名神高速道路における大型バスの転覆事故につき、部分的ハイドロプレーニング現象発生下の事故であることを認め、当時かかる事態の発生は、自動車運転者一般に予見可能性はなかつたとして、過失が否定された事例
業務上過失致死傷被告事件
【事件番号】 大阪高等裁判所判決/昭和46年(う)第679号
【判決日付】 昭和51年5月25日
【判示事項】 名神高速道路における大型バスの転覆事故につき、部分的ハイドロプレーニング現象発生下の事故であることを認め、当時かかる事態の発生は、自動車運転者一般に予見可能性はなかつたとして、過失が否定された事例
【判決要旨】 過失犯は、行為者に予見し得る事態に対応した回避措置をとらせることに意義があるから、予見の可能性の対象となる事態も漠然としたものでは足りず、行為者のおかれた立場において、結果発生の回避手段をとり得る程度の具体的内容をもつたものでなければならないところ、本件当時、被告人のような高速バス等自動車運転者一般に、自動車を運転し湿潤路面を高速走行中、通常のスリップ現象とは異なり、格別のハンドル・ブレーキ操作等もしないのに、わずかな横風等の外力によって横滑りを起すという極端に滑り易い異常事態(ハイドロプレーニング現象)が発生することがあり得ることまでの予見可能性がない場合には、右のような異常事態を予測した減速運転をすべき業務上の注意義務があるとはいえない。
【参照条文】 刑法211
【掲載誌】 刑事裁判月報8巻4~5号253頁
判例タイムズ341号147頁
判例時報827号123頁
刑事裁判資料239号452頁
刑法
(業務上過失致死傷等)
第二百十一条 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。