私電磁的記録不正作出とその供用と窃盗との間には順次手段結果の関係があるとされた事例
窃盗、私電磁的記録不正作出、同供用被告事件
【事件番号】 東京地方裁判所判決/昭和63年(刑わ)第3487号
【判決日付】 平成元年2月17日
【判示事項】 私電磁的記録不正作出とその供用と窃盗との間には順次手段結果の関係があるとされた事例
【参照条文】 刑法161の2-1
刑法161-3
刑法235
刑法54-1
【掲載誌】 判例タイムズ700号279頁
刑事裁判資料273号10頁
刑法
(電磁的記録不正作出及び供用)
第百六十一条の二 人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪が公務所又は公務員により作られるべき電磁的記録に係るときは、十年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
3 不正に作られた権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を、第一項の目的で、人の事務処理の用に供した者は、その電磁的記録を不正に作った者と同一の刑に処する。
4 前項の罪の未遂は、罰する。
(窃盗)
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理)
第五十四条 一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
2 第四十九条第二項の規定は、前項の場合にも、適用する。
本件は、他人のキャッシュ・カードを窃取したうえ、勤務先のコンピュータを使って右キャッシュ・カードの磁気ストライプ部分を有り合わせの他のカードに複写して電磁的記録を不正に作出したうえ、これを利用して現金自動払出機(ATM機)から現金を窃取したという事案である。
本判決は、刑法161条の2第1項の私電磁的記録不正作出罪、同条3項のその供用罪と現金自動払出機からの窃盗罪は、順次手段結果の関係にあって牽連犯であるとして処理した。