家事調停での申立書以外の主張書面・証拠資料の取り扱い
申立書以外の主張書面とは、準備書面が考えられる。
証拠として、通常の証拠以外に、当事者の言い分を記載した「陳述書」がある。「陳述書」は、その当事者にとっての主観的な真実を記載しがちで、ともすれば感情的な表現になりがちである。
また、主張・証拠以外に、例えば、「DV被害にあっているので、裁判所におかれては住所・電話番号等の記載を秘匿されたい。調停の際に相手方と同席はしたくないので、配慮されたい」旨の裁判所あての「上申書」などが考えられる。
裁判記録の閲覧謄写は,旧家事審判法では裁判所の裁量に任されていたが,家事事件手続法では、当事者の手続保障の観点から、次のように改められた。
調停手続においては、申立書以外の主張書面・証拠資料は当然には相手方当事者に送付や開示はされない。裁判所の許可を得て、裁判記録の閲覧謄写等ができるが(家事事件手続法254条)、閲覧謄写等の許可は裁判所の裁量であり(254条3項)、裁判所の不許可決定については即時抗告できない。
しかし、家事審判手続では、裁判所がおこなった「事実の調査」の通知がされ(家事事件手続法70条)、当事者からの閲覧謄写等の申立てを原則として許可しなければならないとされ、不許可の場合には即時抗告できる(家事事件手続法47条)。
また、離婚訴訟は人事訴訟法が適用される。
離婚訴訟の判決は、附帯処分についての裁判等がされる(人事訴訟法32条)。
人事訴訟法第32条
1項 裁判所は、申立てにより、夫婦の一方が他の一方に対して提起した離婚請求を認容する判決において、「附帯処分」についての裁判をしなければならない(32条1項)。
① 子の親権者の指定、監護者の指定その他の子の監護に関する処分、
② 財産の分与に関する処分
③ 標準報酬等の按分割合に関する処分(厚生年金保険法第78条の2第2項 、国家公務員共済組合法第93条の5第2項、私立学校教職員共済法第25条又は地方公務員等共済組合法第105条第2項 の規定による処分をいう。)
2 裁判所が離婚請求を認容する判決において、裁判所は、判決において、当事者に対し、子の引渡し又は金銭の支払その他の財産上の給付その他の給付を命ずることができる(人事訴訟法32条2項、3項)。
4 裁判所は、子の親権者または監護者の指定その他の子の監護に関する処分についての裁判に当たっては、子が15歳以上であるときは、その子の陳述を聴かなければならない(人事訴訟法32条4項)。
なお、子の親権者の指定は、未成年の子がいる場合に限られます。
調停が不成立で、訴訟または審判に移行した場合には、いずれにせよ相手方当事者に閲覧謄写されることを予期して、調停段階での主張書面、証拠の提出を心がけるべきであろう。
また、離婚そのものについては調停・請求認諾・和解等が成立した場合であっても、その他の離婚の際の条件(養育費支払い、面会交流など)の審判へ移行した場合にも、同様に、相手方に閲覧謄写され得るので、注意が必要である。
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