ユニバーサルミュージック事件上告審判決
法人税更正処分等取消請求事件
【事件番号】 最高裁判所第1小法廷判決/令和2年(行ヒ)第303号
【判決日付】 令和4年4月21日
【判示事項】 1 法人税法132条1項にいう「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」の意義
2 組織再編成に係る一連の取引の一環として行われた金銭の借入れが法人税法132条1項にいう「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」には当たらないとされた事例
【判決要旨】 1 法人税法132条1項にいう「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは,同項各号に掲げる法人である同族会社等の行為又は計算のうち,経済的かつ実質的な見地において不自然,不合理なもの,すなわち経済的合理性を欠くものであって,法人税の負担を減少させる結果となるものをいう。
ユニバーサルミュージック事件 2 企業グループにおける組織再編成に係る一連の取引の一環として,当該企業グループに属する内国法人である同族会社が,当該企業グループに属する外国法人から行った金銭の借入れは,次の(1)~(3)など判示の事情の下では,当該借入れに係る支払利息の額を損金の額に算入すると法人税の額が大幅に減少することとなり,また,当該借入れが無担保で行われるなど独立かつ対等で相互に特殊関係のない当事者間で通常行われる取引とは異なる点があるとしても,法人税法132条1項にいう「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」には当たらない。
(1)上記一連の取引は,上記企業グループのうち米国法人が直接的又は間接的に全ての株式又は出資を保有する法人から成る部門において日本を統括する合同会社として上記同族会社を設立するなどの組織再編成に係るものであった。
(2)上記一連の取引には,税負担の減少以外に,上記部門を構成する内国法人の資本関係及びこれに対する事業遂行上の指揮監督関係を整理して法人の数を減らす目的,機動的な事業運営の観点から当該部門において日本を統括する会社を合同会社とする目的,当該部門の外国法人の負債を軽減するための弁済資金を調達する目的,当該部門を構成する内国法人等が保有する資金の余剰を解消し,為替に関するリスクヘッジを不要とする目的等があり,当該取引は,これらの目的を同時に達成する取引として通常は想定されないものとはいい難い上,その資金面に関する取引の実態が存在しなかったことをうかがわせる事情も見当たらない。
(3)上記借入れは,上記部門に属する他の内国法人の株式の購入代金及びその関連費用にのみ使用される約定の下に行われ,実際に,上記同族会社は,株式を取得して当該内国法人を自社の支配下に置いたものであり,借入金額が使途との関係で不当に高額であるなどの事情もうかがわれず,また,当該借入れの約定のうち利息及び返済期間については,当該同族会社の予想される利益に基づいて決定されており,現に利息の支払が困難になったなどの事情はうかがわれない。
【参照条文】 法人税法132-1
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集76巻4号480頁