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2023年08月30日
技術士受験が労災にあたるとされた事例

技術士受験が労災にあたるとされた事例

 

大阪地方裁判所判決/平成19年(行ウ)第205号

平成21年4月20日

障害補償給付不支給決定処分取消請求事件

【判示事項】    1 建設工事の請負を主な業務とする訴外Z社において土木職として勤務してきた原告Xが,公的資格である「技術士」の資格取得のための試験を受験し,二次試験(口頭試験)終了直後に脳内出血を発症し,半身麻痺の障害を負った件につき,Z社では技術士資格の試験合格者増を基本方針として支援強化体制が取られていたこと,Xは支店長から指名を受けて受験したこと,受験者には勉強時間や家族への要請も含めて詳細な指示や注意事項が示唆されていたこと,模擬試験や模擬面接が所定就業時間中に行われていることなどのほか,Z社は受験の際の交通費等を支給していることなどを踏まえると,Z社においては,Xに対する受験指示も含めて技術士試験の受験が業務命令で行われていたものと推認される等として,Xの平成10年度から12年度にかけての本件受験には業務性が認められるとされた例

2 Xが受験した技術士試験(二次試験)の合格率は15%程度であり,合格するためには相応の受験勉強が必須であったと推認されるところ,当該受験は業務命令によるものであり,受験の準備として受験勉強をしなければならないことはZ社にとって当然予想でき,現に鉄建技術士会とともに論文の添削や模擬試験などにも深くかかわっていることを踏まえると,Xが自宅等で行った本件受験勉強それ自体もZ社の業務命令によるもので,Z社の指揮監督の下での残業というべきであり,業務性が認められるとされた例

3 本件疾病の業務起因性につき,量的過重性については,被告Y労基署長が主張する時間外労働時間数に加えて,本件受験勉強に要した時間が認定され,また質的過重性については,技術士試験に合格するには相応の受験勉強が必須であること,同試験は1年に1回しか受験できないことのほか,Z社内の合格者らやXの一次試験合格の経緯等からすれば,同試験の受験は日常業務で直面する程度,内容の負荷であったとはいえず,その精神的負荷,特に口頭試験の精神的負荷は相当なものであったことが推認され,当該受験とその準備のための受験勉強は,質的にも量的にも相当のものであったとされた例

4 Xの北関東支店赴任後の通常業務には未経験の職務が含まれ,また一定の業務上の負荷が認められ,さらに,Xには長時間の時間外労働があり,特に,本件発症前2か月間の平均時間外労働時間は1か月80時間に近く,それらに加えて技術士試験の受験やその受験勉強を含めたXの①発症前1か月間の時間外労働時間は100時間を優に超えており,②発症前2か月間の時間外労働時間も100時間を上回っているうえ,それらはかなり密度の濃い業務ともいうべきものであり,これらの事実を総合すると,Xの本件疾病の発症は,Z社の技術士試験を含めた業務が原因となったもので,業務と同発症との間には相当因果関係があり,業務起因性が認められるとして,Y労基署長の障害補償給付不支給処分が取り消された例

【掲載誌】     労働判例984号35頁

          労働経済判例速報2045号25頁

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