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2023年09月06日
日本航空電子工業事件・関税法・外為法に違反する不正取引・輸出は、会社に重大な不利益・損害を及ぼす蓋然性の高い行為であるから、取締役としてこれを支持・承認することは取締役の善管注意義務・忠実義務に違反する。

日本航空電子工業事件・関税法・外為法に違反する不正取引・輸出は、会社に重大な不利益・損害を及ぼす蓋然性の高い行為であるから、取締役としてこれを支持・承認することは取締役の善管注意義務・忠実義務に違反する。

 

 

損害賠償請求(株主代表訴訟)事件

【事件番号】      東京地方裁判所判決/平成4年(ワ)第17649号

【判決日付】      平成8年6月20日

【判示事項】      一 株主代表訴訟において、総額一二億四七〇〇万円余の損害賠償が認められた事例

             二 株主代表訴訟提起前の会社に対する提訴請求における事実の特定の程度

             三 株主代表訴訟において、関税法・外為法違反行為につき、取締役の善管注意義務・忠実義務違反が認められた事例

             四 株主代表訴訟において、取締役としての責任が原因行為の一部に止まる場合に、寄与度に応じた責任の限定が行われた事例

【判決要旨】      一 株主代表訴訟提起前の会社に対する提訴請求は、事案の内容や会社が認識していた事実等を考慮して、会社において、いかなる事実・事項について責任の追及が求められているのかが判断できる程度に特定されていればよい。

             二 関税法・外為法に違反する不正取引・輸出は、会社に重大な不利益・損害を及ぼす蓋然性の高い行為であるから、取締役としてこれを支持・承認することは取締役の善管注意義務・忠実義務に違反する。

             三 取締役の責任が原因事実の一部に止まり、関与の度合も限定されたものである場合、寄与度に応じた因果関係の割合的認定を行うことが合理的である。

【参照条文】      商法267

             商法266-1

             商法254-3

             商法254の3

【掲載誌】        金融・商事判例1000号39頁

             判例時報1572号27頁

             商事法務資料版148号64頁

 

       主   文

 

 一 被告甲野太郎及び被告乙山春夫は、日本航空電子工業株式会社に対し、被告丙川夏夫と連帯して、金四一四〇万円及びこれに対する平成五年一一月二六日から支払済みまで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。

 二 被告丙川夏夫は、日本航空電子工業株式会社に対し、金一二億四七五二万円及びこれに対する平成五年一一月二六日から支払済みまで年五分の割合による金員を(うち第一項の金額の限度では被告甲野太郎及び被告乙山春夫と連帯して)支払え。

 三 原告のその余の請求をいずれも棄却する。

 四 訴訟費用は被告らの負担とする。

 五 この判決は、第一、第二項に限り、仮に執行することができる。

 

       事実及び理由

 

第一 請求

 被告らは、日本航空電子工業株式会社に対し、連帯して金五〇億円及びこれに対する平成五年一一月二六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二 事案の概要

 本件は、日本航空電子工業株式会社(以下、「日本航空電子工業」又は「会社」という)の株主である原告が、同社においてF-四ジェット戦闘機に用いられる加速度計・ジャイロスコープ及び同戦闘機搭載用ミサイルの部分品であるローレロンを関税法・外国為替及び外国貿易管理法(外為法)所定の各手続きを経ないで不正に売却・輸出したことが取締役の善管注意義務・忠実義務に違反する行為であり、これにより日本航空電子工業に罰金・制裁金の支払いのほか売上高の減少・棚卸資産の廃棄等の損害を生じさせたとして、被告らに対し、株主代表訴訟により損害賠償の請求をしている事案である。

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