社会保険診療報酬支払基金が保険医療機関からの診療報酬請求に対して行う減点措置は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか(消極)
行政処分取消請求上告事件
【事件番号】 最高裁判所第3小法廷/昭和52年(行ツ)第69号
【判決日付】 昭和53年4月4日
【判示事項】 社会保険診療報酬支払基金が保険医療機関からの診療報酬請求に対して行う減点措置は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか(消極)
【判決要旨】 社会保険診療報酬支払基金が保険医療機関からの診療報酬請求に対して行ういわゆる減点の措置は、法律上、保険医療機関の診療報酬請求権その他の権利義務になんらの不利益な効果を及ぼすものでないから、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらないと解すべきである。
【参照条文】 社会保険診療報酬支払基金法13-1
【掲載誌】 訟務月報24巻5号981頁
最高裁判所裁判集民事123号501頁
判例時報887号58頁
社会保険診療報酬支払基金法
第三章 業務
第十五条 基金は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行う。
一 各保険者(国民健康保険法の定めるところにより都道府県が当該都道府県内の市町村とともに行う国民健康保険にあつては、市町村。第六号及び第七号を除き、以下この項において同じ。)から、毎月、その保険者が過去三箇月において最高額の費用を要した月の診療報酬の政令で定める月数分に相当する金額の委託を受けること。
二 診療担当者の提出する診療報酬請求書に対して、厚生労働大臣の定めるところにより算定したる金額を支払うこと。
三 診療担当者の提出する診療報酬請求書の審査(その審査について不服の申出があつた場合の再審査を含む。以下同じ。)を行うこと。
四 前二号に準じ、訪問看護療養費又は家族訪問看護療養費の支払及び審査を行うこと。
五 保険者から委託された医療保険各法等による保険給付の支給に関する事務(前各号に掲げるものを除く。)を行うこと。
六 保険者から委託された健康保険法(大正十一年法律第七十号)第二百五条の四第一項第二号、船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)第百五十三条の十第一項第二号、私立学校教職員共済法(昭和二十八年法律第二百四十五号)第四十七条の三第一項第二号、国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号)第百十四条の二第一項第二号、国民健康保険法第百十三条の三第一項第一号、地方公務員等共済組合法(昭和三十七年法律第百五十二号)第百四十四条の三十三第一項第二号又は高齢者の医療の確保に関する法律第百六十五条の二第一項第一号に掲げる情報の収集又は整理に関する事務を行うこと。
七 保険者から委託された健康保険法第二百五条の四第一項第三号、船員保険法第百五十三条の十第一項第三号、私立学校教職員共済法第四十七条の三第一項第三号、国家公務員共済組合法第百十四条の二第一項第三号、国民健康保険法第百十三条の三第一項第二号、地方公務員等共済組合法第百四十四条の三十三第一項第三号又は高齢者の医療の確保に関する法律第百六十五条の二第一項第二号に掲げる情報の利用又は提供に関する事務を行うこと。
八 診療報酬請求書及び特定健康診査等(高齢者の医療の確保に関する法律第十八条第二項第一号に規定する特定健康診査等をいう。)に関する記録に係る情報その他の国民の保健医療の向上及び福祉の増進並びに医療費適正化に資する情報の収集、整理及び分析並びにその結果の活用の促進に関する事務を行うこと。
九 前各号の業務に附帯する業務
十 前各号に掲げるもののほか、第一条の目的を達成するために必要な業務
2 基金は、前項に定める業務のほか、生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第五十三条第三項、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第十九条の二十第三項(同法第二十一条の二、第二十一条の五の三十及び第二十四条の二十一並びに母子保健法(昭和四十年法律第百四十一号)第二十条第七項において準用する場合を含む。)、戦傷病者特別援護法(昭和三十八年法律第百六十八号)第十五条第三項(第二十条第三項において準用する場合を含む。)、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成六年法律第百十七号)第十五条第三項若しくは第二十条第一項、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)第四十条第五項、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(平成十五年法律第百十号)第八十四条第三項、石綿による健康被害の救済に関する法律(平成十八年法律第四号)第十四条第一項、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)第七十三条第三項又は難病の患者に対する医療等に関する法律(平成二十六年法律第五十号)第二十五条第三項の規定により医療機関の請求することのできる診療報酬の額又は被爆者一般疾病医療機関若しくは保険医療機関等若しくは生活保護指定医療機関に支払うべき額の決定について意見を求められたときは、意見を述べ、また、生活保護法第五十三条第四項、戦傷病者特別援護法第十五条第四項(第二十条第三項において準用する場合を含む。)、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律第十五条第四項若しくは第二十条第二項、児童福祉法第十九条の二十第四項(同法第二十一条の二、第二十一条の五の三十及び第二十四条の二十一並びに母子保健法第二十条第七項において準用する場合を含む。)、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第四十条第六項、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律第八十四条第四項、石綿による健康被害の救済に関する法律第十四条第二項、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第七十三条第四項又は難病の患者に対する医療等に関する法律第二十五条第四項の規定により医療機関に対する診療報酬又は一般疾病医療費若しくは医療費に相当する額の支払に関する事務を委託されたときは、その支払に必要な事務を行うことができる。防衛省の職員の給与等に関する法律(昭和二十七年法律第二百六十六号)第二十二条第三項の規定により、療養を担当する者が国に対して請求することができる診療報酬の額の審査に関する事務及びその診療報酬の支払に関する事務を委託されたとき、並びに精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)第二十九条の七又は麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)第五十八条の十五の規定により、これらの条に規定する審査、額の算定又は診療報酬の支払に関する事務を委託されたときにおいても、同様とする。
3 基金は、前二項に定める業務の遂行に支障のない範囲内で、国、都道府県、市町村又は独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。以下同じ。)の委託を受けて、国、都道府県、市町村又は独立行政法人が行う医療に関する給付であつて厚生労働大臣の定めるものについて医療機関が請求することができる費用の額の審査及び支払に関する事務を行うことができる。
4 基金は、前三項の業務を行う場合には、定款の定めるところにより、保険者、国、都道府県、市町村若しくは独立行政法人又は厚生労働大臣若しくは都道府県知事とそれぞれ契約を締結するものとする。
5 基金は、第一項第八号に掲げる業務の運営に関する事項を定めるに当たつては、当該業務に関し専門的な知識及び経験を有する者の意見を聴かなければならない。
6 基金は、第一項第十号に掲げる業務を行おうとするときは、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。
行政事件訴訟法
(抗告訴訟)
第三条 この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。
2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
3 この法律において「裁決の取消しの訴え」とは、審査請求その他の不服申立て(以下単に「審査請求」という。)に対する行政庁の裁決、決定その他の行為(以下単に「裁決」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
4 この法律において「無効等確認の訴え」とは、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟をいう。
5 この法律において「不作為の違法確認の訴え」とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう。
6 この法律において「義務付けの訴え」とは、次に掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。
一 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(次号に掲げる場合を除く。)。
二 行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき。
7 この法律において「差止めの訴え」とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう。