土地及びその地上建物の所有者が土地につき所有権移転登記を経由しないまま建物に抵当権を設定した場合と法定地上権の成否
建物収去等土地明渡事件
【事件番号】 最高裁判所第2小法廷判決/昭和53年(オ)第533号
【判決日付】 昭和53年9月29日
【判示事項】 土地及びその地上建物の所有者が土地につき所有権移転登記を経由しないまま建物に抵当権を設定した場合と法定地上権の成否
【判決要旨】 土地及びその地上建物の所有者が建物につき抵当権を設定したときは、土地の所有権移転登記を経由していなくても、法定地上権の成立を妨げない。
【参照条文】 民法177
民法388
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集32巻6号1210頁
法定地上権の成立要件として、抵当権の設定当時、土地及びその地上建物が同一所有者に属することを要する(民法388条)が、右所有の事実は登記を伴うものでなければならないかどうか。
この点については、大判昭7・10・21民集11巻2177頁、同昭14・12・19民集18巻1583頁は、土地に抵当権を設定当時、同土地及び地上建物が同一人の所有に属するときは、右建物につき保存登記がされていなくとも法定地上権の成立を肯定した。
そして、最高三小判昭48・9・18民集27巻8号1066頁は、土地及びその地上建物の所有者が建物の取得原因である譲受けにつき所有権移転登記を経由しないまま土地につ
民法
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
(法定地上権)
第三百八十八条 土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人松岡滋夫の上告理由について
原審の確定したところによると、訴外Aが本件建物(第一審判決別紙第二目録記載の建物)につき訴外三笠無線電機合資会社のために抵当権を設定した当時、右建物及びその敷地である本件土地(同第一目録記載の土地)は、ともに成井の所有に属していたが、本件土地については所有権移転登記を経由していなかつたというのである。右事実関係のもとにおいて、抵当権の実行により本件建物を競落した被上告人が法定地上権を取得するものとした原審の判断は、正当として是認することができ(最高裁昭和四五年(オ)第九八九号同四八年九月一八日第三小法廷判決・民集二七巻八号一〇六六頁参照)、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第二小法廷