2第1項1号の「研究者」は,研究開発法人または有期労働契約を締結している大学等において業務として研究開発を行っている者であることを要すると解すべきであり,控訴人(一審被告)Y法人の設置する専修大学において,学部生に対する初級から中級までのA語の授業,試験およびこれらの関連業務にのみ従事している被控訴人(一審原告)Xは,「研究者」に該当しないとの一審判断が維持された例

【掲載誌】        労働判例1273号19頁

             LLI/DB 判例秘書登載

 

 

労働契約法

(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)

第十八条 同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。

2 当該使用者との間で締結された一の有期労働契約の契約期間が満了した日と当該使用者との間で締結されたその次の有期労働契約の契約期間の初日との間にこれらの契約期間のいずれにも含まれない期間(これらの契約期間が連続すると認められるものとして厚生労働省令で定める基準に該当する場合の当該いずれにも含まれない期間を除く。以下この項において「空白期間」という。)があり、当該空白期間が六月(当該空白期間の直前に満了した一の有期労働契約の契約期間(当該一の有期労働契約を含む二以上の有期労働契約の契約期間の間に空白期間がないときは、当該二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間。以下この項において同じ。)が一年に満たない場合にあっては、当該一の有期労働契約の契約期間に二分の一を乗じて得た期間を基礎として厚生労働省令で定める期間)以上であるときは、当該空白期間前に満了した有期労働契約の契約期間は、通算契約期間に算入しない。

 

 

科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法葎

(労働契約法の特例)

第十五条の二 次の各号に掲げる者の当該各号の労働契約に係る労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)第十八条第一項の規定の適用については、同項中「五年」とあるのは、「十年」とする。

一 研究者等であって研究開発法人又は大学等を設置する者との間で期間の定めのある労働契約(以下この条において「有期労働契約」という。)を締結したもの

二 研究開発等に係る企画立案、資金の確保並びに知的財産権の取得及び活用その他の研究開発等に係る運営及び管理に係る業務(専門的な知識及び能力を必要とするものに限る。)に従事する者であって研究開発法人又は大学等を設置する者との間で有期労働契約を締結したもの

三 試験研究機関等、研究開発法人及び大学等以外の者が試験研究機関等、研究開発法人又は大学等との協定その他の契約によりこれらと共同して行う研究開発等(次号において「共同研究開発等」という。)の業務に専ら従事する研究者等であって当該試験研究機関等、研究開発法人及び大学等以外の者との間で有期労働契約を締結したもの

四 共同研究開発等に係る企画立案、資金の確保並びに知的財産権の取得及び活用その他の共同研究開発等に係る運営及び管理に係る業務(専門的な知識及び能力を必要とするものに限る。)に専ら従事する者であって当該共同研究開発等を行う試験研究機関等、研究開発法人及び大学等以外の者との間で有期労働契約を締結したもの

2 前項第一号及び第二号に掲げる者(大学の学生である者を除く。)のうち大学に在学している間に研究開発法人又は大学等を設置する者との間で有期労働契約(当該有期労働契約の期間のうちに大学に在学している期間を含むものに限る。)を締結していた者の同項第一号及び第二号の労働契約に係る労働契約法第十八条第一項の規定の適用については、当該大学に在学している期間は、同項に規定する通算契約期間に算入しない。

 

 

 

       主   文

 

 1 本件控訴を棄却する。

 2 控訴費用は、控訴人の負担とする。

 

       事実及び理由

 

(略称は原判決の例による。)

第1 控訴の趣旨

 1 原判決中、控訴人の敗訴部分を取り消す。

 2 上記取消しに係る部分の被控訴人の請求を棄却する。

第2 事案の概要

 1 事案の要旨

 平成元年、被控訴人は、控訴人(学校法人)との間で、契約期間を約1年とする有期労働契約を締結し、控訴人が設置する大学でドイツ語の非常勤講師となった。そして、その後、同契約を毎年更新してきたが、令和元年6月20日、労契法(労働契約法)18条1項に基づき、いわゆる無期転換の申込みをした。これに対し、控訴人は、被控訴人が科技イノベ活性化法(科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律)15条の2第1項1号に該当し、同法の施行日(平成25年4月1日)以後の日を契約期間の初日とする有期労働契約の契約期間を通算した期間が10年を超えるまで無期転換申込権は発生しないとして、これを認めない取扱いをした。

 被控訴人は、上記申込みにより、当時の有期労働契約の期間満了日の翌日(令和2年3月14日)を始期とする期間の定めのない労働契約が成立したと主張して、控訴人に対し、期間の定めのない労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めた。また、控訴人が無期転換申込権を認めない取扱いをしたことは違法であると主張して、不法行為に基づき、損害賠償金100万円と遅延損害金の支払を求めた。

 原審は、被控訴人の請求のうち、期間の定めのない労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める部分を認容したところ、控訴人が請求全部の棄却を求めて控訴した。

 (上記被控訴人の損害賠償請求を棄却した部分については、不服の申立てがないから、当審の審判の対象ではない。)

 

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