マタハラ・広島中央保健生活協同組合・差戻控訴審判決
地位確認等請求控訴事件
【事件番号】 広島高等裁判所判決/平成26年(ネ)第342号
【判決日付】 平成27年11月17日
【判示事項】 1 妊娠中の控訴人(一審原告)Xが,軽易な業務への転換を希望し,訪問リハビリの業務から病院リハビリ科に異動されるに際し,被控訴人(一審被告)Y生協がXの副主任を免じたこと(本件措置1)が,均等法9条3項に違反するとされた例
2 本件措置1を,Y生協の業務遂行,管理運営,人事配置上の必要性に基づくものであって,Xもこれに同意していたとして,本件措置1が均等法9条3項に違反しないとした差戻前の二審判決が取り消された例
3 本件措置1につき,その必要性や理由について,Y生協からXに対する説明があったと認めるに足りる証拠はなく,事後にXがやむなく承諾したことは認められるとしても,これがXの自由意思に基づくものであると認定し得る合理的理由は存在しないとされた例
4 本件措置1について,Y生協が,均等法の目的,理念に従って女性労働者を遇することについて使用者として十分に裁量権を働かせたとはいいがたく,使用者として,女性労働者の母性を尊重し職業生活の充実の確保を果たすべき義務に違反した過失(不法行為),労働法上の配慮義務違反(債務不履行)があったとされた例
【参照条文】 雇用機会均等法9-3
民法415
民法709
【掲載誌】 判例時報2284号120頁
労働判例1127号5頁
【評釈論文】 ジュリスト1494号111頁
労働基準814号24頁
本県は、下記最高裁判決の差戻控訴審判決である。
最高裁判所第1小法廷判決/平成24年(受)第2231号
【判決日付】 平成26年10月23日
【判示事項】 女性労働者につき妊娠中の軽易な業務への転換を契機として降格させる事業主の措置の,「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」9条3項の禁止する取扱いの該当性
【判決要旨】 女性労働者につき労働基準法65条3項に基づく妊娠中の軽易な業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は,原則として「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」9条3項の禁止する取扱いに当たるが, 当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき,又は事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易な業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって, 上記措置につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するときは,同項の禁止する取扱いに当たらない。
(補足意見がある。 )
【参照条文】 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律9-3
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則2の2
労働基準法65-3
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集68巻8号1270頁
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四十七年法律第百十三号)
(婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等)
第九条 事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。
2 事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。
3 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、 当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
4 妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。