家屋賃借人の妻の失火と、賃借人たる夫の債務不履行上の責任
損害賠償請求事件
【事件番号】 最高裁判所第3小法廷判決/昭和28年(オ)第848号
【判決日付】 昭和30年4月19日
【判示事項】 家屋賃借人の妻の失火と、賃借人たる夫の債務不履行上の責任
履行不能による填補賠償の請求と契約解除の要否
【判決要旨】 家屋賃借人の妻の失火により、右家屋が滅失したときは、賃借人たる夫の責に帰すべき事由により、賃借物の返還義務が履行不能になつたものと認めるべきである。
債務者の責に帰すべき事由によつて履行不能を生じたときは、賃借人は契約を解除することなくして填補賠償の請求をすることができる。
【参照条文】 民法415
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集9巻5号556頁
民法
(履行不能)
第四百十二条の二 債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない。
2 契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは、第四百十五条の規定によりその履行の不能によって生じた損害の賠償を請求することを妨げない。
(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
一 債務の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。