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2023年08月24日
二重轢過による交通死亡事故において,被告人による第1事故の後に第三者による第2事故が介在し,被害者の直接の死因となった傷害が第2事故によるものであり,しかも,被告人が第1事故の後,第2事故の発生を回避するための措置を一応講じたとしても,なお被告人による第1事故と被害者の死亡との間の因果関係は否定されないとされた事例

二重轢過による交通死亡事故において,被告人による第1事故の後に第三者による第2事故が介在し,被害者の直接の死因となった傷害が第2事故によるものであり,しかも,被告人が第1事故の後,第2事故の発生を回避するための措置を一応講じたとしても,なお被告人による第1事故と被害者の死亡との間の因果関係は否定されないとされた事例

 

東京高等裁判所判決/平成29年(う)第702号

平成29年7月13日

過失運転致死被告事件

【判示事項】    いわゆる二重轢過による交通死亡事故において,被告人による第1事故の後に第三者による第2事故が介在し,被害者の直接の死因となった傷害が第2事故によるものであり,しかも,被告人が第1事故の後,第2事故の発生を回避するための措置を一応講じたとしても,なお被告人による第1事故と被害者の死亡との間の因果関係は否定されないとされた事例

【判決要旨】    所論は,被告人の過失行為には,被害者の死亡という結果を発生させる危険性はなく,被告人の発生させた第1事故の後に第2事故を発生させた第三者(以下「M」という。)の過失行為こそが上記結果の発生に重要で決定的な寄与をしており,かつ,このMの行為は,被告人の行為に誘発されたものではなく,被告人の行為とは無関係のものであるから,被告人の過失行為と被害者の死亡との間には因果関係が認められないと主張するところ,被害者の直接の死因となった傷害は第2事故という第三者の過失行為が介入したことにより発生したものではあるが,被告人の過失により発生した第1事故によって,被害者は道路の車道上に転倒し,すぐには移動できない程度の傷害を負ったものと認められ,そのような状態に置かれた被害者が,後続車に轢過されるなどして死亡することは十分にあり得ることであるから,被告人の過失行為は,被害者の死亡という結果を発生させる危険性を内包するものであったといえ,また,被告人は,第1事故の後,横臥する被害者の直近に立って両手を左右に振り,後続車による衝突等の事故の発生を回避するための措置を一応講じていたと認められるものの,青信号に従って直進進行して来る後続車の運転者が,被害者と被告人に気付くのが遅れ,被害者に衝突,轢過するということはおよそ想定し難い稀有の事態ではなく,十分にあり得ることであったといえ,被告人の上記行為は,後続車による衝突等の事故やそれによる被害者の死亡という結果を回避するための措置としては不十分であったといわざるを得ず,第2事故の発生とそれによって生じた被害者の死亡という結果は,被告人の過失による第1事故によって生じた危険性が現実化したものというべきであり,よって,被告人の過失と被害者の死亡との間の因果関係は否定されない。

【参照条文】    自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5本文

【掲載誌】     高等裁判所刑事裁判速報集平成29年137頁

          東京高等裁判所判決時報刑事68巻1~12号109頁

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