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2023年09月20日
オリンパスの粉飾決算に係る取締役らの違法配当等に関する民事上の損害賠償責任に関する控訴審判決

オリンパスの粉飾決算に係る取締役らの違法配当等に関する民事上の損害賠償責任に関する控訴審判決

 

 

各取締役に対する損害賠償請求控訴事件、同附帯控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/平成29年(ネ)第2968号、平成29年(ネ)第4331号

【判決日付】      令和元年5月16日

【判示事項】      1 会社の抱える損失の財務諸表への計上を回避するため当該会社から損失を分離するスキームを実行し、その状態を維持すること等について取締役の善管注意義務および忠実義務違反は認められるが、損害の発生がないとされた事例

             2 財源規制に違反する剰余金の配当等について取締役らの責任が認められた事例

             3 金融商品取引法(旧証券取引法)違反に係る会社の課徴金・罰金を取締役の善管注意義務による損害とすることが認められた事例(抄)

【判決要旨】      1 会社の抱える損失の財務諸表への計上を回避するため当該会社から損失を分離するスキームを実行し、その状態を維持することは、それ自体、適正に処理すべき会社の決算を困難にさせ、財務諸表の虚偽記載を発生させる原因になるとともに、その実行に伴って本来支払う必要のない負担を会社に生じさせ得るものであるから、取締役が、自ら損失分離スキームの構築・維持を行うことが善管注意義務および忠実義務に違反するものであることはもちろん、これを知り、または知り得たにもかかわらず、これを中止ないし是正させることを怠ることも、取締役としての善管注意義務および忠実義務に違反するが、本件では、会社が主張する損害の発生は認められない。

             2 本件の剰余金の配当等について、会社の提出した訂正後の有価証券報告書に従って分配可能額を算出すると、本件剰余金の配当等は、いずれもその効力を生ずる日における分配可能額を超えて行われたものと認められるから、「当該株主総会に係る総会議案提案取締役」、「当該行為に関する職務を行った業務執行者」に当たる取締役らは、会社法462条1項に基づき、会社に対し、連帯して、本件剰余金の配当等により、株主に対して交付された金銭を支払う義務を負う。また、過失相殺等の類推適用等は認められない。

             3 会社に対する課徴金・罰金を取締役の善管注意義務による損害とすることの可否については、①会社が取締役の任務懈怠によって課徴金・罰金の支払を余儀なくされた場合にその課徴金・罰金を損害から除く根拠はなく、会社が自己に科された罰金・課徴金を取締役等に転嫁したと評価されるべきものではないこと、②会社が課徴金・罰金の支払を余儀なくされることによる株主の不利益を考慮すると、自らの任務懈怠によって会社に課徴金・罰金の支払を余儀なくさせた取締役が会社に対する損害賠償義務を果たすことによってその損害の回復を認めることが公平の見地からは相当であり、違法行為の抑止にも資すること、③取締役が巨額の損害賠償責任を負う結果となることを理由として、直ちにその損害賠償責任を否定すべきものとはいえないこと、④取締役の民事上の責任として会社が支払を余儀なくされた罰金相当額の損害について賠償義務があるとされるから、二重処罰にも当たらないことから、会社に科せられた課徴金・罰金を取締役の善管注意義務による損害とすることは否定されない。

【参照条文】      民法416

             会社法423-1

             会社法462

             会社法847-3

【掲載誌】        金融・商事判例1585号12頁

             判例時報2459号17頁

 

 

民法

(損害賠償の範囲)

第四百十六条 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。

2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

 

 

会社法

(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)

第四百二十三条 取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この章において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

2 取締役又は執行役が第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定に違反して第三百五十六条第一項第一号の取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する。

3 第三百五十六条第一項第二号又は第三号(これらの規定を第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取引によって株式会社に損害が生じたときは、次に掲げる取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定する。

一 第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取締役又は執行役

二 株式会社が当該取引をすることを決定した取締役又は執行役

三 当該取引に関する取締役会の承認の決議に賛成した取締役(指名委員会等設置会社においては、当該取引が指名委員会等設置会社と取締役との間の取引又は指名委員会等設置会社と取締役との利益が相反する取引である場合に限る。)

4 前項の規定は、第三百五十六条第一項第二号又は第三号に掲げる場合において、同項の取締役(監査等委員であるものを除く。)が当該取引につき監査等委員会の承認を受けたときは、適用しない。

 

(剰余金の配当等に関する責任)

第四百六十二条 前条第一項の規定に違反して株式会社が同項各号に掲げる行為をした場合には、当該行為により金銭等の交付を受けた者並びに当該行為に関する職務を行った業務執行者(業務執行取締役(指名委員会等設置会社にあっては、執行役。以下この項において同じ。)その他当該業務執行取締役の行う業務の執行に職務上関与した者として法務省令で定めるものをいう。以下この節において同じ。)及び当該行為が次の各号に掲げるものである場合における当該各号に定める者は、当該株式会社に対し、連帯して、当該金銭等の交付を受けた者が交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負う。

一 前条第一項第二号に掲げる行為 次に掲げる者

イ 第百五十六条第一項の規定による決定に係る株主総会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第二号の金銭等の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該株主総会に係る総会議案提案取締役(当該株主総会に議案を提案した取締役として法務省令で定めるものをいう。以下この項において同じ。)

ロ 第百五十六条第一項の規定による決定に係る取締役会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第二号の金銭等の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該取締役会に係る取締役会議案提案取締役(当該取締役会に議案を提案した取締役(指名委員会等設置会社にあっては、取締役又は執行役)として法務省令で定めるものをいう。以下この項において同じ。)

二 前条第一項第三号に掲げる行為 次に掲げる者

イ 第百五十七条第一項の規定による決定に係る株主総会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第三号の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該株主総会に係る総会議案提案取締役

ロ 第百五十七条第一項の規定による決定に係る取締役会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第三号の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該取締役会に係る取締役会議案提案取締役

三 前条第一項第四号に掲げる行為 第百七十一条第一項の株主総会(当該株主総会の決議によって定められた同項第一号に規定する取得対価の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合における当該株主総会に限る。)に係る総会議案提案取締役

四 前条第一項第六号に掲げる行為 次に掲げる者

イ 第百九十七条第三項後段の規定による決定に係る株主総会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第二号の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該株主総会に係る総会議案提案取締役

ロ 第百九十七条第三項後段の規定による決定に係る取締役会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第二号の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該取締役会に係る取締役会議案提案取締役

五 前条第一項第七号に掲げる行為 次に掲げる者

イ 第二百三十四条第四項後段(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による決定に係る株主総会の決議があった場合(当該決議によって定められた第二百三十四条第四項第二号(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該株主総会に係る総会議案提案取締役

ロ 第二百三十四条第四項後段(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による決定に係る取締役会の決議があった場合(当該決議によって定められた第二百三十四条第四項第二号(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該取締役会に係る取締役会議案提案取締役

六 前条第一項第八号に掲げる行為 次に掲げる者

イ 第四百五十四条第一項の規定による決定に係る株主総会の決議があった場合(当該決議によって定められた配当財産の帳簿価額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該株主総会に係る総会議案提案取締役

ロ 第四百五十四条第一項の規定による決定に係る取締役会の決議があった場合(当該決議によって定められた配当財産の帳簿価額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該取締役会に係る取締役会議案提案取締役

2 前項の規定にかかわらず、業務執行者及び同項各号に定める者は、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときは、同項の義務を負わない。

3 第一項の規定により業務執行者及び同項各号に定める者の負う義務は、免除することができない。ただし、前条第一項各号に掲げる行為の時における分配可能額を限度として当該義務を免除することについて総株主の同意がある場合は、この限りでない。

 

 

 

(株主による責任追及等の訴え)

第八百四十七条 六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主(第百八十九条第二項の定款の定めによりその権利を行使することができない単元未満株主を除く。)は、株式会社に対し、書面その他の法務省令で定める方法により、発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等(第四百二十三条第一項に規定する役員等をいう。)若しくは清算人(以下この節において「発起人等」という。)の責任を追及する訴え、第百二条の二第一項、第二百十二条第一項若しくは第二百八十五条第一項の規定による支払を求める訴え、第百二十条第三項の利益の返還を求める訴え又は第二百十三条の二第一項若しくは第二百八十六条の二第一項の規定による支払若しくは給付を求める訴え(以下この節において「責任追及等の訴え」という。)の提起を請求することができる。ただし、責任追及等の訴えが当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合は、この限りでない。

2 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主」とあるのは、「株主」とする。

3 株式会社が第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しないときは、当該請求をした株主は、株式会社のために、責任追及等の訴えを提起することができる。

4 株式会社は、第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しない場合において、当該請求をした株主又は同項の発起人等から請求を受けたときは、当該請求をした者に対し、遅滞なく、責任追及等の訴えを提起しない理由を書面その他の法務省令で定める方法により通知しなければならない。

5 第一項及び第三項の規定にかかわらず、同項の期間の経過により株式会社に回復することができない損害が生ずるおそれがある場合には、第一項の株主は、株式会社のために、直ちに責任追及等の訴えを提起することができる。ただし、同項ただし書に規定する場合は、この限りでない。

 

 

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