人事訴訟法、訴訟手続、その2、証拠など
テーマ:離婚、養育費、慰謝料、財産分与、親権
(民事訴訟法 の規定の適用除外)
第19条1項 人事訴訟の訴訟手続においては、民事訴訟法第157条 、第157条の2、第159条第1項、第207条第2項、第208条、第224条、第229条第4項及び第244条の規定は適用されない(19条1項)。
時機に後れた攻撃防御方法の却下等の以下の民事訴訟法の規定は適用されない(人事訴訟法19条1項)
① 時機に後れた攻撃防御方法の却下(民事訴訟法第157条1項)
② 攻撃防御方法が趣旨不明瞭で当事者が釈明をしない攻撃防御方法の却下(民事訴訟法第157条2項)
③ 審理の計画が定められている場合に提出されなかった攻撃防御方法の却下(民事訴訟法157条の2)。
当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合でも、その事実を自白したもの(擬制自白)とみなされない(人事訴訟法19条1項、民事訴訟法第159条の適用除外)。
自白した事実についても、証明が必要である(人事訴訟法19条1項、「民事訴訟法第179条 の規定中裁判所において当事者が自白した事実に関する部分」の適用除外)。
(当事者本人の尋問)
第207条 裁判所は、申立てにより又は職権で、当事者本人を尋問することができる。この場合においては、その当事者に宣誓をさせることができる(民事訴訟法207条1項は人事訴訟法でも適用される)。
2 民事訴訟法では、証人及び当事者本人の尋問を行うときは、まず証人の尋問を先にし、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、まず当事者本人の尋問をすることができるが、人事訴訟では、通常は、当事者の尋問から行うのが実務では通例である(人事訴訟法19条1項、民事訴訟法207条2項の適用除外)。
(不出頭等の効果)
第208条 当事者本人を尋問する場合において、その当事者が、正当な理由なく、出頭せず、又は宣誓・陳述を拒んだときであっても、裁判所は、尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができない(人事訴訟法19条1項、民事訴訟法208条の適用除外)。
(当事者が文書提出命令に従わない場合等の効果)
以下の場合であっても、裁判所は、当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができない(人事訴訟法19条1項、民事訴訟法224条の適用除外)。
① 当事者が文書提出命令に従わないとき(民事訴訟法224条1項)
② 当事者が相手方の使用を妨げる目的で提出の義務がある文書を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたとき(民事訴訟法224条2項)
③ 前二項に規定する場合において、相手方が、当該文書の記載に関して具体的な主張をすること及び当該文書により証明すべき事実を他の証拠により証明することが著しく困難であるとき(民事訴訟法224条3項)
(筆跡等の対照による証明)
第229条 文書の成立の真否は、筆跡又は印影の対照によっても、証明することができる(民事訴訟法229条1項)。対照をするのに適当な相手方の筆跡がないときは、裁判所は、対照の用に供すべき文字の筆記を相手方に命ずることができる(民事訴訟法229条3項)。しかし、人事訴訟法19条1項により、相手方が正当な理由なく、対照の用に供すべき文字の筆記の裁判所の決定に従わないときでも、裁判所は、文書の成立の真否に関する挙証者の主張を真実と認めることができない(人事訴訟法19条1項、民事訴訟法229条4項の適用除外)。
第244条 裁判所は、当事者の双方又は一方が口頭弁論の期日に出頭せず、又は弁論をしないで退廷をした場合においても、終局判決をすることができない(人事訴訟法19条1項、民事訴訟法244条の適用除外)。
2 人事訴訟の目的については、原則として、請求の放棄または認諾、和解はできない(人事訴訟法19条2項、民事訴訟法第266条及び第267条の適用除外)。ただし、後述するように、特例として、離婚請求などの婚姻関係の訴えには、人事訴訟法37条の例外があり、請求の放棄または認諾、和解ができる場合がある。また、原告は、訴えの取下げ(民事訴訟法261条~263条)はできる。
(職権探知主義)
第20条 人事訴訟においては、裁判所は、当事者が主張しない事実をしん酌し、かつ、職権で証拠調べをすることができる。この場合においては、裁判所は、その事実及び証拠調べの結果について当事者の意見を聴かなければならない(20条)。
(当事者本人の出頭命令等)
第21条 人事訴訟においては、裁判所は、当事者本人を尋問する場合には、その当事者に対し、期日に出頭することを命ずることができる(21条1項)。
2 出頭を命じられた当事者が正当な理由なく出頭しない場合、過料等の制裁がある(人事訴訟法21条2項、民事訴訟法第192条から第194条までの規定準用)。
(当事者尋問等の公開停止)
第22条 人事訴訟における当事者本人若しくは法定代理人(以下この項及び次項において「当事者等」という。)又は証人が当該人事訴訟の目的である身分関係の形成又は存否の確認の基礎となる事項であって自己の私生活上の重大な秘密に係るものについて尋問を受ける場合においては、裁判所は、裁判官の全員一致により、その当事者等又は証人が公開の法廷で当該事項について陳述をすることにより社会生活を営むのに著しい支障を生ずることが明らかであることから当該事項について十分な陳述をすることができず、かつ、当該陳述を欠くことにより他の証拠のみによっては当該身分関係の形成又は存否の確認のための適正な裁判をすることができないと認めるときは、決定で、当該事項の尋問を公開しないで行うことができる(22条1項)。
2 裁判所は、公開停止決定をするに当たっては、あらかじめ、当事者等及び証人の意見を聴かなければならない(22条2項)。
3 裁判所は、公開停止の規定により当該事項の尋問を公開しないで行うときは、公衆を退廷させる前に、その旨を理由とともに言い渡さなければならない。当該事項の尋問が終了したときは、再び公衆を入廷させなければならない(22条3項)。